つまりこの町は私の監視下に置かれるということだな!
早乙女家を後にした僕達は、早朝の商店街をのんびりと抜け、次に土手を上がり、いつもの河原へと帰ってきました。
……しかしそんな僕達を待っていたのは、想像の斜め上を光の速さで行くような光景でありました。
「おーい、サラダさー……なっ! なんだ!?」
「うわっ! カラスです! カラスの群れが河原のいたるところに!?」
土手の上から河原を見渡すと、あたり一面が真っ黒に染まっていた。
最初は何事かと思ったが、よく見てみると真っ黒の正体はカラスの大群。
「なんでカラスが?」
「ま、真鍋さんどうしましょう! これじゃ河原に帰れませんよ!」
「待て、まずは落ち着くんだ田中さん。ホラ、深呼吸」
「あ、はい!」
僕に言われて素直に深呼吸をする田中さんを横目に、もう一度河原に目を向けると。
「あれってサラダさんか?」
「すーはー……え? どこですか?」
「いや、カラスの群れの真ん中に立ってるのってサラダさんだよな?」
カラスの群れの中心に立っている小麦肌のネーチャンは間違いなくサラダさんだった。
あんなところで一体何を、と思いながらとりあえずそちらに向かって手を振ってみる。
「おーい! サラダー!」
「おぉ! ハルか!」
「サラさーん! ただいまですー!」
「それにミハルも一緒か! 見ろ二人とも! 私はこいつ等に懐かれたぞ!」
なんだかよくわからないことを言っているが、ここだと話しづらいので僕と田中さんは恐る恐る河原へと降りた。
すると、サラダさんに向かって人垣……じゃなくて鳥垣が割れ、一本の不吉な道が完成した。
「すげ、これ百匹は軽く超えてないか?」
「で、ですね……正直、すごく怖いです」
「大丈夫だ! 私の教えた人間には攻撃しないよう訓練してあるぞ!」
少し怯えている田中さんを背に、サラダさんのところまでやってくる。
「訓練て。つーか、なんなんだよこのカラス達は?」
「昨晩鳥を助けた時にカラス達と一戦交えてな! せっかくだから倒した後に手懐けてきた!」
「ま、またお前はいらんことを……」
「何を言うハル! 仲間は多いほうがいいだろ!」
「多すぎだろ!? こんな数、この河原に置いとけねーんだよ!」
グワァアアア! グワアアアアアア! グワーッ!!
「ひっ!?」
「うおぉ!?」
サラダさんに向かって怒鳴り声をあげた途端、羽を広げて怒り狂うカラス達。
こ、怖えぇ!? なんだよこの迫力!?
「うるさいぞお前等!」
グワッ。
サラダさんが一喝すると、ピタリと泣き声を止めた。
「すごいですね……サラさんの一言で、みんな大人しくなりましたよ」
「どんな技だよ!? 洗脳か! 洗脳なのかこれは!?」
「違う! 私に懐いているんだ!」
マジかよ。てかどうするつもりなんだこいつ等。
「ちなみに普段カラス達は町中に飛ばしておくつもりだ! つまりこの町は私の監視下に置かれるということだな!」
「この町最悪だな」
「なんだと! 私が皆の安全をいつでも見守ってやるというのになんだその反応は!」
「だったら端からそう言え! 監視下にあるのと見守るってのは全然意味が違うんだよ!」
グワアアアア!
グワー!
「うがっ!? ……い、痛ええええええええ!?」
サラダさんと口論を始めると同時に、足元に居たカラス達が僕の脛をつんつんと突いてきた。
ちなみに結構痛いです。
「ははは! こいつ等かわいいだろ!」
「かわいくねぇ! 早くやめさせろ!」
「う、うわ! 大丈夫ですかっ、真鍋さん!」
「見ての通り大丈夫じゃな……ん?」
カラス達に脛を滅多打ちされながら、僕はサラダさんの足元につっ立っている七面鳥を見つけた。
な、なんか言いたそうにこっち見てるけど。なんだろ?
そのまま七面鳥の方をじっと見ていると、ヤツは口パクで一言。
『 ど ん ま い 』
……いや、どんまいの前に助けてくれよ。




