第十二話、しっぽモフモフ、ケモ耳プニプニ
もふもふ、だー!
もふもふ、もふもふ。
ふわふわで、柔らかくて。
あー、しあわせだぁ。
もふもふしながら、
ゆっくり目を開ける。
寝起きの目に、誰かの顔が映る。
「可愛いよ、アスナ嬢」
優しく頭をナデナデされて、
すごく気持ちが良い。
えへへへ……
しあわせだぁー
しあー……あー、あれ?
「……ココ?」
「うん。僕だよ」
ん?
ココが隣に座って、頭を撫でていた。
私はなんか、白くてふわふわしたのを
枕にして、寝転んで。このモフモフは、
「それは僕のしっぽだよ」
「マジか! どうりで」
ふわふわでもふもふで最高です!
「ごめんね。枕に出来そうな物、
それしかなくて」
「むしろご褒美です!」
「そう、良かった」
ココがニコニコ笑う。
いつもの、糸目の。安心する笑顔……
あれ? ここどこだっけ。
「ここは少し先の洞窟」
あぁ、最初に逃げ込め、と
ココが言ってた所。
洞窟と行っても、先は無い。
五メートルくらいですぐ行き止まる。
洞穴。
「そうだ! バジリスク!」
「もういないよ。
でも、砂嵐は続いてるから、
入り口は僕が氷でふさいだ」
たしかに、
氷の壁が入り口を覆っていた。
中に灯りは無いが、氷が透明で、
外の光を取り込む。
「砂嵐がやむまで、ここにいよう」
にっこり。笑ってココが言う。
「傷は? ココ、刺されて血が」
「あぁ、もう治ったよ」
「え?」
「見る?」
ココが血で変色した裾を、持ち上げる。
髪と同じくらい白い肌があって、
細い腰が見える。
「傷が、ない」
「まだ見る?」
いや、刺激強いんで
早くしまってください。
「言って無かったけど、
僕、スッゴい治るの早いの」
「そうなの?!」
「あ、死なない訳じゃないし、
痛くない訳でもないよ。
この傷も一時間くらいかかったし」
「一時間……私、そんな寝てたの?」
「うん、力使って、疲れたんだと思う」
力……あの青い炎。
あれ、いったいなんだろう?
アスナちゃん固有の能力?
「心当たり、ないの?」
「私、なんにも覚えてなくて」
そう。
と、ココの顔から笑顔が消える。
え? なんかマズい?
「いや。でもおかげで助かったよ。
ありがとう。
実はちょっと危なかったんだ」
「だよね! そうだったよね。
しっぽ、また、
もふもふして良いでしょうか」
「うん、もちろん」
やったぁ!
しっぽに抱きつく私の頭を、
ココが優しく撫でる。
ふぅと一つ白い息をはく。
「でも、こんなおっきいしっぽ、
いつも服に入れてるの?」
「驚いたり、生命の危機を感じたりすると
おっきくなって、しばらく戻らないの」
なるほど、猫がビックリして
毛を逆立てるみたいな。
「あの炎、熱くて」
「それでなの! ごめん。
ココを焼く気は無かったんだけど……
初めは」
「初めは?」
「なんか、変な考えになったっていうか……
思考がぐちゃぐちゃして」
ふぅん、とまた笑顔が消える。
「ごめんね。熱かったよね。
この辺、燃えてたもんね」
と、ココの肩をなでる。
服は焦げてるくらいなのは、
たぶん、中身が先に溶けたから。
「大丈夫だよ。
でも、もう僕といる時は使わないで」
そう言って私の髪をなでる。
「大丈夫、僕と居る時は、
僕が君を守るから、ね」
その笑顔が、また昔の記憶と重なる。
そう『大丈夫』と言って、倒れた先輩。
「ダメ……」
「ダメ?」
「ダメ! ダメだよ。
ココそう言ってさっき死のうと」
「別に死ぬ気だったわけじゃ……」
「でも死ぬかもしれなかった。
さっきそう言った」
「あぁー、言った、ね」
ココが失敗した、見たいな顔をする。
「全然大丈夫じゃない。
なのに、大丈夫って言った」
そうやって、全部背負い込んで、
死んでいく。
笑って、隠して、背負い込んで。
苦しいのに、痛いのに。
「でも他に方法は……」
「苦しいなら苦しいって言ってって
言ってるの。
何もできないけど、言って」
苦しい、辛い、眠れない、悲しい、
寂しい、一緒にいて、話を聞いて。
言ってくれればよかったのに、
私に、できた事が
