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第三十話、修学旅行と課題と氷

「修学旅行!?」


「違うって、課外授業だからね」

 浮かれる私に、

 ラウルは静かに訂正する。


「でも、一泊でしょ?」


「まぁ、そうだけど」


「楽しみ!」


 ドキドキのイベント!

 思えはリアルの時は

 虫垂炎おこして行けなかったのだ。


 でもこっちでは、

 ドキドキ、キュンキュン、クラクラ、メロメロの青春!


 枕投げしたり、トランプしたり、恋バナしたり、好きな人言い合ったりして、

 もー、やだー。


「分かってると思うけど、アスナ一人部屋だからね」


「……え!? なんで!?」


「いや、女子一人だし」


「マジ?」


「あと、お風呂はアスナだけ部屋風呂だよ」


「え! 大浴場じゃないの?」


「アーク様が、『可愛い妹のお風呂が覗かれる訳にはいかない』って、学園にかけあって」


「お、お兄様のぶぁかー! ドキドキ、キュンキュン、クラクラ、メロメロの修学旅行がぁ~……」


「だから、課外授業だからねー」



◇◇◇◇



 そんな、ドキドキの課外授業当日!


「すごい! 一面、真っ白!」


 数人ずつペガサスに乗って、小高い丘の上に下り立つ。


 学園から数分しか翔んでないのに。

 一面の雪景色。

 遠くに塔みたいな氷柱がそびえていて、辺りには樹氷の森が広がっていた。


 ペガサスから降りると、ヒンヤリした空気を足元から感じる。

 気温が低くないのに不思議。


 レオナルド先生が一学年すべてを集めて、説明を始める。


「ここが、30年前の瞬間大凍結事件の跡地である。真ん中の大きな氷柱を、ファウンデッタ・クライシスと呼ぶ。また事件そのものを、同じ様に呼ぶ事がある」


 なるほど、ここが。

 テストで勉強したけど、実際に見ると重さが全然違う。


「樹氷林は広大で、各地に避難小屋が設置されている。事前に準備している通り、その管理、検査、物資補充が目的である。各班、気をつけて行動するように! 解散!」


 丘から見下ろすと、真っ白な樹氷林がどこまでも続いていた。

 これが、全部、30年前に一瞬で凍った?


