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陽気なワイバーンたちといたいけなドラゴンは、友情の神話を紡ぐ

ひときわ大きなワイバーンが、オケアノスを正面から見下ろしている。仲間たちから「王様」と呼ばれる飛竜が。

彼は、他の個体よりも体が大きく、飛行速度が速く、喧嘩に強いから、王になった。子供の頃から王と呼ばれてきた。

そんなワイバーン王は、このオケアノスこそが人間の王と判断した。

見た目では、他の人間と区別がつかないが。

『知能が高い人間族の王だから、万物に通じる言語を話せるのだろうな』と、雑に推察していた。


その人間の王が、「自らがワイバーンの屍を弄び、悪虐の限りを尽くした」と言う。

「ほとんどの人間は悪ではない」と説明し、謝罪してきた。


ワイバーンの王は、首を下げたままのオケアノスを見下ろす。


万物に通じる言語を話す人間。

自覚があるのかないのか、まさに極上の「贄」である。

この人間の死は、仲間の死を陵辱され怒れるワイバーンたちの溜飲を下げるだろう。


せめて、痛みを感じなくて済むよう、一撃で命を刈る。

大きく息を吸い込み、灼熱のブレスをーーー。


『だめーーーーーー!!!!』


湿原中に響く超音波。

万能薬を含んだ蒸気のブレスが、ワイバーン王のブレスを相殺した。

贄を屠る儀式を止めたのは、なんとドラゴンの幼生だった。

まだ鱗も生えていない、薄汚れた毛並みの幼子。

金の瞳は血走り、ゼェゼェ息を切らしている。小さな背中には、ダイヤモンドの錫杖を手にした人間を乗せていた。


ワイバーンは首を捻った。

こちらの人間は、人間の王よりもっと不思議だ。

人間なんてみんな同じにしか見えないのに、何故だろう。彼だけ個体差がわかるなんて。


幼いドラゴンと不思議な人間が、ワイバーンの王と人間の王の中間に着地した。


『ドラゴン族の令嬢が、なぜワイバーン族の報復を止める?』


ワイバーンの王は首をかしげた。ワイバーンたちも警戒し、「ギッ!」「ギッ!」と騒めいている。

だが、幼竜スノーローズは怯まない。


『おねがい! オケアノスを殺さないで! その人は、スノーのお友だちなの! おねがい!!』


ハラハラと涙を流しながら、声のかぎりに叫ぶ。

その背から降りた青年が、首の辺りを労わるように撫でた。

そんなスノーローズの頭上を200頭近いワイバーンが旋回し、幼い竜と人間たちを守るような陣形で着地した。

大勢の仲間たちと、敵対するような陣形で。

シギ州東部やサンドライト辺境地域で、人間たちと親しく過ごしてきた群れだった。


「アレス……?」


「ベガ。どうして」


辺境のワイバーンライダーたちが、口々に我が騎竜の名を呻く。

ワイバーンたちは、同族から友達を守るように翼を広げた。


『人間を滅ぼせ』という脳共鳴が、消えた。

かわりに、人間を友とする群れによる、地獄の脳共鳴がリスタートする。


『音声マックスで聞け! この人間たちは、うちらの群れの友達だーーー!!』


『トニオはオレの親友だ! なーんにも悪いことしてない! むしろできない! 人間にしちゃデカすぎるし顔も怖いけど、世界で1番優しい男なんだよ!」


『オレの親友が死んだら、もー2度と南国の果物わけてあげないからな!!』


『そうだそうだ! 人間が作ったプールに入れてあげないっ! もしくは羽根を折って沈める!』


『うちの親友なんて、オバケが怖くてひとりじゃお厠に行けないのよ! 死屍(アンデッド)になんて、乗れるわけないじゃん!!』


