衣
夜、私は少女を見ていた。
箱を開け、中から何かを取り出す度に、
ガチャンッ
ガチャンッ
と、大きな音がする。
薄暗い部屋の中、少女はニヤニヤ笑って作業を続けていた。
「キレイニ、シアゲテアゲルカラネ…ア、ゴメンマチガエタ、フフ。」
私は少し怖くなり、布団を頭から被って寝た。
耳を塞いでも、あの音は聞こえていた。
ガチャンッ
ガチャンッ
朝、目覚めると、隣に¨ことみさん¨が座っていた。
「お早うございます。」
……?
¨ことみさん¨の後ろ、1mほど離れて、部屋の端に誰かが座っていた。
「後ろの人は?」
「友達の、¨のりこちゃん¨です。」
¨のりこちゃん¨は、両手を膝の上で固く握り締め、下を向いたまま体を震わせていた。
「あの子、どうかしたのですか?」
「恥ずかしがっているだけです。」
「……?」
「フフ。」
¨ことみさん¨は立ち上がり、¨のりこちゃん¨の所へ歩いていき何やら話をすると、二人で押し入れの天井から屋根裏へ上がっていった。
………。
暫く天井の向こう側を想像して上を見ていたが腹が減ったので、今のうちに何か食べておこうと思った。
…コンビニでも行くか
部屋を見回し、ハンガーに掛かっているTシャツを見つける。
だが、手に取ると、ハンガーからTシャツが外せなかった。
横にしても形が崩れないくらいに、バリバリに固まっていた。
他に着るものが無いので仕方なく、ハンガーを壊して取り出すと、体型に合わせてTシャツの形を整えて着る。
そして、そのTシャツに苦労しながら、床に畳まれて置かれているジーンズを履いた。
ジーンズの、ダメージの全てが¨熊さん¨のアップリケで修復されていた。
………。
普段は掛けないサングラスで心を覆うと、サンダルを履いてコンビニへ向かった。
──その途中、財布を忘れた事に気づく。
私は、がっかりしてズボンのポケットに手を突っ込むと、なぜか小銭が入っていた。
……400円?
すぐ目の前に、コンビニが見える。
私は少し考えて、アイスを3つ買って帰ることにした。
春にしては暑い日が続く。
夏になったらどうなるのか不安になりながら、急いで帰った。
部屋に戻ると、食事の美味しそうな匂いが満ちていた。