3.入院する!?
救急車に乗った私たち。彼は意識があるみたいだけど、
「お名前は?」と看護師さんに訊かれているが、彼は何も言えない。
「外国人の方ですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
何も言わないのだ。でも、初めてクローゼットの中で私の脳みそに話しかけたのは、本当に彼だったんだろうか。気のせいかもしれないな。
「彼との関係は?」
「それが、知らない人なんです。」
「ではなぜワタナベさんの家にこの方はいたんですか」
「わかりません」
「お酒ではないですね。アルコール検知には引っかかっていません。」
看護師さんは、呼吸確認、瞼をひっぱり、ライトをあてて、瞳孔検査をし、「異常なし」と言った後、テキパキと包帯やらなんやらでかれのうでや脚にぐるぐる応急処置をしている。
「彼の持ち物は?」
「ないです。身一つでうちのクローゼットのなかで気絶していました。」
その後、私は、消毒液の刺激的な鼻にツンとくる匂いと、無機質な蛍光灯で煌々と照らされたうすい緑色で統一されたの車内のなかで、暗い、街灯のカラフルな灯りをぼーっとみて、途方に暮れていた。
「警察に連絡を入れますね。後で事情聴取を行ってもらいます。」
「病院は、藤井病院でいいですか?ここから近いのはこの病院ですから。」
「はい、お願いします。」
「う〜ん、CT取ったけど、異常ないしね〜。」
おじいちゃん先生はフサフサの白髪をポリポリかいている。
「記憶喪失なんですか?」
「記憶保存の海馬とかに損傷が何一つみられないんだよね、今はなんともいえないな。」
「とりあえず、傷の手当ては済んだから、しかし、軽度の栄養失調にみえる。点滴打ってもいいんだけどね・・・・。入院費がかかるんだけど、彼、保険証もってないどころか、名前も言えないみたいだから困ってるんだよね。」
よって、警察に相談することになった。
「うちとしてもね、お姉さんに被害届出してもらわないと、捜査できないんですよね。数日かかりますし、当事者同士和解してもらうことが多いです。しかし、記憶喪失にしても、脳みそのCTには異常ないから、精神的な記憶喪失の可能性が高く、一定期間が過ぎればそのうち思い出すんじゃないんですかね・・・・」
近所の交番の比較的若そうな短髪の警察官がやってきた。なかなかに、滅多にないそうで、参っているようだ。
「一応、彼の指紋取っときましたから。なんかあったときは警察に連絡ください。ストーカーかもしれないですからね。」
「彼の処遇は、我々が責任もって処理いたしますから、安心してくださいね。」
「では一応、あなたの電話番号と住所等をご記入ください。」
「はい。以上となります。お疲れ様でした。後日警察から何らかの事情聴取がされますが、その時はご協力お願い致します。」
これでよかったのだろうか。
うん。いいはず。
乙女の部屋に不法侵入だもんね。処罰対象だよ。




