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第五十八話、運命は自分で決める

「お前、本気か?」

 ジルが叫ぶ。


「いたって真面目だよ」

 ラウルが言い放つ。


 マナスが詰まった瓶を持って、

「コレをアスナに飲んでもらう。

 アーク様の指示を、守る。

 その為なら、何でもする」


 よどみなく、躊躇なく。


 私は無意識に一歩、後ずさる。


 ココが無言で距離を詰めた。


「おいこら」

 ジルが飛び出して、

 ラウルの胸倉をつかんだ。


「勝手な事言ってんじゃねぇ!」


「なに?」


「無理矢理飲ませるってんなら、

 殴って止めるだけなんだよ」


「ねぇ、ジル」


「あ?」


 バサとラウルの羽根が伸びて。

「もう、君は怖くない」


 ゴウンと音を立てて、

 風が渦を巻いた。


 そのすべてが、集まって

 ジルの体が浮いた。


「は?」


 ブワと風が膨れ上がって、

 ジルの体が吹っ飛ぶ。


 風が吹き荒れ、

 私も後ろに倒れこんだ。


 その視界に、

 十数メートル向こうで

 地面に叩きつけられる、

 ジルの姿を見た。


「あっ」

 思わず、私の口から出る。


 ラウルは表情一つ変えない。


「この間、除術した時知った。

 僕はジルより強い」


 風が吹き荒れる。

 ラウルの青い髪が浮く。


 え? ラウル、

 こんなに強かったっけ?


「動かないで、ココ」


 真っ直ぐ、手を伸ばして。


「こんなに風が渦巻いて、

 立ってるのも、辛いでしょ?

 近づかない方が良いよ」


 顔をしかめたココが、

 フラとゆれる。


 風はココには毒だ。


「さ、アスナ」

 ラウルが歩いてくる、


「そ、それを私に飲ませたいと、そういう事でしょうか」


「うん、そう」


「嫌がったら、無理矢理飲ませるとか、そういう事でしょうか」


「うん、そうだよ」


 笑って言わないで下さい!

 怖い!


 私は座り込んだまま、

 ジリと後ろに下がる。


 近づいてくるラウルの足元に、

 氷が突き刺さる。


「そんな、事は……させない」

 ココが苦しそうな息しながら、手を伸ばしている、


 ラウルが振り返って、

「ココ、やめて。息するのも、辛いでしょ?」


「彼女を、泣かせるのは、

 僕が許さない」


「そう。じゃあ、しょうがない」


 ラウルが私の足元に、

 マナスの瓶を置いた。


 へ? なに?


 ラウルが手を伸ばす、

 バサッと羽根が動いて、

 風が集まりだした。


 ダメ! 

 そんなに風を集めたらココが!


 ドクンと心臓がなった。

 頭に思考がなだれ込んだ。


『やめろ!』


「え?」

 ラウルが振り返る。


『やめてくれ!』

 ルシアの声だ。


 ラウルが私を見て、ヘラと顔を歪ませる。


「ルシア……」

 ポツリと呟く。


「君を感じる。久しぶりだ。やっぱり、ココだと出てくるんだね」


『お前! 私に会いたいなら

 いつでも出てきてやる!

 だから!』


「良いんだ、もう。

 君が手に入らない事くらい。

 僕にも分かる」


 スゥと息を吸い込んで、

 ゆっくり吐き出す。

 その顔に確かな覚悟を見る。


「なら、僕は、

 君が復活する為に

 全てを捧げよう」


『何言ってんだ、ラウル』


「君に嫌われたって良い。

 殺されたって構わない」


『は?』


「僕は君が、

 全ての力を取り戻す為の

 礎になる」


『お前、バカだ!

 大バカだからな!』


「さぁ! 僕を止めてみせて!

 その力で!」


『このわからず屋が!』


 ぼっ、と私の周りに青い炎が舞った。


 私は覚悟を決めて、

 全力で叫んだ。


「わかった!」

 私の声で。


 バツンと思考が切り替わる、

 その身体を、私が取り戻す。

 

 私の中で、ルシアが、ん?

