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なぜならくるみは頑固者だから。

「サラダさん。大事な話があるんだ」


橋下から逃げてきた僕は、河原でぼーっと突っ立っていたサラダさんに話しかける。


「なんだまた来たのか! 話とはなんだ!」

「実は今晩、近くの家にくるみを預けに行こうと思ってるんだ」

「クルミをか!?」

「そうだ。やっぱくるみにはちゃんとした環境で育ってもらいたいからな」

「嫌だ! と、言いたいところだが! クルミのためだからな! いいだろう!」


流石サラダさん。なんだかんだ言っても、この人は優しい人だ。


「で、私はなにをすればいい! なんでもするぞ!」

「サラダさんは話をややこしくしないよう、隅で『行ってこいクルミ!』って言ってくるみの背中を押してやってくれ」

「それだけか! もっとやりがいのあることがいいぞ!」

「はぁ? んじゃ、話がややこしくなってきたと思ったらとにかく黙るんだ」


話がややこしいときにサラダさんが喋ると、もっとややこしくなるからな。


「いいか? これはサラダさんにしかできない重要な役目なんだ」

「重要な役目だと!? いいだろう! この私に任せるがいい!」

「すまんな」


流石サラダさん。なんだかんだ言っても、この人はバカだ。



さて田中さんとサラダさんには事情を話した。

残るはくるみ本人だが、これが一番の強敵。なぜならくるみは頑固者だから。


「おーいくるみー」

「つーん」


え、なに『つーん』て。かわいいな。


「どうしたんだよくるみさん?」

「みはるおねーちゃんをいじめるおねーちゃんはきらいだもん」


まだむくれてたのか。


「くるみ。実は今日バナナ買ってきたんだ。夕飯の後に皆で食べような」

「ほんと!? わーい、おねーちゃんすきー!」

「……お前ってヤツは」


まぁいい。くるみの機嫌は直った。問題はここからどう話を切り出すか。


「そうだ、今日学校で咲のヤツが久しぶりにくるみと遊びたいって言ってたぞ?」

「さきおねーちゃんが!? くるみもあそびたい!」


おし! つかみはOK!


「行ってこいクルミ!」

「うん! くるみあそびにいってくる!」

「は?」


いつの間にか隣に立っていたサラダさんが余計なことを言い始めた。


「ちょ!? なに言ってんのアンタ!?」

「おねーちゃん、さきおねーちゃんのいえってどういくの?」

「いやいや! 今はまだ早い! 行くのは夕飯食ってからだ!」

「えー くるみ、いまからいきたいのにー」

「行ってこいクルミ!」


黙れサラダ! 話をややこしくするな!


「うん! さらおねーちゃんもいっしょにいく?」

「行くぞクルミ!」

「台詞が変わった!?」


頼むから黙っててくれ! これ以上話がややこしくなるのは御免だ!

仕方ない、くるみに事情を話すのは後にしよう。今はサラダさんを止めるのが先だ。


「サラダさん、実は今日の夕飯のおかずが足りなくてな。ちょっと買いに行ってくれないか?」

「行ってこいクルミ!」

「行かすな!」

「行ってこいハル!」

「お前わざとやってンのか!? 」

「……」


だ、黙った!?


「喧嘩売ってんだろ!? そうなんだろ! わかった、その喧嘩買った! オラかかってこいや!」

「行ってこいクルミ!」


何の嫌がらせだよ!?


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