笑ってごまかさないでください!
サラダさんを無理矢理お使いに行かせた後、もう一度くるみの説得を試みる。
ちなみに今度は田中さんが一緒なので心強い。
「くるみ、ちょっと話がある」
「どーしたのー?」
「また咲の話なんだが、アイツ『今晩くるみを泊めてやりたい』って言ってたんだ」
「ホント!?」
「ホントホント、しかも毎日飯作ってやるって言ってたし。あぁそうだ! 昔着てたお古の服、くるみにあげたいとも言ってたなぁ!」
「やったー!」
ふふふ、これでくるみの脳内で『咲の家=天国』となったはず。
後は咲本人の話術に任せれば、くるみの洗脳は完了する!
「でも、泊まっている間わたしと遊べなくなりますね」
「えー それはいやー」
「は?」
いい感じに進んでいた話が、田中さんの一言によってぶっ壊れた。
「それに銭湯にもいけなくなります。わたしくるみちゃんともっとお風呂に入りたかったです」
「くるみもはいりたい! やっぱりさきおねーちゃんのいえにいくのやめる!」
「ちょちょちょ!? なに言ってんの田中さん!?」
「え? わわっ!」
これ以上は不味いので田中さんの腕を引いて一時退却する。
「なんであんなこと言ったんすか……」
「ごっ、ごめんなさい! くるみちゃんとお別れなんだって考えたら、ついうっかり!」
「うっかりって。あのな、さっきも言ったが遠くに行くわけじゃないんだ。会いたいときに会いに行っていいし、住む場所が変わるだけであってお別れじゃないんだ」
「そ、そうですよね! わかりました! もう大丈夫です!」
田中さんが納得したところで、もう一度くるみのもとへ。
「どこいってたのー?」
「田中さんがトイレ行きたいって言い出して」
「言ってないです!?」
「がまんはだめだからねー」
「うぅ、そうですね……」
しゅんと俯いた後、僕の顔を怨めしそうに見てくる。
なんかごめん。良い言い訳が思いつかなかったんだ。
「ま、生理現象だし。仕方ないって」
「それフォローのつもりですか!?」
「ハハッ!」
「笑ってごまかさないでください!」
「……それでなくるみ? 咲の家に行ったらちゃんと挨拶するんだぞ?」
「スルーされました……」と嘆く田中さんは置いといて、もう一度説得を開始する。
「ねー おねーちゃんたちはいっしょにとまらないのー?」
「うぐっ」
しまった。答えにくい質問がきた。
すかさず田中さんに助けてくれ、と視線を送る。
そんな僕の視線に対して「任せてください」と田中さんが頷く。
流石だ。なんだかんだ言っても田中さんは頼りになる。
「はい! わたし達、一緒には泊まりません! 寂しくなりますね!」
「え! そ、そんなのいや!」
「わたしも嫌です! ですから、咲さんの家とやらに行くのはやめましょう!」
「うん!」
「……よし!」
「『よし』じゃねーよ!?」
最悪だよ田中さん! あの頼もしく頷いたアレはなんだったんだよ!?
「あ、またやってしまいました! ついうっかり!」
「うっかりにも程があるわ!」




