うわっ! 美晴さんなんですかそのお弁当!
午前最後の授業が終わり昼休み。
生徒たちが思い思いに弁当箱を広げ、仲のいい友達同士で楽しく昼食をとる者もいれば、学食で贅沢にランチセットを食べているやつもいるのだろうが……
「鮎の丸焼き……」
僕の机にはご飯やおかずの詰まった弁当箱でも学食のランチセットでもなく、一匹の鮎が乗っていた。
程よい焼き加減、程よい塩加減、どれを取っても文句なしに美味しそうではあるが、それをこの教室で丸齧りするのは少しばかり恥ずかしい。いや、かなり恥ずかしい。
この弁当を作ったのはもちろん田中さんなので、とりあえず隣に座る田中さんの様子を伺うことにする。
「えへへ、美味しそうですねー」
「うわっ! 美晴さんなんですかそのお弁当!」
隣の席では何の恥じらいも無く鮎の丸焼きを取り出す田中さんと、それを見て驚きを隠せないでいる葵の二人が仲良く昼食をとっていた。
ってここで食べる気ですか田中さん、そんなことしたらこの教室に居る全員の注目を浴びる事になると思われますが。
「美晴さんはチャレンジャーです、ここで鮎の丸焼きを食べるなんて驚きましたよ!」
「そうですか? わたしはなんとも思いませんけど……あ。もしかして、その、なにかおかしいですか? このお弁当」
「いえいえいえいえいえっ!? なんかもぉギャップ萌えとか通り越して、尊敬しちゃう! ひゃっほぅワイルドな美晴さん最高ー!」
「そ、尊敬なんて、そんなっ」
「これは美晴さんだからこそ鮎の丸焼きが似合っているんだよ! もし男が教室で鮎の丸焼きなんて食べてたら引きますねあたしは! そりゃもぉ全力で、全力でドン引きですよ!」
ぐっ!? な、なんだ葵のヤツ、随分なことを言ってくれるじゃないか。
これはアレか? もし僕がこの場で鮎の丸焼きを齧っていたら、全力でドン引きされるということか?
まぁそれはいい。葵のヤツに全力でドン引きされようが僕はなんとも思わん。
しかし良く考えてみると、同じ教室で鮎の丸焼きを黙々と齧る僕と田中さん。その二人が周りからどれだけ浮くだろうか、そう考えてみるとこの場で鮎の丸焼きを食べるのはいろいろと危険な気がしてきた。
そんな理由で頭を悩ませていた、丁度その時。
「春さん! 春さんも昼飯まだっすか!?」
「え?」
今朝の田中さんファンクラブc君が声をかけてきた。
「どうですか! よかったら、俺と一緒に屋上で弁当でも!」
おぉ! 弁当のお誘いか! 丁度いいところで誘ってくれたよc君!
「いいね! 行こう行こう! あ、でも他のファンクラブ達は?」
「あぁ、あいつ等ですか……それが、なんか生まれ変わったとか言ってファンクラブを脱退したんすよ」
「脱退? えっと、話が読めないのだが。とりあえずあれからどうなったんだ?」
今朝、田中さんファンクラブの面々を全員成敗し終えたあの後。
時間的に物凄く遅刻しそうだったので、ファンクラブの面々を置き去りにして登校してきた僕は、彼等のその後がどうなったのかを知らないのだ。
「あの、俺が目を覚ました頃には、あいつ等もう居なくて。代わりに手紙が俺の手に握らされてたんすよ」
「これです」と言って、ポケットから一枚の紙を取り出すc君。
「見ていいのか?」
「えぇ、どうぞ。俺には良くわかんなかったんで」
「はぁ……」
手紙を受け取った僕は、とりあえず中を確認してみる。
『アタイ達、今日から生まれ変わるわ。だから今日は学校休むけど、心配しないで。明日はゼッタイに行くから。それと田中さんファンクラブは、今日限りで脱退するわ。真鍋さんにもよろしく伝えておいて頂戴。by生まれ変わったファンクラブa&bより』
なんだこれ。
えっと、まさか。これはその、アレな意味で生まれ変わったのだろうか。
「なぁ、この『アタイ』ってなんだと思う?」
「想像したくねぇっす」
「……そうだな」
「きっと兄貴の急所蹴りが利いたのかと思います」
「……それは、言わんでくれ」
ちょっと反省してる。
思わぬ高評価を頂いたので、感動しました! 読者の皆様に感謝を!
あ、突然出てきて失礼致しました。驚きと感動のあまり、つい。
それでは、次回また!




