二度とサラダさんには挑まん。
サラダさんめ! 今度という今度は許さん!
あのときの決闘(8話参照。)を今ここで実現してやろうではないか!
ま、実際に暴力は振るわないけどさ。何度かすんどめしてやればサラダさんも観念するだろう。
「サラァァァッ!」
ということで、川のほとりに居たサラダさんに飛び掛った。
「む! なんだハル! 奇襲か!?」
「ウルァッ!」
「甘いぞ!」
そのまま強引に押し倒そうとするが、流石元軍人? なだけあって、彼女の対応は速かった。
僕の腕がサラダさんに触れる寸前、素早いバックステップによってかわされる。
「僕の飯を返せ!」
立て続けに上段蹴りを繰り出そうとしたのだが、
「ハッ!」
「え? うぉっ!?」
片方の足を払われてしまい、支えの無くなった僕の身体はあっけなく地面に叩きつけられた。
慌てて起き上がろうとするが、目の前にサラダさんの拳があるのを認識して諦めた。
「ははは! 私に勝とうなんて百年早いぞ!」
「す、すんどめ」
地面に大の字になりながら呟く。
「また挑んでくるがいい! 私は誇り高き戦士、いつでも受けてたつ!」
「か、勝てそうもないから遠慮します」
「残念だ! しかしハル、あの蹴りは結構痛そうだったぞ!」
それ褒めてんのかよ、と聞くまもなくサラダさんが背を向ける。
「どっか行くのか?」
「風呂だ! ハルも行くか!」
「あ、あぁ」
仕方ない。飯のことは忘れて風呂にでも行くか。
明日の朝飯を腹いっぱい食えばいいさ。
「てかサラダさん強すぎだろ」
二度とサラダさんには挑まん。
すっかり暗くなった空を仰ぎながら、そんなことを思ったのであった。
「だ、大丈夫ですか?」
仰向けになった僕の頭元に田中さんが立ち、僕の顔を覗き込んでいた。
「秒でやられました」
「はい。見てました」
「うぐっ」
女に瞬殺されるのを見られてた! は、恥ずかしすぎる!
「大丈夫ですよ真鍋さん! ラブコメ方式で、男がヒロインに勝てないというのはお約束ですから!」
「ラブコ? は? な、なんだって?」
「ということであまり気にしないほうがいいです!」
いや負けたことより、田中さんの言葉が気になるんだが。
またロマンチスト理論?
「ほら真鍋さん、わたしたちも銭湯に行きましょう。サラさん先に行っちゃいましたよ?」
「あ、あぁ。そうだな」
ま、いっか。田中さんが暴走することなんてよくあるし。
「先にサラダさん追いかけてくれ」と田中さんに告げてから、一度橋下に戻った。
「七面鳥、僕達銭湯行ってくるから留守番頼んでいいか?」
橋下でうとうとしていた七面鳥に声をかけると、
「お? あぁ銭湯か。わかった留守は任せろ」
「随分聞きわけがいいな」
「坊主、サラのネーチャンに夕飯食われただろ。流石に不憫と思ってな」
「そ、そりゃどーも」
と、鳥に気をつかわれた……っ!?
なんとなく精神的ダメージを負いながら、僕は橋下を後にした。