 と、声をあげる。


「え? アスナ?」


「わかったよ、ラウル」


 私は足元の瓶を

 とって立ち上がる。


「だ、ダメだよ、アスナ」

 ココがそれに声をあげる。


「大丈夫、ココは離れてて」

 キッパリ言い切って、マナスの瓶を目にやった。


 すっごい、キラキラ

 どんな味すんの、コレ。


「え? アスナ、わかったって」


「ルシアを復活させたいのね」


「あ、うん」


「復活させて、新しい世界にしたいのね」


「うん、そう」


「わかった」


「え?」


 魔族の復活は悪い事じゃない。

 むしろ必要な事。

 それを必要だと思った人が、

 実行する。


 ラウルは必要だと思って、

 力をもって実行としてる。


 ならば、仕方ない。


「え? アスナ、飲んでくれるの?」


「いや、」


 力には、力で抗うしかない。


「戦おう」


「へ?」


 必要な人と、

 必要でない人がいたら、

 力の強い方が勝つ。


 それがこの世界だ。


 私は覚悟を手に、叫ぶ。

「ニーナ!」


「ガウ!」


 私の服から金色の狼が現れて、

 私の横に降り立つ。


「ラウルが実行すると言うなら、

 私はビーストテイナーの力で、

 抗ってみせる」


「え? ん? んんん?」


「ラウルが勝ったら、

 コレを飲んであげる」


「え? 本当に?」


「うん、嘘は言わない」


「わかった。

 それで、君が勝ったら?

 僕は学校をやめる?」

 少し笑って、ラウルが言う。


「いや、私が勝ったら」


 勝ったら、その時は


「幼馴染に戻って!」


 ラウルの顔が変わった。


「え?」


「また一緒に、いつもみたいに、学校で、授業とか世話とか一緒にして」


「あ……」


「朝、私を起こして。

 お昼を選んで。

 テスト勉強手伝って」


「アスナ……」


「あなたの夢を思い出して。

 ラウルは私に言った。

 お兄様みたいなビーストテイナーになりたいって」


 そうだ、言ったんだ。

 星空の下で、

 それが嘘であるはずがない。


「私が勝ったら、

 思い出してもらう!

 その為に全力を出す!」


 私の全てで、戦う!

 運命に抗う!

 その力で持って!


「……うん、そうだね。

 そう、なれたら、良いね」

 ふっ、とラウルは笑って、


「やって見せてよ」

 と、羽根を広げた。


 風が吹き荒れる。

 2人を巻き込んでいく。


「ココ、離れて! ジルの所に!」


「え? でも」


「手出ししないで。

 一対一、正々堂々!

 戦う!」


 真っ直ぐ、拳をラウルに突き出して。


「ニーナは、一対一に含まれるの?」

 ラウルが、私の横の、

 ニーナを指して聞く。


「テイムは、ビーストテイナーの力だから!」


「ははっ、うん、分かったよ」


 ラウルが両手を広げる。

 羽根も広がって、バサリと

 体が浮いた。





 ジルはやっと体を起こせた。

「な、んだよコレ」


「大丈夫? 怪我はない?」

 ココが手を差しだす。


「一瞬、意識がとんだ。

 だが、なんだ、この光景。

 なんで、ラウルとアスナが戦ってる?」


「話がまとまったんだ。

 僕らは手出しできない」


「は? 危ねぇだろ!

 アスナ助けねぇと!」


「違うよ、ジル」

 ココは首を振る。


「彼女は助けなんかいらない。

 彼女は、覚悟を決めたんだ」


「は? え?」


「自分で、戦うと。

 運命に、抗うと。

 彼女はいつだって、

 自分の力ではねのけてきた」


 ジルが顔を引きつらせる。


「助けなんかいらない、か。

 あぁ、そうか」


「僕らは、彼女を信じる。

 信じて見守る。彼女は、強い」


「あぁ、そうだな。

 あいつは、いつも自分で

 なんとかしやがるんだ」


 ジルは悔しそうに、

 顔をしかめた。


「いやー、派手にやってるねぇ」

 ハイズ先生が近づいてきて、

 明るい声をだす。


「すみません、先生

 コレって……」

 ジルが振り返って聞く。


「君らがそう決めたなら、

 学園は手出ししないし

 止めないよ」


「ですよね」


「とりあえず、念のため、

 被害が出ないように、

 近くの魔獣と生徒は

 避難させるよ」


 風は魔獣に毒だし、

 苦手な生徒も多い。


「先生総出だな、こりゃ」


「ご迷惑をかけます」


「何もできないけど、

 頑張って。運命は

 自分で決めるんだ」


「はい」


「そして、無事に戻ってきてね。

 僕らは、生徒であるかぎり

 受け入れるし、守る。

 誰であろうと」


「ありがとうございます」


「じゃあね」

 と、手を振って、

 先生は離れて行った。


「運命を、決めるか」


「ジル、怖くなった?」


「まさか。信じてる。

 アイツはきっと……」


 その先を口に出さずに、


 ジルは、

 その運命を決める戦いに、

 目をやった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「おい! 今、アスナの胸、

 膨らまなかったか?」


「なんで、こんな時に

 胸ばっかり見てるの?」


 毎日更新!


 今日も

 お仕事お疲れ様!

 モフモフー

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