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第五十五話、君の笑顔と金色の狼

「氷狐ってココそっくりだよね」


「僕が似てるんじゃなくて、

 彼が僕の姿に育つんだからね」


 そうなんだ。

 じゃ、アスナちゃんって、

 ルシアの姿のなのかな。


「さて、そろそろ時間だね」

 そう言って氷狐は立ち上がる。


 私をくるんでいた、しっぽと

 彼の腕がなくなる。


 氷で囲まれた、

 氷柱の下の空間。


 さ、寒い……

 やはり、一人になると

 ものすごく寒い。


「じゃ、僕、そろそろ

『呼ばれる』から」


「うん、ありがと」


「どうせ凍ってるから、

 動けないんだけど」


 あぁ、そうだろうなぁ、

 と、苦笑いを返す。


「ねぇ、アスナ」


「うん?」


「また君に会いに行くよ」


 スルリと私の髪を一束持ち、

 そこに口をつける。


「夜に、ね」


「へ?」


 髪が離されて、

 人差し指を口に当てて、

 氷狐は笑う。


「次も、二人が良いな」


 ココに似ているけど、

 違う、氷狐の特有の

 冷たくて甘い笑顔。


「ルシファルスも、またね」


 ドクンと心臓が鳴る。

 ルシアが上がってくる。


『ルシア、と呼んでくれ』


「え?」


『よ、呼ばれたいんだ、

 お前にも……名前を』


 ふふ、と氷狐は笑って。


「ルシア、君と話せて良かった」


『へ?』


「僕の事、覚えててくれて

 ありがとう」


『あ……』


 心臓が鼓動を繰り返す。


 光が差し込んできた、

 天井に、光の穴が出てくる。

 あれが……道。


『お、お前は卑怯だ。

 自分ばっかり許して、

 私に謝罪すらさせない!』


「えー」


 氷狐は笑う。

 彼のその甘い笑顔で。


「僕は最初から鬼畜でしょ」


 ふふん、と、笑って。


「じゃあね」


 氷狐が光に包まれて、

 天井の穴に吸い込まれた。


 ルシアの感情が、

 なだれ込んでくる。


「泣かないで。

 分かるよ、ルシアの気持ち」


『わかるもんか。

 誰も焼いた事ない奴に』


「そうだね、でも分かるよ。

 大丈夫、もう焼かない」


『でも焼きたくなる』


「今、後悔してるんでしょ?

 氷狐の家族を焼いたの」


『……あぁ』


「じゃあ、もう大丈夫。

 焼きたくない、なら平気」


『お前……』


 そのまま鼓動が収まっていく。


 大丈夫。

 今はとにかく、帰らなきゃ。


 天井の穴を見上げて、

 そして気づいた。


「あ……あそこまで

 どうやって行くの?」


 天井は、遠い。

 ジャンプでも届かない。


 壁は氷で、ツルツルしてて

 登る余地はない。


「ルシア、羽根とかない?」


『無理言うな! ない』


「じゃあ、浮遊魔法とか」


『無い! なんの為に

 カルアに羽根があると思う?』


 あ、その為なんだ。

 カルアのコウモリ羽根。


「そうだカルアは?」


『ここに入る時、排除された』


「じゃあ、どうすんの!」


『私が知るか! なんとかしろ』


 氷狐も言ってた。

──その力が、あればだけど。


「飛べる力だとは、思わないじゃん!」


 冷たい風が吹いてくる。


 ダメだ。これは朝までもたない

 ヤバい……マズい……

 マ……


 ズシン、と遠くで

 響く音がした。


「ん?」


 ズシンと上でまた音がする。


 なんだろう。

 見上げた時、


 光る穴から、

 同じく金色の、

 大きな毛の塊が落ちてきた。


「うわっ! ぎゃ!」


 その塊に押しつぶされる、

 大きなそれは、金色の狼で


「って、え? ニーナ?」


「……ガウ」


 狼が光って、人型に変わる。


「アスナ! 心配した!

