ということで、今から麻雀をやりたいと思います。
カラスの軍団と朝食を共にした後、田中さんと一緒に登校して教室へやってきた。
「あいつ等、僕の朝飯ほとんど奪いやがって……」
机の上にぐったりと頭を伏せながら一人で愚痴る。
どうやらカラスの軍団に嫌われてしまったらしい僕は、朝食を食べている間ずっとカラス達から飯を奪われ続けていたのだ。
ということで現在、空腹状態である。
「仕方ない、ここは早弁でもするか」
「おはようございます春の兄貴! 登校していきなり早弁とは、まさに不良の鏡っす! 流石っす!」
手提げから弁当箱を取り出す僕の元に、ひょっこりとやってきたのはファンクラブC君。
「……お前は黙ってろ」
「えぇ!? なんでそんな風当たり強いんすか!?」
なんでって、あの屋上での一件を忘れたとは言わせないぞ?
お前は気絶してたから知らないと思うが、あの後僕と咲がどんな目にあったことか。
「し、しかし春の兄貴? 今弁当食っちまうと、昼飯は抜きになるんじゃぁありませんか?」
「そうなんだよ。昼飯代も無いし、ってことでお前奢れ」
「むむむ無理っすよ! 俺だって自分の分しか持ってきて無いんすから!」
駄目元で頼んでみたが、案の定駄目だった。
全く、使えんヤツだな。昼飯を奢ってくれれば昨日の一件を無かったことにしてやろうと思ったのに。
「はぁ、それじゃ早弁はやめとくか」
「無難っすねぇ」
仕方ないので早弁を諦めようとした、その時。
「……待ちな、春の兄貴」
僕の机の上に素早く腰掛けて来たのは、たった今登校してきたらしい橘葵だった。
「また厄介なヤツが増えたな」
「ちょっと! なんでそんな邪険に扱うの!?」
「邪険になんてしてねーよ、いいから机から降りろ」
「あ、うん。ごめん」
言われてすぐに机から降りた葵は、気を取り直して話を続ける。
「お金のコトでお困りの様だね! 春の兄貴! そんなときは、このあたしに任せておきなさい!」
「おぉー、つか春の兄貴って言うのやめろ」
「あたしが考えるにね? お金に困ったときは、もうギャンブルに手を染めるしか道は無いんだよ!」
「いや他にも道はあるだろ!」
お前ってやっぱりバカだな!? そんな考え方だと、いつか一文無しになって路頭を彷徨う事になるぞ!
「ということで、今から麻雀をやりたいと思います」
「……は?」
「異議は認めないよ!」
「いや、異議を唱えた覚えはないです」
まぁ賛同するつもりも更々ないけど。
と思ったが、口に出すとややこしくなるので黙っていることに。
「麻雀かぁ、確かに今流行ってるっすよねぇ。春の兄貴は麻雀打てます?」
「いや、まぁ打てることには打てるんだが。役とか全然知らん」
「大丈夫! あたしだってあんまりわかんないもん! ねーねー、とにかく麻雀やろうよー!」
「とにかくやろうって、お前な……」
つか、葵はただ麻雀がやりたいだけだったのな。
どうせドラマか漫画の影響でも受けたんだろうが、それに僕を巻き込もうなんて勘弁して欲しい。
そんな訳で不参加を申し出ようとした瞬間。
「あの、麻雀ならわたしも混ぜてください」
「えぇ!? 美春さん、麻雀打てるんですか!?」
隣の席でぼうっとしていた田中さんが、遠慮がちに話に加わってきた。
「父に少しだけ教わったことがあるので、人並みには打てるかと」
「マジっすか田中さん! いやぁ、田中さんとジャン卓を囲めるなんて夢の様です! 俺、麻雀やるっす!」
「やった! これで参加者は三人だね! ホラ、春さんはどうするの!?」
「いやどうするも何も、僕はあんまりルール知らないし」
「お昼代、賭けるんだよー? 春さんが一番になれば、早弁しても問題なくお昼ごはんが食べられるんだよー?」
「よし、やろう」
『お昼代』という一言で即答してしまう僕は、いつか一文無しになって路頭を彷徨う事になりそうで怖いです。




