エピローグ これが、愛
【エピローグ これが、愛】
なんとなく、わかった気がする。
高校3年生ごときで、何を偉そうなことを、って思われるかもしれないけど。
あたし、このクラブに入っていろんな人と出会って、いろんな出会いと別れを見てきた。確かに辛いこともあったけれど今となっては、それはもういい想い出だ。
恋とか愛とか、そんなの言葉で説明できるものじゃない。それが愛なのかもしれない。
いろんな愛があるよね。
家族愛。
恋愛。
ちょっとあたしはビックリだけど、同性愛もアリかな?
友情も、言われてみれば愛情に近いものかも。
誰かを大切に思っていう意味では、もう同じ括りに入れられる気がする。
「さゆり、帰ろう!」
「うん!」
あたしがいるとも知らず、ウチの部活の冨岡くんと中野さんが仲良く帰っていく。彼氏と彼女の関係。恋愛してるね~。
部室に戻ると、メグちゃんこと加藤さんと春やんこと水谷くんが何やらモメていた。
「ねー、春くん。やっぱりここ何回吹いてもわかんない」
「えぇ? 昨日も教えたばっかりなのに……」
そう言いつつも、水谷くんは優しくメグちゃんに演奏の仕方を教えている。
後輩愛だね!
「何やってんの?」
おっと、これはマズい。エミリン登場。エミリンは春やんの彼女である、橋本 絵美。
「メグに吹き方教えてあげてんの」
「ふーん……」
しばらく春やんとメグちゃんのやり取りを見ていたエミリンが、口出しした。
「ダメよ。春くんの教え方、わかりにくいもの」
「ですよね!」
メグちゃんが嬉しそうに笑った。
「そうそう。おいで、メグちゃん。私が教えてあげる」
「はぁい!」
「お、おいおいちょっと待てよ! 俺の面目丸つぶれじゃん!」
春やんが慌ててエミリンとメグちゃんの後を追っていく。いつの間にか、皆に見えない友情や愛情が芽生えてたんだな。
携帯電話が震えた。メールだったので開封してみると、お父さんからだった。
雨が降りそうだから、早めに夏樹と帰ってきなさい。
ウチのお父さんって、無愛想に見えるけど本当はすごく家族想いの人。あたしはお父さんのこと、大好き。
けれど、もっと好きな人があたしにはいる。
「……。」
「わっ! ビックリした!」
「なぁ、誰とメールしとん?」
心配そうにあたしの隣に座る彼は、あたしの大好きな人。
「さぁ? ナーイショ!」
「浮気ちゃうやろな!?」
「バッカじゃないの!? あたしのこと信用できないんだ~……。あーあ、すごく残ね」
言い終わる前に、急に彼があたしの頬にキスをしてきた。
「キャー! もう! バッカじゃないの!?」
「ヘヘヘ! おい、そろそろ帰るぞ!」
周りに誰もいなくてよかった。
でも、誰もいないから……。
あたしは彼――佐野 翔の左腕に腕を回した。
「どないしてん?」
「なんとなーく!」
「なんや、それ!」
そう言いつつも、翔はあたしの顔を嬉しそうに見つめてくれた。
これからも、ずっと、あたしはいろんな人と、いろんな形の愛を作っていくんだろうな。
言葉では説明できない、愛を。
皆さんは恋をしていますか?
誰かを、自信を持って愛していますと言えますか?
あたしは走って、翔から少し離れた。
「お、おい! どないしてん?」
「カケルー!」
通行人や何人か残っていた同級生たちがあたしのほうを見る。恥ずかしいけど、もう構わない。
「なんじゃー!」
「好き―!」
翔の顔があっという間に真っ赤になった。
これからもずっと、この人を愛していきたい。
そう思える人と、必ず出会うことができるはずです。
その思いを、そしてその人をずっと、大切にしていくこと。
それが愛だと、あたしは思います。
皆は、恋してますか?
-完-