おもしれー女発見編 1
王太子アルフレッドは、おもしれー女がお好きである。
もちろん、本人がそう公言しているわけではない。公爵令嬢エレノア・ヴァレンティスがその事実に気づいたのは、アルフレッドの婚約者になって三年ほど経ったころだった。
二人の婚約が決まったのは、十歳のときだ。
エレノアの父である公爵は、現国王の即位以来、その治世を支えてきた。王太子と公爵令嬢の婚姻によって両家の結びつきをより確かなものにする。そうした政治的な理由による婚約であった。
もっとも、アルフレッドとエレノアは婚約が決まるよりも前から互いを知っていた。
母親同士の仲がよく、幼いころから王宮で顔を合わせていたため、十歳で婚約を告げられたときにも、二人ともさほど驚かなかった。
家柄も年齢も釣り合い、互いの人柄もよく知っている。少なくとも当時は、これ以上ないほど順当な婚約に思われた。
思えば、アルフレッドは幼いころから聡明だった。王族に求められる教養を苦もなく身につけ、十三歳になるころには、貴族たちを相手にしても滅多なことでは言い負かされなかった。
そのせいか、予定調和をひどく退屈がるところがあった。
ある令嬢が茶会で、緊張のあまり角砂糖をひっくり返したことがある。それはアルフレッドの足元まで転がっていき、令嬢は青ざめ、周囲の大人たちも凍りついた。
ところが、令嬢が半泣きで「三秒以内なら食べられます」と言った瞬間、アルフレッドだけは目を輝かせた。
それからも似たようなことが何度かあった。
皆が美しいと褒める絵を見て「この馬、足が一本多くありません?」と言った令嬢。
王家の庭園で迷子になり、なぜか庭師たちに混じって昼食を食べていた令嬢。
外国から献上された珍しい果実を「これ、焼いたほうがおいしい気がします」と暖炉に突っ込もうとした令嬢。
もっとも、アルフレッドの変化はごくわずかなものだった。もともと感情を大きく表に出す性格ではなく、知らない者が見れば、いつもと変わらない王太子にしか見えなかっただろう。
けれど、エレノアにはわかった。
口元がほんの少し緩むこと。普段なら適当なところで切り上げる会話を、自分からもう少し続けようとすること。興味を惹かれたときだけ、相手を見る目がわずかに明るくなること。
幼いころからアルフレッドを見てきたエレノアは、そうした小さな変化を見落とさなかった。
だから、アルフレッドとともに王立学院へ入学した十六歳のころには、エレノアは婚約者の好みを完全に理解していた。
殿下は、おもしれー女がお好きなのだ。
そして、エレノア自身はまったくおもしれー女ではなかった。
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