4.彼目線
誰だ、頭に触れようとしたのか?この余ったるい匂いはなんだ?首の周りも全身に大量の布が散乱し、きつい匂いを放っている。くらくらする。とっさに、反射的に防御しようと細い白い腕を掴んでしまった。これは、女の匂いか?よほどこっちのほうが心地よい香りだ。甘くて懐かしい匂いだ。
女がこっちをみている。
腕を掴んでしまったが、女は機械を耳にあてて、それに話しかけている。
「救急でsーーーーーー」
なんの言語だ?
とりあえず、女に話しかけてみた
「聞こえるか」
女はブンブン首を上下に動かしている。
聞こえるようだ。やがて、外が騒げしくなっているな。こっちに向かってくる機械音が2種類の周波を伴って、排気ガスの匂いと共にやってくるのがわかった。
女は弾けるように何処かへ消えた。
僕は、女の匂いを追っかけて、戸を開いた。すると凄まじいほどの人間の匂いと、不純物が混ざった酸素が少ない生暖かい風が僕の嗅覚を刺激した。
鉄格子から見えたものは、僕の世界とは違う光景そのものだった。
炎ではなく、光の粒がこの夜更けに爛々と散らばっている。白、黄色、青、緑。圧倒的に木々と土が少ない。
動いている光の粒が1直線上に行ったり来たりしている。土ではない、石灰と泥とゴムの焦げ臭い匂いとともに、うるさい音とともにシューっと、高速で目の前を通り過ぎていく。
やがて、赤の光と耳をつんざくようなウーという警報とともに鉄の塊が止まった。中から人間が変な格好をして飛び出している。
カンカンカン。
こっちにくる。何をする気だ。嗅いだことがない嫌な素材に包まれた人間たちが僕を捉えようとしているのか。
ここでは僕は抵抗してはいけないと悟った。なんせ、この人間たちは必死で、僕を運ぶだけに2人も必要とするくらいだ。おとなしくしないと彼らの骨が折れるだろう。何が目的なんだ?