『ここの人間たちはみんな、うちらワイバーンが大好きなのよ! 絶対にいじめたりしないよ!』


『ねーねー、マジでユーコウ処す気? お友達のデュポンたちと倍返しに行くけど、覚悟は良き???』


総勢200余頭の、絶叫系脳共鳴が始まった。

約1頭、規格外のヤバいやつも紛れている。


通常、ワイバーンの王が脳共鳴で天敵を伝えたら、全ての群れがその情報を共有する。

眠っていても、目覚めたら共鳴を受信する。

だから、辺境人と共に暮らす群れも、寝起き直後は激怒していた。

人類を滅ぼす勢いで来た。

だが、スノーローズの出現で我にかえった。『あれ? なんでうちらの友達まで、総攻撃されるの?!』と。


『あー! もしかしなくても、そっちで死んでるの、うちらに乗れない系の弱い人間じゃない?!!』


『ひど! 弱い人間は死屍(アンデッド)なんて作れないし、乗るなんて更に無理無理なのにー!』


『え。でも、でも! お墓を暴いたのも、おじいちゃんたちを死屍飛竜に改造したのも、そいつらと同じ人間だし!』


『復讐、雑くね? あんたがもしドラゴン様にイタズラしたら、やってない群れの子もまとめて尻尾バンされろって? ありえなくなくね?』


『ドラゴン様はワイバーンの見分けつくけど、うちらは人間なんかどれが誰だかわかんないもん!』


『わかんないからって、全部まとめて殺すかー? 野蛮すぎー!』


『バカなの? 逆恨みで殺しちゃった人間たちにだって、家族や友達がいるんだよ?!』


『う……!』


人間を友とする群れによる、お説教タイムが続く。

人間と接点のない大多数のワイバーンたちは、きまり悪くて目が泳ぎまくっている。

怒りで錯乱してさえいなければ、非常に友好的な種族である。

食糧か天敵でなければ、あらゆる生き物と仲良くしたいクチだ。

怒りに燃えていた黒い目は、今や若干涙ぐんでいる。



一方、スノーローズは頭にきていた。

何でオケアノスは、ひとりで死にたがるかなって。


確かに、彼は悪いことをたくさんした。

だけど、オケアノスの意思じゃない。

オケアノスの意思じゃないけど、やっぱり事実として悪いことをしてしまった。


オケアノスには内緒だが。オケアノスに殺され、死屍竜にされたこのドラゴンは、スノーローズが親しくしていた天竜だ。

数ヶ月は、寝ても覚めても涙が止まらなかった。今だって、ココロが痛くて泣きそうになる。


若葉色の鱗が、とてもきれいなお兄さんだった。

こんなホネホネの、真っ黒の、目がうろになっている、禍々しくて悲しい死屍(アンデッド)なんかじゃなかったのに。


天竜の幼生たちは、下界の生物が立ち入れない霊峰の巣で、お昼寝をする習性がある。

彼は小さい子たちにとびきり優しくて、下界の果物をたくさん運んでくれた。

『お腹いっぱい食べて、お昼寝したら、オレたちと遊ぼうね』って。


彼は、オケアノス達から襲撃された時、小さな子たちが眠る霊峰を悟らせないよう、囮になったのだろうと言われている。

死の前後数時間ほど、故意に脳共鳴を停止させていたらしい。

助けにきた仲間が、被害に遭わないように、と。

天竜の長老たちが、教えてくれた。


優しかったみんなのお兄さんが犠牲になって、死屍竜(アンデッドドラゴン)なんかに改造されて、悲しすぎて、悔しすぎて、吐きそうだ。


だけど、オケアノスは、お兄さんを殺したくて殺したわけじゃない。したくもない殺戮だった。それを無理矢理させられて、イヤだって言えなくて、体の自由もきかなくて。結果、心に深い傷を負った。言葉には出さないが、彼は常に自らに極刑を望んでいる。できるだけ惨たらしい極刑を。


