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第十六話、香る茶葉と君の胸

 ジルの部屋は綺麗に整頓されて、

 掃除も行き届いていた。


「そこ、座れ」


 と、テーブルの前の椅子を指す。

 私は椅子に腰かけて、部屋を見回す。


「綺麗な部屋」


「姉貴が、そういうのにうるさいんだ」


 カチャカチャと、

 なにか準備しながらジルがいう。


「椅子が固ぇのは勘弁しろ。

 ラウルの部屋なら、

 お前用のクッション有るんだがな」


「私用の、クッション?」


「お前が

『座れたもんじゃありませんわ!』

 て叫んでるの。

 俺の部屋まで聞こえてきたからな」


「あぁ、なるほど」


「借りれたら良いんだが、

 帰ってから姿が見えない」


「そうなの?」


「だから、探してたんだ。

 バジリスクの死骸みてから、

 なんかソワソワしてたし。蛇嫌いか?」


「あぁ、かも」


 ポットと、カップを2つ持って、

 ジルがこっちにくる。

 机にカップを置いて、中身を注ぐ。


「飲めるか? 温まるぞ」


「良い香り」


「故郷の茶葉だ。いっぱい送られてくる」


 ジルはカップを渡すと、

 自分もカップを持って、

 ベッドに座った。


「お姉さんがいるの? どんな人?」


「あ? あー……怖い」


「え?」


「すごい、怖い」

 苦笑いしながら、ジルが言う。


「ジルにも怖いものあったんだ」


「お前、俺をなんだと思ってる」

 そう言ってお茶を飲む。


 温かくて、美味しくて、落ち着く。

 落ち着……


 ポロと涙がこぼれ、テーブルに落ちた。


「おい、大丈夫か?」


「あー……うん、大丈夫」


「あの男か?」


「いや、そうじゃなくて、

 今日はいろいろあったっていうか……」


 バジリスク、

 ココが刺されて、

 青い炎で燃えて、


 そして


 ポロポロと涙が止まらない。

 いろいろ、ありすぎた。


 ジルが横に立って、私の頭を抱く。

 ジルの胸に顔を押し付けて、私は泣く。


──ご主人様の生け贄です。


 カルアは最初からそう言った。

 私はそれを受け入れた。

 所有物。

 彼の、ご主人様の。


 だからココの前であんな……


「お前を、今泣かせてるのは、

 あの男か?」

 ジルの声が近くから聞こえる。


「違うのか? じゃあ、ココか?」


 私は弾かれるように顔をあげた。

 ジルがこっちを見ながら、


「そうか、ココか」


 と、諦めたように呟いて、

 また私の頭を優しく抱きしめた。


 しばらく泣いたら、だいぶ落ち着いて。

 声が出るようになるまで、

 ジルはずっと抱きしめてくれた。


「もう平気」


「それが本当は平気じゃないくらい、

 俺には分かるからな」


 そう良いながらも、離してくれて、

 冷めたカップを持ってベッドに戻った。


「あの男、なんだ?」


「名前なら、カルア」


「それはお前が叫んでたから知ってる」


「なんか使い魔っぽい」


「それも見れば分かる。他には?」


「……羽根の根本が弱くて、

 触るとめっちゃ怒って仕返しされる」


「おいこら!

 あの男の性的に弱い所、興味ねぇよ!」


「あと、着替え中はちょこちょこ、

 現れるけど、シャワー中は

 出てこないから、多分水にも弱い……」


「てか、アイツお前が着替え中に来んの?

 てか、お前、いつも、何やってんの?

 アイツはお前の何?」


「何かと聞かれたら──」


──所有物。


 声が出なくて黙りこむ。

 ジルがため息ついて、


「まぁいい。それで、

 なんでアイツはお前の所に現れる?」


「カルアが仕えてるのが、ルシファルス

 って魔族で、私は復活の為の生け贄で、

 手から青い炎が出た」


「は? え? ちょっと待て、

 急に情報量増やすんじゃねぇ、は?」


 カップを置いて、ジルが立ち上がる。


「ルシファルスって、今言ったか?」


「うん」


「お前、青い炎だしたのか?」


「うん」


 ジルが天井を見上げて、

 両手で目を覆った。


「そうか、だからココがあんなに……」


 と、理解したように呟いた。

 数秒、そうしていたジルは、

 そのままの体勢で、


「青い炎はすべてを焼き尽くす」

 話し始める。


「魔獣も人も、自然も魔族も関係ない。

 だから数十年前に、魔族と人間と魔獣が

 協力して、封印した。そうしないと」


 ゆっくりと、こっちを向いて。


「世界が、焼き尽くされたからだ」


「いっ……」

 私の口から、思わず声が漏れる。


「それが、復活する? お前を贄として? 

 すでに青い炎をだした?」


 ジルの声は低くて、

 深刻さを帯びていた。


「事の重大さが、わかったか?」


 ジルは、はぁと息を吐いて、

 自分に言い聞かせるようにそういった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 『次回予告』


「嫌……」


「は?」


「朝まで、ここにいる」


「おま……」


「抱き、しめて……下さい」


 毎日更新!


 今日も

 お仕事お疲れ様!

 モフモフー

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