王城にて
学園の制服姿のお嬢様に見送られて貸馬車に乗り込み
王城の城門にたどり着いた。
城門の門番さんにヴィヨレ子爵様から伯爵様宛に手紙を預かっている旨を伝えたうえで手紙を見せると
少し待てと言われたので待つことにした。
門番さんは伯爵様に確認しに行ってくれたので暫く待っていると、門の中に入れてくれた。
門の中に入るとメイドさんが待っていて、門番さんがメイドさんに俺を引き渡した。
「こちらへどうぞ」と促されたままメイドさんの後をついていく。
暫くついていくと大きなドアの前で止まった。
「少々お待ちください。」
メイドさんはそういうと、ドアを叩いた後、
「ジャスタン様をお連れしました。」
と述べた。
奥から入って貰いなさいとの指示が出たのか、
ドアを開けて入れるようにしてくれた。
「失礼します。」
そう言って部屋へと入っていく。
此処は執務室のようだ。
左右に其々10人程の人が机をくっつけて書類仕事をしていた。
一瞬、こちらを見てまた仕事に戻っていく。
ただ一人、中央の一番大きな机に座っている人だけは、何事もなかったのように
ただ、手だけを動かしていた。
邪魔にならないよう、少しだけドアの横に移動し、軽く目を伏せておく。
ドアは、メイドさんがしてくれたのだろう音もなく閉まっていた。
暫く、ペンが躍る音と部屋の出入りする音だけが響く。
別のドアから誰かが入ってくるとペンの音がピタリと止まった。
中央に座ってた人が席を立った気がする。
「やあ。ジャスタン君。待たせたね。
顔を上げて良いよ。」
顔を上げて良い、そう言って貰えたので顔を上げる。
年は40くらいだろうか。
父さんよりも年上だろう。
灰色の髪に茶色の瞳。洗礼された佇まいはやはり上位貴族だと思わせる。
「初にお目にかかります。此度はお手数をお掛けして申し訳ありません。」
「ヴィヨレ卿から聞いてるよ。
ヴァイオレット夫人からも気に入られてるそうだね」
「領主様と奥様には良くして頂いております。
此度も領主様の計らいでお城への移動が出来ました。」
「うん。大変だったみたいだね。
ヴィヨレ卿からの手紙を頂いたときは、少々吃驚したよ。
レナルド王息殿下の悪戯も此処まで楽しませてくれるようになったのかと」
そういって、楽しそうにしているけど・・。
絶対笑ってない。逆に少し怒ってる気がする。
「殿下の悪戯に付き合わせてしまって、申し訳ないね。」
「いえ。領外に出る機会を与えて頂いただけでも重畳です。」
「うん。そう言って貰えると助かるよ。
そうそう。言い忘れたね。
王城伯のロラン・パラディヌスだ。
宜しくね。」
「はい。ヴィヨレ子爵領のジャスタンです。
改めて宜しくお願いします。王城伯様」
ロラン様は、うんうんと少し嬉しそうに頷くと
ドアの方へ歩いていく。
「では、ジャスタン君」
そういって外へ向かうと、ドアは自動的に開いた。
ロラン様の後を付いていくと
外で騎士様が二人、ドアを押さえて頭を垂れていた。
音もなく勝手に開いたので、何か力を使ったと思ったけど、騎士様が開けたのか・・・。
こっちの方がなんかすごい。
ロラン様はそんな俺の姿が楽しかったのか、ニヤニヤしながらこっちを見ていた。
渋めのおじ様が悪そうにニヤニヤする姿って、けっこう卑怯だよね。
こちらとら、ド田舎の一庶民だ。お城の所作ひとつひとつに戸惑うんだぁ!
俺が少々ばつの悪そうな顔をすると、さらに楽しそうに笑む。
そして、一言俺に声をかけて、そのまま背を向けどこかへと歩いていく。
俺は、ただただ逸れないように、必死についていくのだった。
「さあ、悪戯好きの元へいきますかね。はぐれないようにね」




