5.警察署にて取り調べ
う〜ん、困った困った。
夜勤に当たったばっかりにこんな事件を担当せねばならんことに・・・
俺の名は三上信三、53歳だ。早く帰らなきゃならんのになあ。娘が待っとるのに。
「で?君名前は?」
「・・・・・・」
うわーーー。もう未解決だって、先が見えんわ。黙秘権かよ。ストーカーか?それともあのネーちゃんと元カレで痴話喧嘩しちまったかア?
にしても、こんな辺鄙なとこでよう、こーんなバチくそイケメンが犯罪犯すんだもんなー、世も末だなあ。
僕は、この青いチャラチャラした金の星を胸につけ、鎖が胸ポケットから出ている中年男性の頭皮から出る油と、身体中から催すストレスの匂いに悩まされていた。
新手の拷問か?
この灰色の男どもの染みついた独房から解放してほしいんだが。一体なにをすれば拘束を解いてくれるのだろうか。彼らは、僕の名前と、じゅーしょ?と、なんであそこにいたのかが知りたいのか。
それを言えば解放してくれるんだな。記憶喪失だと思っているようだな。しかし、言葉が話せないな。
脳に直接話しかけてみるか。
「僕は名前はないよ。じゅーしょもない。なんであそこにいたのかもわからないんだ。」
「!!!!!!!!!」
こいつやっと口ききやがった。日本語話せるみたいだ。外国人か、不法移民なのかと疑ったが、流暢だしな、やっぱ日本人か。日本人にしては瞳の色が薄いし、外国人にしちゃあ、そんなゴツくもないし、変なやつだな。こんなイケメン、この世にいたら、目立つし、犯罪に向かないのになあ。よっぽど姉ちゃんが気に入ったのか??
いや、まて、こいつなぜあそこにいたのか分からないだとおおおお!!!
また振り出しじゃんかよ。
腹減ってきた。
「なんか食べるか?」
「ども〜Mberでえ〜す。カツ丼届けにきましたあ」
「ご苦労さん。はい、2400円ね。」
「ありがとうございましたあ」
ふう、よっこらせっと。
何だ何だ。こいつめっちゃ腹すかせてやがる。
「ほらよ」
そいつは箸をあまり使わずに、ガツガツと、どんぶりを平らげた。犬食いかよ。
めっちゃ美味しいなこれ。毒入ってる匂いしないし。この2本の棒切れの使い方は分からんが。
「いやね、君のこと探してる人いないんだよね。こんな青い目の外見の青年の捜索願もねえし。犯罪者のデータベースにもねえからよお。」
「なあ、間違えて、知らん人ンチに入ったんだろ?」
ふと思い出してみる。あ、そう言えば入ったな。
僕は、ある城に無断侵入をせざるを得なかった。運命がそうさせたのだ。僕に居場所なんてなかった。生きる為にはそうせざるを得なかったんだ。ふと気づいたら、目の前に女性がいて、こんな場所まで連れてこられたんだが。
「はい。」
よおっしゃ。言質とったぞー。早く娘に会える!!カツ丼成果すげーな。
助手Bくん任せたぜ、と肩にとんとバトンタッチする。羽織を颯爽に片手で掴み、ドアにむかって一直線だ。
助手B
『所長帰りやがったな。』
「じゃあ、今回の件は、一応過程観察ということで、取り調べは以上となります。戸籍は新しく作る必要がございます。こちらの紙にはこちらの警察署の印鑑と事情がまとめてありますので、忘れずにお持ちください。市役所の方にも同類の資料と、あなたがくることを伝えておきますので、向田荒木町胡桃11丁目12345の市役所福祉課まで行ってくださいね。あなたの指紋はとっておりますので。」
なんかこの人最後にっこり笑ったぞ。恐ろしいな。
「わかった。」
「この画面を見て下さい。もう日が明けますから、徒歩で歩いて行けば、市役所に辿り着きますよ。」
なんと、光の板が、情報を示しているではないか。ただのPCである。
「ここをまっすぐ行って、右にーーーーーー」
「うん。覚えた。」
「この警察署は、金のまわりが悪くて、この通り、狭くてきたないでしょ?だから、君を預かる余裕もないからね」
「また、ここにお世話になることがないようにね、じゃあ」
「はい」
僕はやっとここから出ることができた、