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01 コーヒー片手に通学する青春

ゆるい感じで行きます。

私は今、会社前にコンビニでコーヒー買ってフリスク噛んで、眠気飛ばして出勤している。

まだ朝も早く、列車に乗っている人は少ない。

そもそもアーレンツィへと向かうこの魔導列車に乗る人物は学生、或いは学園都市の関係者しか居ない…、まぁ住んでる人も居るんだけど。じゃあなんでそんな時間帯に乗ってるのかって言えば、私が首席合格した天才だからなんだよね。

私が通うアースガルズ学園では、首席合格者は入学式で何やら前に出て言わなきゃならないらしい。いわゆる学生生活での抱負とか、明るい未来への言葉とかそういうやつ。


「台本作ってないけど。ま、いっか!」


静かな列車の窓の外には、綺麗な景色が映っている。遠くにある海が朝日を反射してキラキラと輝いて…もはや眩しい。


「綺麗だね。」「綺麗…です。」


「ん?」


景色を称賛する声が、重なる。

それは私の声と、もう一つ、か細く、小さな声であり、常人では聞き取れなかっただろう声。でも、私には聞こえた。


それは、私の向かいに座っていた女の子の声だった。

私はその子の隣に座り、声を掛ける。こういうのって第一声が大切って言うよね。


「おやおや〜、その制服は、『セキリュウ学園』の子だよね?」


「ひっ…ち、違います!人違い…違います、違わないんですけど…えっと、あの…あ、ぁう…」


「んへへ…ちょっと落ち着こっか?ごめんねいきなり声掛けちゃって。」


「いえ…そんな滅相もない!全部わたしが悪いんです……ごめんなさい…」


このままじゃ話が進まない……、ん〜私が悪かったかな?

私友達居ないからな〜、あんまり同い年の子との話し方が判んない。つまり、私なりに行くしか無いよねって話だ。


「まぁまぁ、ちょっと話そうよ、私はルカだよ。見ての通り新入生!リボンの色で判るよ?キミも新入生でしょ。」


「ぇ…あ、はい…そうです…、新入生の…あの…、リッカです……、」


ふむふむリッカちゃんか…パッと見たところだと角も無いし尻尾も無い…私と同じ()()()かな?だとしたら同じ部屋になったりとかもするかもしれないし、やっぱり仲良くなっておかないとね!


「リッカちゃん来るの早いね、もしかして登校前にアーレンツィでちょっとカフェでもするつもりだったり?」


「え、ぁ…いえ、あの迷ったら嫌なので…早めに…登校を、と思いまして。あ、あと…あの、筆記試験が…次席だったので…あの、入学式で、あの…ちょっと喋らないといけなくて…、」


……あー、実技も筆記も私が首席だから筆記次席のリッカちゃんが首席代わりに選ばれた感じかな?


「ちょっと面倒くさいよね、仕方ないけどさ。」


「そ、うですね…朝も早くなっちゃいますし…、あの、ちょっとだけですけど…ぁ、困っちゃいます…よ、ね?」


お、ようやく会話っぽくなってきたかも?


「リッカちゃんは筆記次席だし、頭良いんでしょ?『セキリュウ』で何学ぶっていうか学びたいこととかあるの?」


「え…、あ、私は…あの…、とりあえず…卒業して、あの、給料の良いお仕事に就きたい…です…、」


「切実だね〜、まぁほとんどの人はそんな感じだろうけど。でもお友達も作っておくのも良いよ?どこでどんな縁になるか判んないからね、特にアーレンツィの学園は貴族もいっぱい通ってるから。」


昔ほど貴族に対して傲慢とか無能とかそういうイメージは無くなってるだろうし、そういう貴族は大抵()()()()に会ったり、普通に国に粛清されてるからね〜。昔ほどの特権は無いにしても、繋がりは多いし、大金持ちなのは間違い無いから。


『まもなく、アーレンツィ東部へと入ります─』


列車内に響いたアナウンスと共に、窓の外の景色も変わる。

広がるのは大都市であり、大小様々な建築物がズラリと並んでいる。そしてその中心にて雲すら突き抜ける程の長い突塔を持つ巨大な城に似た建造物こそが……


「あれが……セキリュウ…、学園…、」


思わずといった様子で感嘆の声を洩らしたリッカちゃんだけど、私的にも実物を見るのは初めてだから驚いた。感想的には「なにあれでっか!」って感じ。

お父さんも言ってた通り…本当に城みたいだわ〜。


「せっかくだし、着いたらちょっとお茶でもしない?紅茶でも、コーヒーでも、クリーム乗った甘いやつでも良いけど。」


「ぇ…、あ!カフェ…って、やつです、か?」


「そうそう。」


ちょっと嬉しそうなリッカちゃん…、なるほど分かるよ分かる。私も友達と放課後……じゃ無くてもいっか、登校中にカフェでキラキラするのはやりたかった!


