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第六十三話、日差しとグリフォンモフモフ

「進級テスト受かったーーー!」

 真っ青な空に、両手を広げた。


「もう、アスナ、

 朝からそればっかり」

 ラウルが横で、笑って言った。


「だって、今日から、二学年!

 新学期! 新しい一年!」


 新緑が生き生きと伸びて、

 日の光が暖かかった。


 その中を、ラウルと歩く。


「あ、ラウル、翼の調子どう?」

 気がついて、歩きながら

 ラウルの羽根を眺める、


 あれからけっこう経ったけど、

 ラウルの羽根は、

 半分くらいの長さしかない。


「まだ飛べるまでは、

 半年くらいかかるって」


「ごめんねー、私が焼いたから」


「いや、これは自業自得みたいなもんだから」


 短い羽根を動かして、

 笑って見せる。


「ちゃんと治ったら、

 また運んであげるからね」


「お姫様だっこで?

 ふふっ、懐かしい」

 ニコニコ笑っていると。


「おい」


「あ、ジル」


「その羽根の話だが」

 と、ラウルの羽根を指した。


「姉貴が集中治療してやるから、

 今度来いって」


「え? シルビアさんが?」

 と、ラウルが答える。


「除術ん時のお礼だと」


 シルビアさんは

 元ヒーラーだ。


「ま、すぐ治る訳じゃねぇが、

 普通にするより早ぇだろ」


「うん、お願いするよ。

 ありがと、ジル」


「でも、アーク先輩には

 黙っとけよ」


「え? なんで?」


「あの2人、またモメてんだよ。

 姉貴が音信不通にしてて、

 俺にまで探りが来た」


 うわー、またやってるんだ

 お兄様とシルビアさん。


「周りに迷惑なんだよな」


「主に兄がごめんなさい」

 いやもうほんと、

 早く、くっつけばいいのに。


「なに、なんの話?」

 耳もとで声がした。


「ひゃ! 首、冷たっ! 首!」


 ビクリ、と体を振り返ると、

 白い服でキツネ耳の男が、

 笑ってそこに居た。


「あ、氷狐だ」


「あ、わかるー?」


「ココはこんな事しないから」


 冷たい、首筋。


「あと、アイス食べながら

 登場もしない」


 氷狐が、棒に刺さったアイスを

 くわえてた。


 自由に動けるようになって、

 アイス食べ放題で

 嬉しいらしい。


 今、そのアイス、首にあてた?

 何てことするんですか。


「新商品だよー、食堂に出てた」


「何味?」


「アスパラガス?」


「あ……あすぱら? え?」


「結構おいしい」


 おいしいんだ。

 今度買ってみよう。


「ね、ね、僕、ジェラード、

 作れるようになったんだ」


「え? どうやって?」


「こう、フルーツを氷で粉砕し、

 ミルクを空中で凍らせて、

 吹雪起こして、力を一か所に」


「力の無駄使い!」


「だから、また夜に行くね。

 2人きりで、食べよ?」


 口元に人差し指立てて、

 氷狐が笑う。


「おいこら、キツネ」

 ジルが割り込んできて。


「なに?

 触らないで、熱い」


「夜な夜な、アスナに

 アイス食わすのやめろ、太る」


 ふ! ふと……


「えー、アイスは

 カロリーゼロなんですー」


「んな訳ねぇだろ」


「大体、太ってなんか悪いの?

 どんな彼女も素敵でしょ」


「不健康だから、やめろって

 言ってんだよ」


「そんなに気になるなら、

 食べた後に、運動してもいい。

 ねぇアスナ。一緒にベッドで」


「それ以上言ったら

 細切れにするぞ、キツネ!」


「やって見なよ、風使い」


 風と氷が渦巻きだしたので、

 慌てて、ラウルが止めた。


「ちょ! やめて!

 こんな所で喧嘩しないで!」


 2人をなんとか離す。


 舌打ちしたジルに、

「ねぇ! 私、太った?」

 と聞いて、は? と返された。


 ラウルが氷狐に言う。

「もう小屋に着くから、

 氷狐はココに戻ってよ。

 授業は出ないんでしょ?」


「はーい、はい」


 氷狐はアイス全部口にいれて、

 モグモグしてから、


「じゃ、またね」


 私に手をふって、

 グラリと体が揺れた。


 ガクンと首が戻ってきた時には

 ココだった。


「うわー! くち冷たいー」

 と、顔を歪ませて、


「もう、彼、またアイス食べた?