あったかもしれないのに。
でも先輩はいつも、
大丈夫って笑って、
全部背負い込んで。
──大丈夫だよ、倉田。気にすんな。
──お前は前だけ向いてろ、ほら
──良い子だ……
「大丈夫って笑わないで」
言ってくれれば、
私も言えたかもしれないのに。
苦しい、助けて。
言えたかもしれないのに。
……先輩。
「ごめんね、泣かないで」
ココが優しく抱きしめてくれて、
その胸に顔を押し付ける。
「そうだね。僕が死んだら、
君も同じ道を辿ってしまう」
ふぅ、とまた白い息を吐く。
吐息に混じる、
重い悲しみを感じ取る。
私はココに聞く。
「本当は苦しい?」
「うん」
「本当は悲しい?」
「うん」
知りたく、知りたくて、
たまらない。
「全部教えて」
胸にたまるすべてを。
あなたを泣かせるすべてを。
何もできないけど。
知りたくて、胸が焦がれる。
「僕の中には、魔物がいる。
夜に暴れだす。
だから僕は、自分を凍らせて眠る。
仕方ないんだ。でも、すごく辛い。
何より、僕は家族の中で、
愛されなくて──」
ポロと一つ涙がこぼれて、
「だから僕が死ねば、」
──死ねば、みんな幸せなんじゃと。
いつも考えて、
声が続かなくて、震える。
ギウと、ココの身体を掴む。
こんなにつらいのに、
なんで笑えるの。
なんで笑えたの。
──倉田。大丈夫か? 休める時は
休めよ。俺みたいになるぞ。
こんなに、辛いのに。
「そうだね。僕が死んだら、君が……
君を失いたくない」
耳元で呟かれて、顔を上げる。
ココの穏やかな、
安心する笑顔で。
「私、ココの白い髪も白い肌も
大好きだよ」
「そう?」
「耳も真っ白で、ふわふわで……ふわふわ」
「どうしたの?」
「あの……えっと……」
「言わなきゃ、わからないんだろう?
口に出して、お願いして」
耳元で呟かれて、
顔が赤くなる。
相変わらずの、ふんわりした笑顔で。
この顔は、ずるいと思います!
「あの……さ、さわ」
「聞こえないよ」
「さ、触らせてください!
耳……お願いします。」
ココがにっこり、笑って、
「よくできました」
と、耳元で呟く。
だから、ずるいと思います!
「いいよ。好きなだけ触って」
「やったぁ、ココ大好き!」
私はココの首に抱きついて、
ココの真っ白な、
キツネの耳に手を伸ばす。
「僕にはもったいない言葉だねぇ」
えへへへへ、耳! ケモ耳!
ふかふか、プニプニ……
気持ち良いーーーーーー
ココが私の髪を撫でながら、
「アスナ、可愛い」
と、ふんわり笑った。
◇◇◇◇
「急いで捜索しにきたら……
どういう状況か説明してもらおうか」
「あ、ジル」
「なんで抱きついてんのか、
聞いてもいいか、おいコラ」
「い、いや、違うのよ。
決して、やましい事をしてたわけじゃ。
ちょっといろいろ、展開が」
「何がどうなったら、そうなるんだよ!」
「えー、遭難したら、
抱き合うのが良いっていうじゃんー」
「雪山じゃねぇから!
灼熱砂漠だから!」
「いやほんと違うの。
健全な。きわめて健全な」
「俺の後ろでラウル、
風、巻き込みだしてるからな」
「ちょ! ラウル、魔法やめて!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【今日のキャラクター紹介!】
『ココ』
ココルディア・テイラー
白髪、白い服、キツネ目、
キツネ耳、しっぽ。目は赤い。
キツネ属のなかで、
魔族を身体に宿して、
真っ白で生まれてきた子。
子だくさんなキツネ属で、
白くて馴染めてないのと、
夜に豹変して他人を傷つけるので、
口減らしに、学園に送られたよ。
一番強いけど、一番扱いにくいよ。
ココの今後の活躍にご期待ください。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『次回予告』
「アスナ、僕と一緒に×××××しようか」
「やめてください!あまりに卑猥です!」
「キツネは生まれつき鬼畜なんだよ、
知らないの?」
毎日更新!
今日も
お仕事お疲れ様!
モフモフー




