<序幕>第二節「スキルを持たない者たち」
※序説、その2です。世界観にお付き合いください。
ここは「リザルディア」。
カーム神が『鏡』を通じて創造したと伝えられる大地である。
『鏡』には、この世を生き抜くための“スキル”を授ける役割があり、
スキルを授かったものは生涯をかけて、そのスキルを育てることを期待されている。
『鏡』は各地に自然出土しており、一度そこに現れると、動かすことはできない。
採掘しようとすると輝きを失い、ただの岩肌と化してしまうからだ。
必然的に『鏡』の場所を中心に集落が生まれ、街が出来、国が成された。
ここ、リザルディアには六つの国があるが、『鏡』はすべてカーム教により管理されている。
カーム教は『鏡』を神聖な存在として崇め、管理する宗教組織である。
特定の国家には属さず、独自の統治体制を築いていた。
六か国はそれぞれ異なる王政を敷いているが、
カーム教は『連邦』と呼ばれる諸島により独自に統治されていた。
各国にある教会には治外法権が適用され、各国の王も頭が上がらない。
カーム教の権限は絶大であり、六か国よりも連邦の方が明らかに強い力を持っていた。
「おい。昨日もハイスキラーが誕生したって話だぜ」
「すげーな。今週で何人目だよ。この街も今年は列強ランキング上位に食い込めるかもな!」
「おい! 前を見ろよ、司祭様だ。……司祭様! 本日もお見守りありがとうございます!」
「ははは、こちらこそ。この街がより豊かになれば幸いです。カーム神の御心のままに」
『ハイスキラー』とは、出生時に授かったスキルをクラスアップさせた者の総称だ。
カーム教律により、二十年に一度、全世界の人々に鏡の判定を受ける機会が与えられる。
出生スキラーにとってはクラスアップの機会であり、
ノンスキラーにとっては新たなスキルを得るための機会でもある。
そのため、この二十年周期の判定は、人生を左右する一大イベントとなっていた。
---この世界ではスキルがすべて---
そもそも、出生時からスキルを得るには、母体が出産時に鏡に両手を着いて『加護』を得る必要がある。
だが、何らかの理由で『加護』を得られなかった者が一定数存在するのもまた事実であった。
『鏡に辿り着く前に、産気づいて出産してしまったもの』
『母親自身が、鏡による出生を拒絶したもの』
『そもそもカーム神に反抗意識を持つもの』
……など。
本来の自然な形とも言うべき、母体から子を産むことも出来るが、リザルディアでスキルも得られない者は『無能者』というレッテルを貼られることになる。
そのため、多くの民衆はおのずとカーム神を信仰し、何が何でも『鏡』に触れることで、その恩恵を受けようとしていた……。
「おい。無能! こっちに資材を運んでくれ。俺のスキルはサーチ系なんでね」
「はい! ただいま参ります~!」
「おう、よしよし。無能者でも居てくれて助かるぜ。おっと、今度はこっちだ。
夕方までに宜しくな。スキルが無い分、しっかり働いてくれよ」
「はっ、はい~!」
『無能者』の人口割合は国ごとに異なるが、全体の2割程度とされている。
無能者は劣等種として扱われることが多く、雑用や使用人として使役されていた。
だが、そんなノンスキラーである『無能者』でもカーム神は見捨てなかった。
出生スキラーが二十年後にチャレンジする『クラスアップ』。
この機会をノンスキラー(無能者)にも与えられていたのだ。
つまり、『鏡』に触れてスキルを得る機会が平等に与えられる。
ただし、鏡の“判定”によってはスキルが得られなかったりペナルティが課せられることもある。
鏡による判定は絶対で、行いによってはスキルを剥奪される例もあるのだ。
これらは『カーム教』により厳格に決められたポリシーだった。
人々はカーム教は“救い”しか与えないと信じている。
二十年に一度の判定周期が訪れると、各地の教会では『鏡の儀式』が連日執り行われていた。
各教会では毎日数十人もの人々が判定を受け、スキラーとなる機会を日々待ち望んでいる……。
明日は、果たして何人のスキラーが生まれ、育ち、成長を始めるのだろうか……。
カーム神とは……一体……。
<了>
※次回、<序説>第三節「無能者の成り上がり(仮)」へ続きます。
※次回から、いよいよ、主人公の視点が加わります。




