第八話、図書館で黙々
学園の図書室はでかい。
すごい量、本があって、
禁書庫も、いくつもあるらしい。
で、勉強する私。
「もー、テストとか無理ー」
「頑張って。テスト落ちると
追試はあるけど、進級出来ないし」
「それめっちゃマズイじゃん」
ラウルはノートを貸してくれて、
書き写してるけど、
わかんない言葉多すぎ!
「リアムザって何?」
「種族の名前。蛇の血がまじってる。
クラスにもいるよ」
「ティラバラスは?」
「小型の魔獣で、犬に似てる。
毒を出して、人に化ける」
「ファウンデッタ・クライシス」
「30年前の瞬間大凍結事件と、
その時、出来た、樹氷の名前」
「もーわかんないよー」
正直、異世界の歴史まで知らない!
「頑張ってよアスナ。
僕は夜まで付き合うから」
「ラウル、ほんと良い子。
素敵、ありがとう」
青髪の幼馴染は、
顔をくしゃくしゃにして笑った。
「よぉ、記憶飛んだヤツは大変だな」
聞きなれた声がして、
ラウルが怖い顔して振り返った。
「ジル、何しに来たんだよ」
「は? お前を呼びにきてやったんだろ、
感謝しろ」
「僕を?」
「レオナルド先生が、
グリフォンの追試やるから来いって」
「え? 今?」
「あの試験は
グリフォンの体調に合わせるからな」
「でも、今はアスナの……」
「私は大丈夫だから、ラウル行ってきて」
「でも、今夜やらないと、
テスト明日だし。一人じゃ……」
「じゃあ、俺が教えてやる」
「は? なに?」
「そう怖い顔するなよラウル、
お前より成績は良いからな」
「でも、ジル……」
「テストも大事だが、追試も大事だろ?」
「じゃあ、せめてココに」
「あいつは夕方以降は外に出ない。
『変わる』からな」
ギリと歯を食い閉めるラウルに、
いいよ、行ってきてーと私は言う。
「追試、頑張ってね」
笑いかけて言うと、
ラウルは、ようやく歩いていった。
ジルはラウルが座っていた、
向かいの席に座り、
つまらなそうに足を組んだ。
「ねぇ」
「あ?」
「この、ルシファルスて……」
「上級魔族の一人だ。
数十年前から封印されてる」
どうやら、教えては、くれるらしい。
「アースファルトってどこの事?」
「マジか!
お前の父親が治めてる地方じゃねぇか」
「あ、そうなの?
うちって結構な良い所なんだ」
「言っとくが、ゴリゴリの貴族だからな。
御三家の一つだし、国王も出してるし」
なるほど、
アスナちゃんが高飛車だった訳だ。
「そこからお嬢様が来てるってんで、
どうせ舐めたヤツだと思ってた」
あぁ、うん。そうだよね。
分かるわ。
「うちは、お前と違い、落ち目の家だが、
代々魔獣使いの家系だ。風の力も強い」
4枚羽根だしね。
「俺は小さい頃から魔獣に慣れてる。
それに比べて、お前は入学まで、
ネズミすら触ってこなかった」
どんだけ箱入りだったんですか。
「魔獣は、プライドが高い人間を嫌う。
見下されてるのが分かるからな。
でも最近のお前は、それがない」
ん?
顔をあげてジルの顔を見る。
無表情で読み取れないけど、
今、誉められてる?
「正直、グリフォンとかペガサスとか、
懐かせられて感心してる。
コネ入学って言って悪かった。
ごめんな。アスナ」
え? 今、名前呼んだ?
ジルが手を伸ばして、
手元の教科書のページを指す。
「このページは、出ない」
「へ?……え? 出ないの?」
「ここも、テストには出題されない」
「そうなの?」
「歴史の先生は面倒くさがりで、
3年前のテストをそのまま出す」
「マジで!」
「兄貴に3年前のテスト教えてもらった。
出る問題には丸つけてやる。
範囲が狭くなれば、覚えられるだろ」
わぁお! それ最強!
「ありがとう、ジル! あんた天才!
素敵! カッコいい!」
「そうかよ」
ジルは無表情のまま、
教科書に印をつけてくれる。
本当に助かった。
これで、追試になる事は無いはず。
「ところで、お前は覚えて無いだろうが、
次のテスト、
お前と俺は賭けをしていた」
丸をつけながら、ジルは言う。
「え? そうなの」
「お前が俺より高い点を取ったら、
この学校を辞めさせるって息巻いてた」
わぁー言いそう。
『私が勝ったらお父様に言って
あんたを退学にして差し上げますわ!』
「それで、ジルが高い点をとったら?」
「俺が勝ったら」
ジルが顔を上げて、こっちを見た。
「お前が俺に、キスするんだと」
「ふーん……は?」
一瞬納得しそうになったけど、
は?
ジルは少しだけ笑って、
「さぁ、どうする?」
と、意地悪く言った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『次回予告』
「それを俺が
素直に了承すると思ってんの?」
「わかりました。じゃあ、」
「じゃあ?」
「今から、キスしましょう」
毎日更新!
今日も
お仕事お疲れ様!
モフモフー