 やめてよねー」


 言いながら、

 アイスの棒をしまう。

 だいぶ、慣れてきてる。


「ねぇ、ココ。私、太った?」


「え? いや? 

 いつも通り可愛いよ。

 太っても可愛いけど」


 おう……いつもながら

 100点の返しです。


「まーた、ジルが

 余計な事、言ったの?」


「いつもみたいに言うな」


「どんな君も可愛いのにねぇー」


 ふんわり笑いながら、

 頭を撫でられる。


 気持ちよくて、えへへと笑う。


「ん? あれ?」


 ラウルが気が付いて、

 上空を見上げた。


 風の音? いやこれは……


「……ぅぅぁぁぁあああああ!」


 悲鳴! 落下音!

 誰か、落ちてくる!


「ジル!」

 ココが叫んで!


「おう!」

 ジルが両手を振って

 風を巻き起こした。


 風を受け、落ちてくる人影は、

 一瞬、ふわりと、舞い上がる。


「うわっ、うわっ」


 私は手を伸ばして、

 その落下地点に走った。


「間に合っ……ぎゃ!」


 私の上に、その人は落ちた。


「いった……痛ぁ……」


 倒れこんだ私の上に、

 その人はいて、

 すぐ近くで顔を上げた。


「うわぁ! だ、大丈夫すか?」


「あー、うん、平気。

 このくらいなら、全然」


「あれ? アスナ先輩?」


 へ? なに?

 私の事、知ってるの?


 ふわふわした茶髪の男の子。


 真近で眺めてみるけど、

 こんな可愛い顔の知り合い、

 いたっけ?


「あ、すいません、

 すぐ降りるんで!」


 その子は立ち上がって、

 私に手を差し出してくれて、


 それを握って立ち上がった。


「ありがとうございますっ!

 あの、身体、大丈夫すか?」


「あ、いいのいいの。

 君は平気?」


「俺は、なんとも。

 ほんと、助かりました。

 死ぬかと思いました」


 ジルとココとラウルも

 歩いてきて、


「先輩方も、

 ありがとっした!」


 と、頭を下げた。

 律儀な子だ。


「でもなんで、落ちて来たの?」


 だいぶ高い所から。


「俺、翔ぶの苦手で」

 言って、バサと翼を広げる。


「あ、」

 私の口から勝手に声がでた。


「コウモリ、羽根……」


 その子の背中には

 黒いコウモリ羽根が、

 確かに生えていた。


「道に迷って、授業遅れそうで。

 それで翔んだんすけど、

 スカイドラゴンに巻かれて」


 あぁ、なるほど。

 今日は低い位置を飛んでる。

 スカイドラゴン。


「ところで、私の知り合い?

 私の名前呼んでたけど」


「あぁ、じゃなくて。

 先輩、有名なんすよ」


「え? 有名?」


「なんか、世界の破滅を止めて。

 学園を救った、英雄! とか」


「は? え?」


「マジすごい! 尊敬です!」


 いや、それ、誇張されすぎ!


 世界を破滅させるの私だし、

 学園の危機は、お兄様で、

 ほとんど、お家騒動だし。


 私、自作自演みたいじゃん。


「その上、俺まで助けてもらい、

 なんてお礼すれば……」


 お礼……お礼……じゃ、

 じゃあ!


「触らせて!」


「へ? なんすか?」


「あの、羽根、触らせて。

 触りたい……の」


 ジルが後ろで、

「あー、また始まった」

 とかなんとか言ってる。


「羽根? コウモリ羽根すか?」


「うん、そう」


「珍しいっすよねー。

 俺も鳥羽根なら良かった。

 みんなにいつもバカにされて、

 悪魔だ、不吉だって、よく」


「そんな事ない、カッコいい!

 すごい素敵! すごく良い!」


「へ?」


「ぷにぷにで気持ちいいの!

 ふわふわ羽根も良いけど

 コウモリ羽根はコウモリ羽根の

 良さがあるの!」


「そ、そうすか?」


「うん。すごく良い! 素敵。

 カッコいい。自信持って!」


「まぁ、先輩が……

 そう言ってくれるなら、

 ちょっと良かったっていうか」


「だから、触らせて」


「あぁ、良いっすよ。

 別に、ヤじゃ、無いんで」


 マジで! そんな軽く?!


