庶御の交わり
ロラン様は先程よりも豪華なドアの前に立つと、
暫し待つように指示を出してきた。
そして、目の前のドアを叩き
何か話し始めた。
すると、ガチャリとドアが開いた。
「グリ卿、ジャスタン様。どうぞお入り下さい。
レナルド第二王息殿下とマジェンタ侯爵令嬢がお待ちです。」
と、ドアを開けてくれたメイドさんがお辞儀をしながら、促してくれた。
軽く手を上げ中へと入るロラン様と、ペコペコしながら入っていく俺。
入った部屋は執務室だろうか、席が左右にあり、合計で4席程。
うち3席は既に埋まっており書類仕事を行っていた。
そして、目の前にはもう一つドアがあった。
いつの間にかドアの前にメイドさんが表れてドアを開ける。
「ジャスタン様のみお入りください。」
ちらりとロラン様を見るといってらっしゃいと軽く手を振られた。
・・・豚や鶏の方がもう少し悲劇的な売られ方する気がする。
ふうとため息一つ。ドアの方へ向かった。
どうぞとメイドさん。
「失礼します」と言い部屋へと入る。
目線は下げたままで。
「良く来てくれた。まずは座るがよい。」
その声を受けて、部屋に居た別のメイドさんが席に案内してくれる。
案内されたままに椅子に座ると、
目の前には一人の美形と、一人の美少女。
短髪のシルバーブロンドと蒼の瞳。若干気が強そうな顔立ちの男性。
と
ふわふわのストロベリーブロンドに垂れ目な赤い瞳の庇護欲を誘いそうな儚げな美少女
ああ、これが第二王息殿下とマジェンタ侯爵令嬢か。
「良く来てくれた。ジャスタン君
私は、第二王息のレナルドだ。
君が学園に入る時には4回生になっているかな。
そして、彼女は私の婚約者、マジェンタ侯爵令嬢だ。」
「マジェンタ侯爵の娘、ベルナデット・エタンセルです。
宜しくお願いしますね。」
「ヴィヨレ領のジャスタンです。本日はお招き頂きありがとうございます。」
挨拶をしている間にメイドさんたちがお茶と菓子を用意してくれたみたいで
静かに湯気が漂ってきた。
「今日の菓子は王都で最近有名な店の焼き菓子らしい。楽しんでくれ」
そういうと、菓子をベルナデット様が俺に勧めたうえで一口食べた。
それを皮切りに俺とレナルド様が食べ始める。
「ジャスタン君、ベル、二人とも入学おめでとう。
ベルは流石の首席合格。婚約者としてとてもうれしいよ。」
「ありがとうございます。
殿下の婚約者としての責務を果たせて胸をなでおろしております。」
「ジャスタン君は庶民として初なうえに次席合格。ヴィヨレ卿も鼻が高いだろうね。」
「ありがとうございます。
不安もありますが、それ以上に受け取った幸運に喜びを感じています。」
「ふふ。市井の出にしてはしっかりしているね。
ベルは私の大事な婚約者だ。もし、困っていたら助けてあげて欲しい。」
んー。昨日話していたとおりになりつつあるけど、
婚約者の居る女性相手に男性宛がうのは、本当に大丈夫なのかな?
ベルナデット様の方を盗み見すると、すこしだけ眉を顰めていた。
あ、良かった。やっぱり若干変なんだな。
そうはいっても、拒否する訳にはいかないので無難に回答する。
「はい。微力ですが、お役に立てるなら。
マジェンタ嬢、何かありましたら、何時でもお声掛けください。」
つまり、こっちからはあまり関わりを作らないよーって
「ありがとうございます。その時は、拠り所にさせて頂きますわ。ジャスタン様」
うん。向こうも頼る気はあまりないようだ。
良かった良かった。