「アスナ、行くよー」


「うん、今行くー」


 広大な氷の森と、

 その真ん中にそびえる氷柱を眺めて、

 ラウルの元にかけよった。



◇◇◇◇



 避難小屋は、つまり山小屋のような物だ。


 補充する物資は、水や食料や毛布などで、つまり重い。


「はぁ……はぁ……重い」


 私、ラウル、ジル、ココの4人の班は3つの小屋を回る。

 つまり、三ヶ所分の物資。


 一番軽い荷物にしてもらってるが、それでもリュックは重い。


「大丈夫? やっぱり少し持とうか?」

 ラウルが心配そうに、覗きこんでくる。


「いやいや、ただでさえ軽くしてもらってるのに」

 自分の分くらい運ばなきゃ。


「じゃあ、少し休憩しよう」

 と、ココが笑っていう。


「少し目的地からずれてるっぽいの。今、ジルが上から確認してるから」

 おっきな麦わら帽子かぶって、いつもの白い服で。


「良かった、ちょっと休憩」


 リュックを下ろして、一息つく。


「ペガサスで、物資ごと、空から運んでくれれば良いのにー」


「自分の足で運ぶのが、授業だよ」

 ラウルが言って、


「吹雪いたりすると、ペガサスもキマイラも飛べないからねぇ」

 ココが補足する。


 各地の避難小屋の管理は、

 ビーストテイナーの仕事の一つだ。

 それを学ぶ、課外授業。


 うぅ、本当に修学旅行じゃなくて、授業なんだ。

 うかれてたのになぁ。


 ジルが羽ばたいて降りてきて、

「もう少し西よりだ。氷柱に向かって進む。根本に小屋がある」


「はいはーい」

 ココが地図と方位磁石を見ながら答える。


「おい、行けるか?」

 ジルに聞かれて、


 私は覚悟を決めて、またリュックを背負う。

「もちのロンです!」


「お前が元気だと、心配になるわ」


「えーなんでー?」


 凍った草を踏みしめて、道なき道をすすむ。

 ジルが先頭で『やぶこぎ』してくれてるから、まだ歩ける。


 森の中で、時折魔獣が凍りついていた。

 元は普通の森で、沢山の魔獣がいた。

 それがすべて凍っている。


「おい、開けたぞ!」

 ジルも声で顔を上げると、

 木々の先に空間が広がっていた。


 そこだけ広場のように木がなくて、

 ぽっかりと空がひらける。


 灰色の小さい建物が見える。

 多分、あれが避難小屋。


 そして、その奥に立っているのが……


「ファウンデッタ・クライシス……」


 雲まで届く、氷柱。

 大きい、初めてスカイツリー見上げた時みたい。


「アスナー、小屋はいれるよー」

 呼ばれて、避難小屋までまた足を進めた。


「あー、重かった」

 ドスンとリュックを下す。


 小屋は一部屋だけの

 簡素な作り。

 ベッド一つだけで、椅子もない。

 トイレはあるけど、机とかはない。


「設備チェックはやる。補充作業はたのむな」

 ジルに指示をもらい、

 リュックを紐解く。


 あぁ、これで重さが減る。

 三分の一だけど。


「……ガウ」


 ん? なんか今、

 荷物がモゾって


「あすなー!」


「ぎゃ!」


 男の子が飛び出してきて、

 抱きつく。

 思わず後ろに倒れる。


「ちょ! え?! ニーナ?」


「ガウ」


 ニーナがすりすりと

 胸に顔を押し付けて、

 嬉しそうに。


「え? 今、リュックから出てきた?」


「あー、ついてきちゃったんだねぇー」

 ココがニコニコ笑っていう。


「ど、どうりで重いと……」


「大きくなれるなら、小さくもなれるもんね」


「ニ、ニーナ。ダメでしょ! 勝手に!」


「……あう」


 あー、どうしようかなぁ、たぶん怒るんだろうなぁ。


 ◇◇◇◇


「は、ニーナが付いてきた?」

 ジルはやっぱり、怒った顔で。


「うん。ごめん」


「お前……だから……お前が……甘やかし」


「ご、ごめんて……」


「ジル。アスナはちゃんと叱ってたし、ニーナは反省してるみたいだよ」

 ココが助け船をだしてくれる。


「……ガウ」

 シュンとしたニーナが

 悲しそうな声をだす。


 自分のせいで飼い主が怒られてるのが分かるんだろう。


「ジル、あの。ニーナが進めない所は、僕が抱っこして飛ぶから、だから」

 ラウルが言ってくれて、


「わーったよ、こっそり連れてけばいいんだろ。ったく」


「ありがとー、ジル」


「アウ!」

 ニーナが嬉しそうにその辺を走りまわる。


「あぁー、あんまり遠くいかないで!待って、ニーナ」


「樹林の中じゃ、暴れるなよ。そいつは大丈夫でも、氷系の魔獣は新緑系を嫌う。聞いてっか、こら!」


「ジルも甘くなったよねぇ」

 ココがしみじみ言って。


「は? 別になってねぇし」

 ジルが返す。


「アスナに、ね」


「……お前」


「そっちは否定しないんだ」


「うるさい」


「まぁ、僕は良いんだけどねぇー。アスナー、もう少ししたら出発するから、今のうちにニーナに水あげたらー」


 氷柱の近くで、ニーナを捕まえると、

 ココが水筒を持ってきてくれた。


「ありがとう、ココ」

 受け取って、ニーナにあげようとしたんだけど


「ガウ!」


 ニーナが、氷に向かって吠えた。


「え? なに?」


 すごく太くて、氷の壁みたい。

 良く見えないけど、

 奥に、何か、

 誰か、凍ってて。


 誰かに似ていた。

 誰だっけ……


「アスナ、今、僕の名前呼んだ?」

 ココが聞いたので、


「え? 呼んでないけど──」


 振り返った時、

 ココの身体が

 弾かれるようにエビ反った。


「へ?」


「え?」


 ココの顔が、苦痛に歪んでいく。

 見開いた目が、細かくブレる。


「ココ?」


 ガシャンと前のめりに、

 ココが氷に腕をつく。


 胸を押さえて、苦しそうに。


「どうしたの? ねぇ」


「これ、は……まさか」


「ココ!」


 ズルと力が抜けて、ココが倒れこんだ。


「みんな来て! ココが! ココが!」


 叫ぶ私の腕の中で、

 ココの目がゆっくりと閉じていった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「僕は、氷弧。ずっと見てたよ、君の事。

 さぁ、僕がもてあそんであげる」


「ココを返して!」


 毎日更新!


 今日も

 お仕事お疲れ様!

 モフモフー


本回から、『修学旅行編』スタートになります。


修学旅行の最後(33話から)

5話連続キス回フィーバー

が、ございます。

ぜひ、お楽しみください。



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