 戻らなくて、ずっと!」


「ニーナ、来てくれたのね、

 強い力が必要なのに」


 きっと、すごい

 頑張ってくれて、


 その体に、力を溜めて。


「アスナ……体、冷たい。

 大丈夫?」


「そうだ! ニーナお願い!

 困ってるの、助けて!」


「う?」


「狼になって、私を乗せて、

 天井の穴まで飛んで!」


「うん! 分かった!

 まかせて!」


 金色の大きな狼。

 その背中に乗る。


 ニーナの跳躍で、

 軽々と天井まで飛び上がり、

 光の中に飛び込んだ。


 体が光に包まれる。


 そしてその出口から、

 入った時と同じように、

 ぺっ、と放りだされた。


「うわぁ、ぎゃ!」


 またお尻を打って、

 上にニーナが落ちてきた。


 吸い込まれた場所、

 氷柱の所だ。


「おい! 大丈夫か?」

 ジルの声がする。

 心配して、きてくれたのね。


「ニーナ。人型なって、重い」


「ガウ」


 ニーナが光って、人の姿で、ギウと抱きついてくる。


「アスナ……良かった」


 その声が震えていて、

 だいぶ心配させてのが分かる。


「こいつ、ずっと入ろうとしてて、だいぶ力を使ったから、ボロボロだ」


 あぁ、それで成長したのか。

 そして、夜で道開いたから、

 少し入りやすくなったから。


「ありがとう、ニーナ。

 すごく助かった。

 もうダメかと」


 ほんと、ヤバかった。


「本当? ニーナ役に立った?」


「うん、助けてくれて、ありがとう。ニーナ大好き!」


 その頭をクシャクシャ撫でる。

 本当、良い子だ。


「じゃあ、またチューしてくれる?」


「いっ!」


「……おい」

 ジルが怖い声で言う。


「いや、あの……ですね」


「どういう事だ?」


「アスナ! 氷狐の匂いする!

 氷狐と一緒に寝た!」


「なんでもかんでも

 寝た事にしないで!」


「おいコラ、どういうことだ?」


「違う、そこまでしてない!」


「じゃあ、どこまでしたか、

 説明しやがれ、こら!」


「違うんだって、本当

 ちょっと防寒したり、

 モフモフしたりしただけ」


「は?」


「アスナ、今日は一緒に、

 寝てくれる?」

 ニーナが私の腕を掴んで、

 聞いてくる。


 そうだ、その為に

 来たんだった。


「うん、今日は、

 一緒に寝ようね」


「やったぁ」


 ニーナはその顔に

 元気と自信を取り戻した。


 あぁ、良かった。本当。



  ◇◇◇◇



 次の日の朝、

 やけに寒いなぁ、と思ったんだ。


 雪原にテント泊だとしても、

 寒すぎない?


 ぼーとする頭で起きて、

 そして気づく。


 服、着てない!


「ニ、ニーナ!」


「……んー?」


「寝てる間に、服脱がしちゃダメ!」


「なんで? そっちのがあったかいし、気持ち良い……」


「ダメったらダメなの!」


「まだ眠いよぉ……

 もう一回……ねむ──」


「ぎゃ! 抱きつかないで!

 やめて! 寒い!」


「アスナ、あったかい……」


「あぁ、もう!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「起きたんなら、

 離してください」


「ごめん、無意識で」


「わかりましたから、

 離してください」


「夢見てたから、昔の夢」


「だから、離してくださいって

 聞いてます?」


「ちょっと、辛くて、

 泣いてたから」


「わかりましたよ!

 好きなだけ握っててください」


 毎日更新!


 今日も

 お仕事お疲れ様!

 モフモフー

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― 新着の感想 ―
[良い点] 寝ている間に裸にしたのか! なんてけしからんワンコだ! でもカワイイから赦される( ゜д゜)!
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