自分の顔に聞いてみな。
咲と別れてから河原に戻ると、七面鳥が出迎えてくれた。
「お? なんだお前一人か?」
橋下には誰も居ない。おそらくどこかに出かけたのだろう。
「あぁ。女共なら先に銭湯行ったぞ」
「なるほど銭湯か」
それで七面鳥が留守番してたってわけね。
さっきは生意気なヤツだとバカにしたが、結構頭の良い鳥なのかもしれない。
「んじゃちょっと遅いけど、僕も行ってくるわ。悪いな留守頼んで」
「気にするな。それより、この時間には危ない連中が蔓延ってるから気をつけろよ」
「心配してくれんの? でも僕男だし大丈夫だろ」
気遣いは無用です、と胸を張る。
すると七面鳥はバカにするように笑った。
「その顔でよく言ったもんだ」
「ど、どういう意味だよ?」
「お前は女々しいからな」
「アァ!? 羽もぐぞ!?」
「冗談だ」
「じょっ……」
女顔のことを言われたので少しカチンときたが、それ以上食い下がるのはやめた。
それよりも今は、もっと重要なことがあるのだ。
あまりに自然すぎてつっこむの忘れていたが、冒頭からこの七面鳥がペラペラ喋っている件のほうが重要だ。
「ってか、なんでお前喋ってんの?」
「なんでもいいだろ」
「よくねぇよ!? 気味悪いわ!」
「失礼なヤツだ。世界に一匹くらい喋る七面鳥がいても不思議じゃないだろう」
不思議すぎる!
「お前動物園に売ったらいくらくらいするかなぁ」
「ちょ! 待て! それはシャレになってないぞ!」
いや冗談だけどさ。
「それはいいとして、なんで喋れるのか教えてくれよ」
「いや特に理由は」
「ないんかい!」
「初めからそう言ってるだろ、めんどくさいヤツだな」
し、七面鳥にめんどくさいやつって言われた。
「はぁ、もういいよ。僕銭湯行ってくるから留守番頼むわ」
「あぁ」
なんかどうでもよくなってきたので、七面鳥との話を切り上げて銭湯へ行く準備を始めた。
ということで昨日ぶりの銭湯にやってきた。
銭湯のおっちゃんに挨拶を済ませて男湯ののれんをくぐる。
「……はぁ」
昨日もそうだったけど、のれんを潜ってからはお客さんの視線が痛い。
やっぱこの顔のせいか。周りから見れば女が男湯に入ってきたも同然だからな。
ま、今更気にしないけどね。
周りの視線を集めながら脱衣を済ませ、風呂場へ突入した。
「おぉ、嬢ちゃん。また会ったなァ」
「どうもオッチャン」
昨日ぶりの怖いオッチャンが湯船に浸かっていたので掛け湯を済ませて隣に浸かる。
「昨日も来てたみてェだが、まさか毎日銭湯に通うつもりか?」
「そうですね。当分はお世話になるかと」
「嬢ちゃんが毎日通い始めたらここの銭湯はボロ儲けだわな」
「は? なんで?」
「自分の顔に聞いてみな」
「か、顔ですか?」
顔って言われてもなぁ。
「わかんねェか? じゃぁ今度は周りの客を見てみろ」
「客……」
言われて周りを見てみると、数人の客と目が合ったがそれ以外に気付くようなところはない。
あ、そういえば。
「なんとなくですけど昨日より客の数が多いですね?」
「よく気付いたな。つまるところは、そういうことだ」
どういうことかさっぱりわかりませんけど。
「まー 明日になればわかるだろーよ」
「はぁ」
つまり明日になればわかるらしい。
なんか嫌な予感がするけど、まぁいいか。