そりゃあ、悪いことは悪いんだから、怒られるのは当然と思う。

でも、死んじゃうのはダメ。絶対に違う。

だってそれは、オケアノスを操っていた元凶の、身代わりになるってことなんだから。


スノーローズはたまらなくなって、オケアノスに突進した。頭をぐりぐりして、肩のあたりをスリスリした。

反射的にスノーローズを撫でながら、オケアノスは唖然としている。


「スノーローズ……フレデリック殿下、どうして……?」


王都に向かっているはずの王太子が、なぜ。

フレデリックは表情を変えず、顎をしゃくって命令を下した。


「トニオ・アリスト大将軍。皇太子オケアノスを捕獲せよ。戦犯だ」


「は!」


満身創痍の巨漢が、長身長駆の左肩を掴み、その場に座らせた。

だが、縄でくくりはしない。

察しの良い大将軍だと、フレデリックが目を細める。


「あなたを心配したスノーが、王都に戻らせてくれなかったんだ」


フレデリックはオケアノスの右肩に軽く手を置き、ポンポンとした。

スノーローズはオケアノスの背後に箱座りして、すりすりグリグリを強化している。


「死ぬなって約束くらい、守れよな?」


フレデリックは、呆れながらも笑っていた。「スノーの心配した通りだったね」と、反対の手で小さな頭を撫でて。


「スノー。私とトニオが傍聴人になる。オケアノスに言ってやれ」


スノーローズはオケアノスの肩に後ろから顎を乗せたまま、コクンと頷いた。


『どうしてオケアノスは、スノーの声が聞こえないふりをするの?』と。


トニオの双眼が、驚愕に見開いた。


人間と竜族は、会話を交わすことができない。

竜族は人間の言葉を理解できるが喋れないし、人間には理解も発音もできないから。

ドラゴンに騎乗を許されたドラゴンライダーだけが例外で、あらゆる竜族と意志の疎通ができる。

そして、ドラゴンライダーに触れると、ライダーでない人間も竜族と会話できるようになる。

辺境を訪れた日のヨアンが、飛竜騎士(ワイバーン・ナイツ)の面々にそれを披露し、辺境一帯に周知されている。

トニオの顔色が変わった。


「殿下! この御仁、まさか……!」


無言で頷くフレデリック。

ワイバーンたちも、ざわめきだした。

スノーローズはスクっと立ち上がり、オケアノスの正面にまわって箱座りした。そして、彼の双眼をしかと見つめて語りはじめた。


『スノーはオケアノスのこと、オケアノスが生まれた朝から知ってるのよ。でもスノー、その時すごーく眠たかったから。起きたら会いに行きたいって、ママにおねがいしたの。楽しみにしてたんだよ。でも、お目目覚めたら、めちゃめちゃ悪いことばっかりしててたし』


金色の瞳から、純金の涙がこぼれ落ちる。

ポロポロと、キラキラと。夜通しの長旅で、純白の毛は乱れ、薄汚れている。


『ママに聞いても、わかんないって。ヨアンに聞いてもわかんなかったけど、ヨアンのお友だちの、物知りなおじいちゃんが教えてくれたの。今は悪いヤツにあやつられてるんだって。でも、この国の王子サマが必ず助けてくれるから、王子サマをおてつだいしてあげてほしいって、言われたの』


『やっと本当のオケアノスになったのに、なんでスノーのことムシするの? スノーのこと、キライ? パパやママみたいなメガブレス吐けないから、お友だちになりたくない?』


「違う。……それは、絶対に違う」


『じゃあ、何で?! スノー、ムシされて、めちゃめちゃ、悲しかったよ!!!』


たまらなくなってスノーローズを抱きしめるオケアノス。

明けたばかりの朝日に照らされたスノーローズ。体毛はひどくへたれて、柔らかな地肌は霜焼けだらけだ。


「すまぬ。そなたを傷つけたく、なかった。友となった直後に死ねば、無垢な心に傷が残る。ゆえに、それゆえに……」


『そんなエンリョいらないっ!!! そんなの、スノーはもっともっとかなしくなる!!!』


スノーローズは、ますますすりすりした。なすがままのオケアノスの双眼からも、一雫、また一雫、雫がこぼれ落ちる。


オケアノスは、涙で霞む空を見上げた。

人間以外の生き物たちと、会話できるようになったのは、いつだろう、と。


物心ついた頃には、幻獣たちの言の葉を拾えていた。

帝国の皇子は皆そうだと思っていたが、違うと知ったのは、父である皇帝と謁見した時だ。

開け放した窓に鳳凰が羽を休め、皇帝に向かって『まあまあの凡帝だな』と吐き捨てた。オケアノスは鳳凰が殺されてしまうと震えたが、皇帝は上機嫌だった。


「畏れ敬え。未子よ。鳳凰が朕を祝福しておるぞ?」と。


オケアノスは、幻獣たちの言葉がわかる能力を隠した。

言葉がわかるだけで、支配しているわけではない。する気もない。傀儡に利用される危険性を察して、スゥにさえ言わなかった。

正解だったと思う。帝国での身の振り方も、神堂穂成に対しても。


北連合王国経由で亡命して海峡を渡り、峡湾を泳ぐ海竜たちの姿、楽しげな会話を聞いて、生まれて初めてこの特技に感謝した。

誰に遠慮することなく、生きとし生きる幻獣たちの言の葉を、遊泳を、羽ばたきを愛でることができたのだから。

天気の良い日は、峡湾から海竜を眺めた。

たまに、上位種のドラゴンや、友人を乗せて飛行中のワイバーンを空の端に見つけた。そんな日は、一日中なんとなく心が弾んだ。


スノーローズがオケアノスの誕生を察したように、オケアノスも心のどこかでスノーローズに会える日を待っていたのかもしれない。


「スノーローズ。すまない。余が、悪かった」


『そうだよ! オケアノスがいけないんだよ! ゆるしてあげるけど!』


労わりあうドラゴンと、竜殺しの竜騎士(ドラゴンライダー)

人間たちは立ち尽くすことしかできず、ワイバーンたちはつぶらな瞳を揺らした。


「ライダーの資格を持つ者が、竜を殺したと? 本人の意思ではなく。殿下、それは……」


トニオが、地を這うような重低音でうめく。

ライダーとワイバーンの絆は深い。

もしも、トニオが何者かに操られ、アレスの一族に手をかけたら?

