4月
ぼろアパートの私の部屋にも、春は訪れた。
最近、この前の少女や目の前の箱など、色々な出来事が続いている。
…また、何か起こりそうだよな。
この箱を開けるのは、やめておこうと思った。
箱を、部屋の隅に置いてくると、夕食用のカップラーメンを探して、記憶を頼りにゴミ山を掘り起こす。
10分ほど探して諦めると、冷蔵庫で冷やしておいたペットボトルの水を一気に飲み干し、満腹感を味わった。
そして、いつもの定位置に座ると、リモコンのボタンを押してテレビを付ける。
《…4月24日、7時のニュースです。》
テレビの画面に付いている埃が、キャスターの顔をボケさせて、まるでモザイクのようだ。
今度、変声器のオモチャでも、テレビのスピーカーに貼り付けてみようと思う。
《ことみちゃん行方不明事件から2ヶ月、未だに……》
最近、何もする事がないと、何故か眠くなる癖がついてきた。
ああ、瞼が重い。
《…また、10日前から行方不明になっている、のりこちゃんの情報を求めてい…》
──深夜
部屋の隅で、箱のフタが、ゆっくりと開いていく。
その隣で、箱を見ている少女がいた。
手にはホチキスを持っている。
カチカチ、カチカチ、一晩中その音が続いた。
──朝
目が覚めると、誰かが隣に正座していた。
……前に見た少女ではない?
その、顔や体中にホチキスの針が刺さった少女は、優しく微笑むと、透明感のある声で、
「¨ことみ¨です。よろしくお願いします。」
と、話した。
…なんだか、嬉しそうだな。
少女は立ち上がって、ゴミ山からワイシャツを引っ張り出してきて着ると、掃除を始めた。
そして、部屋の片付けを丸一日かけて終えたとき、どこから見つけてきたのか、大きなダンボールを引きずってきた。
¨ことみ¨と名乗った少女は、箱を目の前にしてニヤニヤしていた。
少女の手には、業務用巨大ホチキスが握られていた。




