エピローグ
全ての人物の、知る限りのその後について記す。
「ニコラス二世」
先王の時代から大きく国としての方針を転換し、その後も軍縮と他国への軍事力抑制のための条約を締結、さらにはディミトリ行政特別特区への独立支援、ティアーノとの友好条約締結などの融和路線を拡大。
後世においては、東側大陸において「賢者の王」として呼ばれることとなる。
「マリア・アレクサンドル」
王室統制局長を勤め上げたのち、二人の子供を出産する事となるが、父親の名前は公表していない。
政界を引退後はアクティビストとなり、レイ・デズモンドやエレナ・コーヴィックと共に西側大陸の人権問題や貧困、内戦に対する活動を終生に渡って行った。
「サリー・コーヴィック」
黒鯨革命の際の実績を買われ、ケルビン教皇の強い推薦により、史上最年少にして初の女性異端審問官となる。
リベラル的思考を強く持ち、ともすれば原理主義に偏りがちな教会に対するバランサーとして活躍。100年近くかけて宗教的寛容と融和を教会内で一般化し、ケルビン教皇と共にその後の教会の方針を作り上げた一人とも言われる功労者となる。
「エレナ・コーヴィック」
その後は友愛会会長へと任命され、各地の紛争地帯や貧困地域への医療援助を行う。
精力的に世界各国での弱者救済を行う一方で、マリア・アレクサンドルたちと共に先進国への演説を行い、世界の格差問題を世に知らしめた。
その姿はのちの教会の信念そのものとも言われ、後の世では”生きた聖母”とまで呼ばれるようになる。
そして…
「レイ・デズモンド」
正式に医師免許を取得後、エレナ・コーヴィックと正式に結婚。彼女が率いる友愛会に参加し、世界中を飛び回る事となる。
その生涯を弱者救済に捧げ、その姿はいつしか”武器を持たない英雄”と形容されていき、ケルビン教皇亡き後は教皇として即位。
世の不平等と戦い続けたその姿は、後世に至るまで語り継がれている。
「ふーっ…洗濯物干し終わりっと」
アイリは空を見上げた。たった今家事がひと段落し、休憩しようかと思っていた所である。
世界は随分と平和になり、彼女の周りでも穏やかな日々が続いていた。
「あーあ…今日もいい天気だなぁ」
今日の空は青かった。
でも。
たとえ土砂降りの雨でも、きっとその向こうは晴れているだろう。