アレスならば、決して自分を恨まないだろう。だが、心に大きな傷を負い、自らの命を絶つかもしれない。

それほどの傷を負ってきたのか。この幼いドラゴンと、まだ20歳の青年が。


生来、トニオはたいそう人が良い。一方、フレデリックには、そういう情緒が搭載されていなかった。


「スノーローズの心の傷を癒せるのは、自我を取り戻したオケアノス、あなただけだ。あなたに、自死の安寧など許さない。生きて、償って、足掻いて、貴方なりの幸せを掴め。それこそが、スノーの幸せだからね」


安定の無茶ぶりモードと、天使の笑顔が炸裂した。

スノーローズが全力で頷き、オケアノスは慟哭した。

フレデリックは周囲を見渡し、ドラゴンの巨体とヨアンを認めると、流し目で軽く睨んだ。

なんで、スノーローズがオケアノスの親友だと、教えてくれなかったかなあと。ドラゴンと会話できるヨアンやヨアンと親しくしていた上王レイアリスだ。知らなかったわけがないのに。

幼竜と竜殺しのドラゴンライダーを救う力があるか否か、試されていたならまだマシだ。受けて立つし。

どちらかというと、父王のスパルタから庇われた感がある、

事前に知らされていたら、この件の責任を、全てフレデリックが負うことになっていただろう。当たり前だ。

責任を渡さなかった祖父とヨアンを、過保護すぎると思う。甘やかされた経験が薄いフレデリックには、ちょっと、いや、かなりカユイ。


「皇語を操り、竜に愛され……本来なら、この世の栄華を極めるべき御仁が、なぜ帝都を追放されねばならなかったのでしょうか。さすれば、悪しき者の傀儡になることもなかったでしょうに」


トニオ・アリスト辺境候は、もはやオケアノスへの同情が隠そうともしない。フレデリックは、この御仁も過保護かと苦笑した。


「帝国皇室の思惑など、小国の王族にはわからん。しいて予想するなら、嫉妬、かな」


「嫉妬?」


「北の空をごらん、トニオ。あの赤い翼はワイバーンじゃない。鳳凰だ。慈悲の眼差しで、オケアノスを、オケアノスだけを見ているね。帝国が国旗の意匠にした聖鳥が」


数多の戦いで傷ついた指が、北の空を示す。紅蓮の炎に包まれた鳥たちが、群れを成して向かってくる。鶴に似た細い首。孔雀に似た長い尾。サンドライトでは、生涯で1度でも目にした者は強運の持ち主とされる聖鳥だ。


「鳳凰……しかも群れとは。生まれて初めて見ましたわい。なんと雅やかな」


「幼竜に友と認められ、鳳凰に愛でられるような弟がいたら、兄としてはおもしろくないだろう。かわいい弟がオケアノスだったら、私も嫉妬に狂ったかもしれん」


「ん……? はい???」


トニオは眉間に皺を刻みつつ、不敬ギリギリのラインで首を傾げた。


たしかに、オケアノス皇子は、存在感が人間離れしている。

汗と埃に汚れ、壊れかけた鎧姿でいてさえ、神の如く荘厳なサーガフォルス王に劣らぬ高貴さを持つ。

だがフレデリックは、そんなオケアノス皇子から本気で敬愛されている。敬愛というか、むしろ忠誠を誓われているというか。


ドラゴンライダーたらしというか。


ヨアンは「王子に協力するって約束だから」と辺境軍を鍛えにきたし、ファルカノスは「フレディが即位したら、忠誠くらい誓ってやるわ」とか言ってたし。


いつの世も、ドラゴンライダーは地上に3人と決まっている。

オケアノスが繰り上がったということは、サーガフォルス王の大天竜バハムートが完全に休閑期に入ったのだろう。


人類最強のドラゴンライダーが全員味方って、戦力特化が過ぎないか? 誰を羨む必要があると? 

