表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/63

第三十四話、舌と君と上書き相殺

「僕の言う事、聞いてくれるね」

 氷狐──ココが笑って言う。


「うん……もちろん」

 頭は痺れて動かない。


 腕と胸ぐらを離される。

 なんとか立ってられる。


 ふわふわして良い気持ち。


「あははははっ、これでやっと」


 ココが頬を触ってくれる。


「君を好きに出来る」


 ココが笑ってて嬉しい。

 あぁ、しあわせ。しあわ……


 バタバタと足音がした。

 廊下を誰かが走っている。


「あーあ、さっきのドタバタで、誰か様子を見に来たねぇ」


 ココが嫌そうな顔してる。


「邪魔されても、嫌だし、ちょっと凍らせてくる」


 ココが私の手を引いて、ベッドに座らせた。


「君は待っててくれるよね」


「……はい、もちろん」

 待ってる。ずっと。


 ココがドアの氷を壊して、部屋を出ていく。

 ベッドに座ってココを待つ。


 待ってなきゃ、ココを……


 ボンと、どこかで音がなった。


「あぁーあ、まったく、だからキツネには懐くなと、あれほど」


 誰かの声がする。


 誰? ココじゃない、嫌い。


「これは、緊急回避措置で、仕方ない事ですからね」


 誰かが視界に入ってくる。

 誰だっけ?


 顎を掴まれ、上を向かされる。

 顔が近づいて、口をくわえられた。


 あれ? なんでキスされてるんだっけ、これは誰だっけ


 誰だっけ、誰、誰、だ、


 舌?


 舌? 舌! 舌がー!

 ちょ! これ、まっ、


「ん……んー」


 ちょ! 舌! なんで! 入ってきてんの、なにかき回してんの! ちょっと! 

 不法侵入! これ、ふほーしんにゅー!


「んー、んー、……ん、っあ」


 やっと口が離されて、

 舌が出ていく。


 反射的に口を隠して、

 糸ひくなにかとか、

 激しい息とかを隠す。


「おや、正気にもどりました?」


 スーツの、コウモリ羽根!

 カルア!


「か、か、カルア。今、なに」


「何って、テイムの上書き相殺です。授業で習ったでしょ」


「うわが……」


「より、好きな相手からテイムをかけられる事で、前のテイムと相殺します」


「より好……す……」


「まぁ、キツネより好かれてるか、不安ではありましたが、解けたって事は、少なくとも同じくらいは、あなたに好かれてると……」


「ば、ば、ば、バカ!」


「まぁ、向こう偽者ですし」


「だからって舌」


「気持ち良かったんですか?」


「違う!」


「の、わりに結構、応えてましたが」


「応えてない! バカ! 変態!」


「助けてあげたんだから、感謝してください。今のうちに逃げ──」


 床から3本、氷が飛び出して、カルアの体を貫いた。


「ひっ!」

思わず私の口からでる。


「ぐっ……」

 カルアが顔を歪める。

 尖った氷が、胸と腹を貫いている。


 キィとドアが開いて、

 氷狐が現れた。


「やだねぇ、これだからコウモリは、人のものに手をだして」

 パキパキと、左手に爪を生やしながら。


カルアが顔を歪めて。

「人の、ものに、手をだしてるのは、そっちです」


「使い魔ごときが!」


 氷の爪で真横になぎる。

 ガシャンと氷が弾けて、カルアが床に吹っ飛ぶ。


「カルア!」


 床に倒れて動かない。

 ピクリともしない。


 うそ、そんな……


 消える事はあっても、動かなくなる事なんて無かった。


 氷狐の甲高い笑い声がする。


 そんな、そんな……

 カルアが……


 あぁ……


 あぁ


 ゆるさない


 頭の中で、青い炎が弾けた。


「は? 今……」


「×××××」


 音が消えて、目の前が弾けとぶ。

 遅れてパアンと破裂音と、

 青い光が放射状に広がって、

 辺りが燃え上がる。


 キツネが弾かれ、床に転がって顔をあげる。


「その目……ルシファルスの、」


 逃がさない。


 キツネに飛び掛かって、

 手を伸ばす。


 氷の壁が目の前に出来た。


 無駄な事を、

 氷が、炎に勝てると?


 青い炎が壁を壊す。

 砕けた氷の向こうから、

 氷狐が消えてる。


 あぁ、どこに行った?

