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始まりの町ベルルにて  作者: 鼻村鼻太郎
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09 これから先の未来


 コルネはその女性をふっと思い出したのか、優しい表情になる。


 しかし、次の瞬間にはいつもの仏頂面に戻ってしまった。


 コルネの目の奥に、何か悲しみの様な後悔の念の様なものを感じたメルは、コルネに『大丈夫?』と尋ねる。それに対してコルネは淡々と『大丈夫だ』と言った。



「その女性に命を救われたばかりか、立派に育てて貰った。一生かかっても返しきれない恩がある」



「もしかして、コルネがべルルに探しにきた人ってーー」



 メルがそう言いかけて、コルネはメルの言葉を遮る様に言った。


「違う。彼女は……メラトリーネはもうこの世にはいない」


 メルは残念という表情をして、ぽつりと呟く様に言った。


「そう……なんだ。会ってみたかったな」


 その一言に、コルネはメルに優しく笑いかけながら言った。


「そうだな。きっと生きていたら、お前のことを可愛がっていただろう。お人好しだから、困っている奴を見るとほっとけないんだ」



 それを聞いて、メルはコルネに『私も、コルネみたいな人が側にいたら……』と言いかけて口をつぐむ。


 その先の言葉を言ってしまったら、恐らく自分はもう耐えられないと思ったからだ。


 父と母が死んでから、今まで誰にも手を差し伸べて貰えなかった。


 辛い時相談に乗ってくれる人はいなかった。


 いつも、本当は誰かに助けて貰いたかった。


 人間の中には、お母さんが話してくれた優しい勇者の様に、私のことを救ってくれる人がいるはずだと、心のどこかで思っていた。



 しかし、現実は違った。



 何度も人間に騙されて、それでもまだ信じようとして、また騙される。


 だから、もう二度と人間なんて好きにはならない、そう心に深く誓ったのに。


 コルネはいい人だと、心では感じている。


 でも頭では人間に心を許すなと、自分を諌めている。


 コルネのことが気になるたびに、葛藤がメルの心をぐらぐらと揺らしていた。



「宿屋についたな」


「えっ?」



 メルは気が付くと、今夜泊まる予定の宿屋の前についていた。


 話に夢中になっていてどうやってここまできたのか、メルは思い出せない。


 コルネはここに来るまでずっと持っていてあげた、メルが今日買ったばかりの小物が入った袋を手渡した。



「それじゃあな」



 コルネはそう言って立ち去ろうとする。


 メルは急に心細くなって、思わずコルネのことを引き止めようと声をかけそうになって、やめた。


 コルネにはコルネの事情がある。


 これ以上、私の我儘でコルネを振り回す訳にはいかないと、メルは思ったからだ。


 メルは、淡い橙色の光が照らす石畳を歩いていくコルネの背中をじっと見つめながら、これでいいんだと自分に言い聞かせた。



「俺はしばらくこの町にいる、何かあればいつでも相談に来い」



 コルネは去り際に一言、背中越しにメルにそう言った。


 メルは嬉しくなって、大きな声でコルネに向かって『うん!』と言って手を振る。


 メルはこれから先の未来に希望が見えた様な気がして、思い切ってべルルの町に来て良かったと思いながら、宿屋の中に入っていった。






 一年に一度、べルルの町は一週間ほどお祭りが開かれる。


 それは、千年前からの伝統として代々行われてきた重要なこの町の行事。


 勇者祭と名付けられたこのお祭りは、今やべルルの町で生きる人々にとって欠かせないものとなっていた。


 ただでさえ、人の往来が激しいこの町は祭りによって普段の二倍以上の人が行き来する。


 年に一度のこの日を商売のチャンスとして、この地に様々な商売人が物を売りにやってくるからだ。

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