ただでさえ、父親譲りのありえん美貌に、高貴な地位と豊富な財力。明晰な頭脳やずば抜けた身体能力にも恵まれてかつ、メンタル屈強ときた。さらに、人柄の良い美女にモテる。やたらモテる。


トニオは心の中で突っ込んだ。

『フレデリック殿下、貴方は嫉妬する側ではありません。間違いなく、される側です』と。


『渋くてカッコいいおじちゃん、聞いて。オケアノスのママはね、古くて小さい隅っこの宮殿にいるの。オケアノスはママの違うお兄ちゃんたちから、目立ったらママを殺すぞって脅されてたの。でも、皇帝のパパはおバカな子どもが大嫌いで、ちょっとでも間違えたら、めちゃくちゃ殴る人なの。鼓膜が破れちゃうとか、顎の形が変わっちゃうとか。ひどい時は半殺しにしちゃうくらい」


「うむ。ある意味、父上と同類か」


フレデリックが頑是なく同意すると、トニオとオケアノスは「え?」と固まった。


『だからね、オケアノスはママと自分と家来たちを守るために、パパ皇帝が怒らない程度に頭が良くて、兄皇子たちが馬鹿にできる程度にダメな人のふりをしてたの。見せしめと八当たりがすごかったから。たーくさん死人が出るおうちだったから』


無事にオケアノスに親友認定させてご機嫌のスノーローズが、悪気なく彼の過去を暴く。

お昼寝中の情報は、お友達の鳳凰ちゃんたちからもバッチリ仕入れているのだ。

善意が筋肉でできているトニオは「それは……難儀であったな」と深く同情し、人でなしのフレデリックは笑顔でため息をついた。


「そこは、知略と策略でクリアしておいてほしかったなあ。貴方ならば、それなりの地位や力を築けた筈だ」


『帝国皇室は、サンドライトみたいに平和じゃないのよー。軌道に乗る前に、たくさんの忠臣が死んじゃうのよー。必要な犠牲って割り切れるお腹の黒さがなきゃ、ムリムリなのよ?』


「汚れ仕事やら、そこの斥候姫の得意分野だろ。本職なんだから」


『初恋のお姉様に、そんなことさせたい? 王子サマだって、マリアベルちゃんを悪役令嬢?に、させなかったくーせーにー』


「成程」


フレデリックは彼の背後で泣くスゥを流し見て、天使の笑みを浮かべた。

スゥはその視線に気が付かず、しゃくりあげては涙を拭っている。


『でも、王子サマ、ありがとう。オケアノスを戻してくれて。スノー、生まれてから、今日が1番シアワセだよ』


スノーローズはもう少し何か言いたげなフレデリックの頬をペロンとすると、ワイバーンの王とその背後のワイバーンたちに向かって歩き始めた。金色の朝日を背後に、貴婦人のようにゆったりと。


『ワイバーンの皆さん、はじめまして。大天竜バハムートと天竜グレイローズの娘のスノーローズです」


礼儀正しく、ぺこんと頭を下げるスノーローズ。

思わず釣られるワイバーンたち。


『この度は、スノーの親友がクソ野郎に操られまして、失礼しました。オケアノスは本当は良い子だけど、皆さんにはめちゃくちゃ迷惑かけました。絶対やっちゃいけないこと、やらかし過ぎました』


思わず頷くワイバーンたち。

スノーローズはすうと息を吸うと、彼らに向かってペコっと頭を下げた。


『だから、スノーを焼いちゃってください。オケアノスは、死なない程度でお願いします。』


「ならん!」


オケアノスはトニオを振り払い、ワイバーンたちから守るようにスノーローズの前に出た。


「そなたは無関係だ! 仲間を汚されたワイバーンたちに、敬愛するドラゴンの幼子を殺めよと?! そんなことはさせられぬ!!」


『オケアノスが言ったじゃん! スゥちゃんの罪は自分の罪だって! 竜族だっても、親友が悪いことしたら一緒にごめんなさいするのよ。スノー、大天竜の娘だもん! 最強のお供えなんだからねーっ!!!』


幼いドラゴンが号泣した。









枠外人外紹介


ワイバーンの王

身体能力が規格外だから、仲間から王様認定されている。脳共鳴が得意。でも命令はしない。同族支配にキョーミないから。

どのくらい規格外かってゆーと↓

ドラゴン>ドラゴンライダー>ワイバーン王>翼竜デュポン>翼竜ワイバーン=水竜シーサーペント>>>>>>>>>>>熊>>人間。

ドラゴンライダーについては、もう突っ込むだけムダ。



鳳凰の皆さん

時空次元を自在にお散歩し、生物の輪廻転生を眺めることのできる不老不死の鳥さん。500年周期で転生の泉にダイブして、セルフアンチエイジングで雛に戻る。他種族とケンカしたことがない。するなら無言で滅ぼす。好物は黒豆。


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