転生のお時間です
飲めば減る、ということでビールも残り一缶だ。
女神様は最終的に笑い上戸になって、ずっと楽しそうに笑っていらっしゃる。
「バッカスったらトロいから、ここ五百年くらい一滴も飲めないでいるのよ!素面のバッカスとかマジウケるwwwww」
女神様がマジウケるとか言わないでください。イメージが。
あとそれ、もう十回くらい聞きました。
…でもバッカスって確か酒の神様ですよね?酒を飲めない酒の神様…気の毒すぎる…。
俺はしんみりとグラスを傾けた。
「何よー。酒は楽しく飲みなさいよー。そうだ、なんか面白いこと言って?」
無茶振りを。この酔っ払いが。
「布団が吹っ飛んだー」
イラっとして投げやりに言ったら
「やっ!ひーっ!くっふはっ!あははははっ!何それ面白ーい!最高ー!」
めちゃくちゃウケて背中をバシバシ叩かれた。
嘘だろ…と思う気持ちもあったけど、面白いと言われてうっかり嬉しくなってしまい、その後はなんか女神様と肩を組んでマイナーリーグの応援歌とかいろいろ歌ってた気がする。俺も結構酔いが回っていたんだ。
女神様が最後の一滴を飲み干したところで、白かった空間が七色に光り出した。
「あ、そろそろ時間かー」
まだふわふわとした口調で女神様が呟いた。
自分の体が、突然薄れ始めて焦る俺。
「え?時間ってなんです?」
「転生のー、お時間でーす」
あ、やっぱり転生するんだ。
「今回のお礼にラックの数値だけは上げといてあげるねー。あとは適当に頑張ってー」
めちゃくちゃ軽い女神様のお言葉。
手を降る彼女に思わず振り返すと、にっこり微笑まれた。
「次もお酒よろしくー」
それが、俺が耳にした最後の言葉だった。