023 魔の森(5)
アリアのパーティーはブルクに苦戦していた。
ブルクはあえて姿を現したり、消したりして、闇の魔力をトゲのように飛ばして攻撃していた。
ブルクは攻撃を、剣士レオンと僧侶キリルに集中していた。
ブルクは姿を現して、レオンに向かってトゲを飛ばした。
レオンはトゲを剣で払うと、ブルク目掛けて斬りかかった。
しかし、ブルクは姿を消すと、キリルに向かって襲い掛かった。
アリアがキリルをかばって、剣を振るうとブルクが姿を現した。
「あなたの名前は?」
ブルクがアリアに聞いた。
「あなたの名前は?」
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るものだろう」
アリアが言う。
「失礼しました。私はブルクという者です。」
「アリアだ……」
「勇者アリア、あなたは確かに強い、あなた一人なら私も危なかったかもしれない。しかし、その足手まといの二人をかばいながらどこまで戦えますか」
ブルクの挑発に、アリアは冷静に言った。
「足手まといだと、私のパーティーを甘く見るな」
「フォーメーションCだ」
アリアが言うと、先頭がレオンで、キリル、アリアの順に並んだ。
(勇者が後衛……)
ブルクは、何かあると思い姿を消した。
アリアは目をつむり、魔力探知に集中していた。
そして、アリアは指示を出した。
「キリル、左45度だ」
キリルは、指示の方向に魔法攻撃をした。
それはブルクのいる方向だった。ブルクは避ける。
「レオン、右20度、2歩」
アリアが更に指示を出すと、レオンはその場所を剣で振りぬいた。
ブルクが切られながら、姿を現した。
(勇者の指示どおりに攻撃を……)
「私のパーティーを甘く見たことを、後悔するといい!」
アリアが言った。
ブルクは、また不敵に微笑んだ。
フローラに言われて、顔つきの変わったジークがヨハンに向き直った。
「いいだろう、少し本気出してやるよ!」
ジークが言うと、ジークの纏う闇の魔力が膨張していった。
そして、剣を振り闇の魔力と共に斬撃を飛ばした。
ヨハンは剣で受けたが、その威力はヨハンをパーティーの後の方まで後ずさりさせた。
「剣士、お前が放った技を闇の魔力で放ったやつだ、これが魔族の戦い方だ!」
ヨハンがジークをにらんだ。
マルスが歩いていくと出口が見えた。
そこは、かつての火山の火口部分であった。
山体崩壊を起こしていたので、平地であったが、岩がいくつも転がっていた。
空も見えていて、日が沈み夜になっていた。
マルスが出口から外の様子を見ていると、不意に声をかけられた。
「今夜は月がきれいだよ」
マルスが驚くと、月明かりの中に男性がいた。
「こっちに来て、一緒に見ないか?」
男性は上半身裸で、腰布を身に着けて、月を見ながら立っていた。
マルスが男性に近づいてみると、青年男性のようで、彫刻のように美しい顔立ちと肉体をしていた。
魔族ではないのか、魔族のような青黒い顔はしていなかった。
男性はマルスを見ると、岩に腰掛けながらマルスに言った。
「君も座らないか?」
透き通るような声だった。
マルスは落ち着き払ったその声に魅了されそうになったが、尋ねた。
「あなたは、なぜこんなところに居るのですか?」
「それが長い間寝ていたらしくてね、よく分からないんだ」
男性が答えると、マルスはこの人は魔族にさらわれてきたのだろうと思った。
男性はマルスの服装を見て尋ねた。
「君は冒険者かな?」
「……そうです」
「そうか、私の弟も冒険者だった……」
男性が言うと、マルスが叫んだ。
「あなたは、魔族にさらわれて来たんです」
「魔族……」
「ここに居るのは危険です。私と一緒に行きましょう!」
男性はマルスに言われると、うつむいて両手で頭を抱えた。
「ウ、ウ……」
男性は苦しそうに声を出す。
マルスが声を掛けようとすると、男性は闇の魔力に包まれた。
男性の顔が、徐々に青黒くなっていき、闇の魔力が膨れていった。
マルスは思わず引き下がった。
男性は立ち上がり、闇の魔力が更に膨れ上がり膨大な量になり、天地鳴動するような衝撃が一帯に走った。
その衝撃は辺り一帯に居たものに走った。
ブルクとジークはそれを感じると同時に叫んだ。
「魔王様が顕現なされた!」
アリアのパーティー、フローラ達は皆一斉に驚いた。
(魔王!)
ブルクは洞窟の壁に手をあて魔力を注ぎながら言った。
「時間稼ぎはここまでです」
ブルクが壁に魔力を注ぐと、洞窟の天井に魔法陣がいくつも光った。
光った魔法陣は爆発を起こし、天井が崩れた。
(あらかじめ、罠を仕掛けていたか)
アリアが崩れる天井を見ながら思った。
ブルクは姿を消した。
ジークも壁に剣を刺し、魔力を注いだ。
「悪いな、これからって時にまたお預けだ」
ジークはヨハンを見ながら言った。
いくつもの魔法陣が爆発し、天井が崩れた。
ジークは来た道を引き返して行った。