「ぃ…1回、行って、みたかった…ん、です…」


「着いてもまだまだ時間あるし、行こうよ〜」


「は、はい!」









列車を降りてみると、一気に活気立ってくる。

正装に身を包んだ社会人や、普通に観光で遊びに来てる人、そして学生服を着てクリームがたっぷり乗ったカフェオレを歩きながら、楽しそうに話しながら飲んでる子も居る。

これぞ大都会!これぞ大陸最大の大都市。なんてキョロキョロしてると笑われそうだし、さっさと移動するとしようか、すんごい田舎者感が出ちゃう…。一応王都にも行ったことあるんだけどな〜、それと比べてもここは凄い。


「ここ、がセキリュウ…区域…です、よね?」


「正確には学園都市アーレンツィ東部、セキリュウ学園街だね。いや〜、ほんと凄い活気。」


あらゆる国の最先端あらゆる国の頭脳が集まり、あらゆる国に通ずる技術を持って研究と勉学に励むための学園都市だ。まぁ、それが何に使われるかっていうのは…公には魔族、魔物への対抗策なんだけど……。


「さてさて、カフェはどこにあるかな〜?」


「ぇ、あ!」


キョロキョロと辺りを見渡していたリッカちゃんがいきなり大声を出した。何事かと思ってリッカちゃんが指差したほうを見てみると…あー、なるほどなるほど。


そこにあったのは、行ったことは無くても耳にしたことはあるくらいの大有名店!温かいコーヒーから、冷たいフラッペまで幅広い商品を揃えてる。

ってなわけで〜



「じゃ、私は普通にブレンドコーヒーのホットをLサイズで。ブラックで良いです。リッカちゃん何が良い?」


「…へ?ぁ、あぅ…の…」


「さぁリッカちゃん、勇気を出すんだ!さっきまで発声練習までしてたじゃないか!あの魔法の詠唱みたいに長ーい商品名を、さぁ!」


「こ、この…ダーククリーム、モカ…フラッペの…、ぁの…」


……、ありゃここで詰まっちゃったか。

いや、クリームがどうとか言ってたのに私が裏切るからかな?でもごめんね、つい…いつもの癖でブラック頼んじゃった……青春出来てないじゃん!!

と、店員さんの笑顔も疲れてくるくらいの「ぇ…あ…ぁ」タイムが流れた後、意を決したようにリッカちゃんが口を開いた。


「え…ぁ、あ!…一番大きいサイズで、トッピング全部でお願いします!」


「「え」」


リッカちゃんが、店員さんと私と、2人で驚いてしまうほどの暴挙に出た。
















「ぅわ…なんですか、これ」


「いやいや、リッカちゃんが頼んだやつだからね?」


そこにあったのはセキリュウ学園の突塔に並ぶとも劣らない立派なクリームのタワー。そこにチョコチップだったりクッキーだったり、いちごだったりバナナだったりアイスクリームだったりが大量に乗ってる。

もはやフラッペとかじゃ無くてパフェだよね。スプーンも付けてくれてるし。


「ぁの…、これって幾らなんでしょうか…、私、何も考えずに全部トッピングしちゃいました…、けど……」


「ん?もう私が払ったから大丈夫だよ?」


リッカちゃんが自分の注文を後悔してぶつぶつ言ってる間に、私かスマートに払っておいたのだ。これぞ出来る女!さすがは私…、


「え!?ちょ…、幾らでしたか、私が払います!!」


「ごめーん、レシート貰ってないから分かんない。ほら、学校遅れちゃうから早く行くよ!」


「え?まだ、全然……あ、待っ、て下さい……!」


悪いねリッカちゃん、私はカッコつけたままこの場を終えたいんだ!


と、言うわけで買ったやつが溢れないように、軽く話しながら登校した。

コミュ障を焦らせるとわりとある光景。

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