「お前、良い奴だな!」


「へ?」


 あ、久しぶりに

 ルシアの時の口調でた。


「アスナ、触ってる時間ないよ。

 授業遅れるよー」

 ラウルが言って、


 ココも、

「それに、その子も

 遅れそうで飛んでたって

 言ってたよ」

 と、同意する。


「えー……」


「あ、じゃ、良いっす。

 俺、また先輩に会いにくるんで

 したら、好きに触って下さい」


「え? いいの?」


「はい。

 俺、デュノ、て言います」


「デュノ、君?」


「デュノで良いです。

 俺もまた先輩に会いたいんで」


「へ?」


「じゃ、俺、行きます!

 皆さん、ありがとっした!」

 頭を深々と下げてから、

 デュノは走って行った。


 ジルがそれを見ながら、

「また余計なのが、1人増えた」

 と、嫌そうに呟く。


「僕は良いけどね。

 賑やかになりそうで」

 ニコニコして、ココが答える。


「え? なんの話?」

 そう聞いた、私の後ろ。


「アイツ、僕とキャラかぶる!」

 いつの間にかニーナが居た。


「ニーナなんで出てきてるの!

 かぶらないから、平気だから」


「ショタは1人で良いのに!」


「どこで覚えたの、その言葉!」


「コウモリ羽根は、みんな敵!」


「そんな事無いから!

 服の中に戻って」


 なんとかニーナを戻して、

 ふうと息をつく。


 コウモリ羽根、ねぇ……


 小さくなる黒い羽を見ながら、

 ふと、思い出す。


──え? またですか?

──変なとこ触らないで下さい

──終わったら、血、吸いますからね。


 カルアのその羽根を、

 その余裕しかない顔を、

 その指先を、思い出す。


──今、他の男の事、考えたでしょ。


 いいえ、私の中は、

 いつもあなたでいっぱいです。


──大丈夫ですよ。


 うん、大丈夫だよ。

 きっと大丈夫。


 私は暖かな日差しを見上げ、

 目を細めた。


 この世界はこんなに優しい。

 命が満ちて、生き生きして、

 暖かい。


 ちり、と心の中に

 青い炎が燻る。

 いつか世界を壊す、

 その力が体内にある。

 

 私は終わりを司る魔族。

 終末を連れてくる悪魔。


 ドクンと心臓がなった。


「でも、みんながいる」


 燻る不安を、声に出して

 払拭する。


 だから、大丈夫。

 この世界はこんなに優しい。


──お前は大丈夫だ。


 うん、頑張る。だから……


「アスナー、急ぐよー。

 最初の授業から

 遅刻できないよー」


「うん、行く行く」


 急いでみんなに追いついて。

「最初の授業、なに?」

 と、ラウルに聞く。


「グリフォンに乗る訓練だって」


「え?」


 グリフォン……モフモフ……

 モフモフ!


「グリフォン! 乗る!

 乗って、モフモフ!

 モフモフ、しゅる~!」


「乗る為の訓練からだからねー」


「急いで! 早く!」


「はいはい」


 私は、暖かな世界の中で

 走りだす。

 日差しが、キラキラしてて

 とても明るかった。


 そうして私達の、

 ビーストテイナー養成学園

 2年目が、幕を開けた。


《完結》


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 最後まで読了ありがとうございます。


 好評につき、この話の前日談

 前の時系列の話、も完結しました。

【悪魔令嬢、勝手に婚約破棄された上、

生贄にされて世界を滅ぼす運命なので、

転生することにした〜モフモフ前日談〜】

https://ncode.syosetu.com/n4685hl/

 ぜひそちらもお楽しみ下さい。


 少しでも面白かった、楽しかったと

 感じて下さった方は、

 ☆☆☆☆☆から評価または。

 一言感想をお願いします。

 

 その他、今作の

 制作秘話や裏設定は

『活動報告』にあります、

 興味のある方は、ご覧ください。


 皆さま、

 最後までお読みくださり

 ありがとうございます!


 哀井田圭一が、

 最大限の感謝を

 申し上げます!


 では、続編予告です!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『続編予告』


「先輩って、俺の事

 見てないっすよね」


「え?」


「俺、見てるふりして

 違う奴、想ってますよね」


「あ……いや」


「そいつの事、

 そんなに大事なんすか?

 先輩にそんな顔させるのに?」


「それは……」


「俺だったら!

 絶対、先輩を泣かせないのに!

 それは俺じゃダメなんすか?」



 今日も、明日も、その先も、

 皆さま、お仕事お疲れ様!

 皆さまに幸せが訪れますように

 モフモフー

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結お疲れ様でした! まだ続くものとばかり思っていたので少し驚きです( ‘ 0 ‘)ノ 私としてはココと氷狐が同居(?)したので一安心ですが! デュノはまさか…… いずれにせよ、ア…
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