 いじらしい。

 その顔、燃やし尽くす。


「まさか、自ら贄になりに行くとは思わなかったよ」


 ベッドの上にふらりと氷狐がたっている。

 いつもよりフワフワの耳、

 いつもよりおおきなしっぽ。


「カルアを……ココを……返してもらう」

 全部私の、渡さない。


「そして、お前のふわふわ、

 燃やさせろ」


 氷狐が、は? と、顔をゆがめて、

「記憶が、残ってる? バカな、あり得ない」


「×××××」


 私の前で、青い火の球が膨れあがる。

「昔、お前が私にした事、忘れてない」


 前方に火の球が爆発して、

 天井や壁が全部吹っ飛んた。

 氷柱がベッドにまわりだけ生えていて、

 パリンと割れて、氷狐が立ってる。


「ははっ、違うね。意識が融合してるんだ。

 これは良い物をみた、おもしろい」


 次は外さない、

 私の苦しみ、痛み、

 全部、全部おもいしれ!


「いいよ。今日は彼は返そう。

 君がどんな選択をするか、

 楽しみだ」


 何を言ってる?

 誰を返すって?


「じゃあ、またね。

 次も二人が良い」


 にっこり、笑って、

 口元に指を立てて。


 そして意識を失うように、

 ベッドに倒れた。


 あぁ、待って。

 まだ、まだだ、まだ足らない。


 燃やし尽くす。

 足らないの!

 たらな……


 ベッドに駆け寄って、

 そこに倒れるキツネの

 胸倉をつかむ。


 指先から、青い炎がにじむ。


「おい! やめろ! アスナ!」

 遠くから、誰かの声がする。


 誰だかしらないし、

 そんな名前は知らない。

 私の名前じゃない。


「やめろ! ココが燃える!」


 誰が燃えるって?

 あぁ、キツネか。

 青い炎が、キツネを包む。

 苦しんで欲しいんだ、

 あぁ、私に見せて、

 苦痛に歪む顔。


 ココが目を開ける。

 こっちをみて、そして、


「大丈夫だよ、ルシファルス」


 私の名前を呼んだ。


 え?


 燃えているのに、

 苦しいはずなのに、

 その燃える手で、

 私を抱きしめて、


「大丈夫、僕にはわかるよ、

 君の気持ち、君の辛さ」


 分かる? 何が?

 私は、


「辛いよね。ごめんね」


 苦しいはずなのに、

 ココは笑っていて、


 辛い? 私が?

 そう、辛い。

 辛い。誰も燃やしたくない。


 でもみんな酷い事を

 私に酷い事を。


 辛くて、つらくて。


 ぽろぽろと涙が落ちて、

 炎を消していく。


 なんで泣いてるんだっけ、

 なんでココ燃えてるんだっけ、


 あぁ、私が、


 私が燃やしたから。


「ココ? ……ココ!」


 パァンと音をたてて、炎が消える。

 意識が急速に戻ってくる。


「ココ! ココ、ごめん、燃えてる、私のせいで」


「あぁ、うん、気にしないで」

 と、半分焼けた顔で笑う。 


「大丈夫だから、僕は……ぼ、」

 グランと、ココの身体から力がぬける。


「おい!」

 ジルが駆け寄ってくる。


 そうだ! さっきのジルの声だった。


「助けて! ココを助けて! 私が、私が燃やして!」


「落ち着け、ココは大丈夫だから、お前ちょっと、息を吸え」


「私の、私のせいで、ココ死んじゃう!」


「大丈夫だ、だから、な」


 感情がまとまらない、

 鼓動がとまらない。


 ジルが、壁と天井が吹き飛んで、いたるところに青い炎がくすぶる室内を眺めて、

 息を吐き出す。


「おい! なんでこの男がここにいる?」


 ジルが、床で倒れるカルアをみつけた。

 そうだ、カルア!


「お願い! カルアも助けて」


「は? でもこいつは」


「お願いだから、お願い……今は、助けて……お願い……ジル」


 涙が止まらなくて、

 顔を両手で覆って、

 懇願を繰り返す。


 ジルが舌打ちして、

 ため息をついた。


 人が集まってきて、

 騒がしくなっても、


 私はずっと泣いていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「可愛いよ、アスナ」


あぁ、もう

テイムよりたちが悪い。


「上書き、された?」


「され、ました」


 毎日更新!


 今日も

 お仕事お疲れ様!

 モフモフー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