バナナの悪口はやめろ! バナナはなにも悪くないぞ!
「本日の夕食は! 七面鳥の丸焼きです!」
ギュォォー!?
「……と、言いたいところですが。七面鳥がとても嫌がっているので中止にします」
「おいハル! 鳥を食べることは許さないぞ!」
「だから中止だって言ったろ」
「そうか! ならいい!」
てかマジで飼うつもりですか。
まぁ人懐っこいヤツだから別にいいんだが、なんたって七面鳥だからなぁ。
「とりさんかっこいいね!」
ギュワー。
うーむ。くるみさんとも打ち解けたみたいだし、まぁいいか。
「七面鳥は飼うってことでいいんだが……お次は夕飯の問題だ」
「なんだ! 飯なら私が買ってきただろ!」
「そうなんだが、なぁ」
ちなみにサラダさんが買ってきた食材は大量のバナナ。
「これで夕飯ってのは無理があるだろ」
いくらなんでも軽すぎる。
できれば肉とか野菜とか、重いものがよかった。
「文句があるなら食うな!」
「いやまぁ食うけどさ」
ギュワー!
「なんだ、お前もバナナ食うのか?」
ギュワ!
食うらしい。そういや七面鳥って草食だったか。
ということで今日の夕食は大量のバナナです。
バナナをおかずにバナナを食べる、なんという贅沢でしょうか。まさにバナナ尽くし。
「ってアホか! 飽きるわ!」
4本目のバナナを飲み込むと同時に叫ぶ。
「文句があるなら食うな!」
「食わねーよ! 食うどころか見たくもねーよバナナなんて!」
「バナナの悪口はやめろ! バナナはなにも悪くないぞ!」
「バナナじゃなくてサラダさんに悪口いってんだよ! なんでバナナしか買ってこなかった!」
「うまいからだ!」
「いくらうまくても飽きるわ!」
ってか、いくら使ったんだ?
サラダさんが買ってきたバナナの数は30本。
5本で100円ちょっととして、600円か。あれ? 意外と安いんだな?
「財布に優しいぞ! 流石バナナだ!」
「買いすぎは優しくないから」
「今度から気をつけるぞ!」
「……」
もうアンタにお使い頼まねぇよ。
そんなこんなで夕食が終わると、結構な数のバナナが残った。
「さてくるみ、30本バナナがありました。僕が4本、サラダさんも4本、田中さんが2本、七面鳥も2本、くるみは1本食べました。残りのバナナはいくつでしょうか?」
「わかんない」
「そ、そうか。残りは17本だ」
「へぇー」
あんま興味無かったらしい。
「おねーちゃん! くるみ、はやくさきおねーちゃんのいえにいきたい!」
「咲ん家? あ、もうそんな時間か。おーい皆ちょっと来てくれー!」
咲の家へ行く前に皆とお別れしなくてはならない。
どうせ毎日遊びにくるだろうから、そんなしんみりした別れではないが。
「くるみちゃん、もう行っちゃうんですね」
「うん! くるみおとまりしてくるんだよ!」
「よかったねくるみちゃん。よかったらまた、橋下にも泊まりにきてくださいね」
「わかった! あとね、またいっしょにおふろはいりたいな」
「お風呂、ですか?」
「うん!」
「えへへ、そうですね。また一緒に入りましょうね」
くるみと話している途中で、田中さんが袖を引っ張ってきた。
「どした?」
「もうダメです。なんだか泣けてきました」
「涙脆いなぁ。んじゃ後はサラダさんに任せとけ」
「は、はい。よろしくお願いしますサラさん……ぐずっ」
泣いてるし。
よよよ、と泣きながら引っ込んだ田中さんと入れ替わりにサラダさんがやってきた。
「行ってこいクルミ!」
「その台詞はやめろ」
「なに!? ハルが言えと言ったんだろ!」
その話は終わったんだよ。
「さらおねーちゃん! くるみいってくる!」
「あぁ! 行ってこいクルミ!」
それだけのやり取りで満足したらしいサラダさんは田中さんのいる方へ駆けて行った。
随分あっさりしてんな、と思ったがサラダさんらしいということで。
……てか、結局あの台詞言いやがったなアイツ。
「うし。そんじゃ行きますか」
「いくぞー!」
ま、いいか。
そんなことよりも、早乙女さん家には手土産にバナナでも持っていきますかね。




