015 森の南の都市(2)
ソアラがヨハンの診察をしたその夜。
マルス達は宿の近くの酒場で食事をしていた。
「カンパーイ!」
ソアラは言うと、ジョッキの酒を豪快に飲み干した。
「イヤー、旅先で飲むお酒はおいしいねー」
ソアラは酒豪で、杯を重ねていた。
酔いがまわり、上機嫌でルシアと話していた。
話はだんだん、マルスが養成所にいた頃の話題になった。
「マルス、養成所に入った頃はね、剣も魔法も全然でねー」
「その話、もっと詳しく教えて下さい」
ルシアも話題に乗ってきた。
「訓練中よくぶっ倒れていたんだよね。それでも諦めずに何度も何度も対戦相手に挑んで……、最後は気絶していたんだよね」
ソアラはそう言った後、酒を一口飲んで更に言った。
「それを私が介抱していたの」
「え!」
男性陣達は別の話をしていた。
マルスはシモムに、町に着いてから調べた事を話した。
マルスは町で特に不審な事は見つからなかった。
「そうですか……」
シモムは言った後、杯を持ちながら言った。
「マルス様達は、お酒を召し上がらないでしょうが、こういう所でしか聞けない情報というのもあるんですよ」
「ちょっと、行ってきます」
そう言ってシモムは、杯を片手に店の奥に消えて行った。
ヨハンは食事が終わったから、宿に戻ると言った。
マルスも帰ろうとしたとき、後ろの席にいた男性の話が聞こえた。
「そういえば、廃坑を調査していた連中がいなくなったな」
マルスは振り返って尋ねた。
「今の話、詳しく教えてもらえますか?」
◆◇◆◇
ここは魔王城の一室。
ブルクと以前話していた老人の魔族と女性がいた。
老人の魔族の名前はヴァルト、女性はディアナという。
もう一人、大剣を背負っている剣士風の魔族がいた。
魔族特有の青黒い顔をしており、若い男性の身なりだった。
「準備が整った、我らで動くぞ」
ヴァルトが言うと、ブルクが言った。
「勇者を名乗る者が、森の南に入った様です」
「何!」
「森の西に行った者を、捕らえた者です」
「……」
「人間どもも、薄々気付いているようです」
ヴァルトはブルクを睨んでいたが、急にうなり声を上げて頭を抱えた。
「ウッウーッ」
苦しそうに椅子に座り込んだ。
「ヴァルト様!」
他の者が一斉に叫んで、ヴァルトに駆け寄った。
ヴァルトがそれを制しながら言う。
「魔王様がお隠れになって数百年、我らも限界にきている……」
立ち上がりながら、力強く言った。
「人間どもに我らの悲願の邪魔はさせん。支度を急げ!」
「ハッ!」
一同が応答した。
マルス達は都市から少し離れた、廃坑となった坑道の入り口まで来た。
マルスが酒場の客人から聞いた話では、廃坑を調査していた者達がいたらしい。
再び採掘出来ないかと調べていると言っていた。
マルスと共に話を聞いたシモムは早速次の日、詳しく調べた。
廃坑は数年前に鉱物が取れなくなって放置されていた。
廃坑の為なのか、市長に許可も取らずにやっていたらしい。
その者達が数日前に調査をやめたのか、いなくなっていた。
「廃坑を調べていた連中の身元は分かりませんでした、おそらく都市の外から来た者達でしょう」
シモムは廃坑に着くと言った。
「それで、ここを探索するのか」
ヨハンが言うと、ルシアも言った。
「なんか、ダンジョン攻略みたいだね」
「杞憂に終わればいいのですが……」
マルスが言い、廃坑に入ろうとすると、シモムは後ずさりした。
「それでは、私はこれで失礼します」
「一緒に行かないのか?」
ヨハンが言うと、シモムが答えた。
「私は事務専門でして……、都市に戻りソアラさんの手伝いをします」
ソアラも別件の用事があり、都市に残っていた。
「皆様の無事を祈っています!」
そう言って、シモムは町に帰って行った。
マルス達は坑道に入っていった。
坑道は真っ暗で不気味な感じがした。
タイマツをかざしながら進んでいく。
進んでいく途中、コウモリや虫が飛んでいた。
地図に従って歩き、坑道の先端部まで来ると開けた場所に出た。
しばらく留まっていると、暗闇から巨大な蛇の魔獣が現れた。
「デカいな!」
ヨハンが言う。大蛇はマルス達に身構えていた。
「何かを守っているみたいですね」
「え! お宝?」
マルスが言うと、ルシアが浮かれ顔で言った。
「倒しましょう!」
マルスは剣を抜いた。
マルス達は大蛇の魔獣と戦闘になった。
マルスとヨハンが剣で攻撃していたが、大蛇の厚いうろこによって、剣がはじかれていた。
「無双一斬」
ヨハンが無双一斬を放った。しかしそれも大蛇のうろこによってはじかれ、坑道の天井に当たった。
坑道の天井が崩れて岩が落ちてきた。
マルス達は、慌ててそれを避けた。
ルシアが言う。
「ちょっと、こんな狭いところで、あんな大技使わないでよ!」
「じゃ、どうやって倒す?」
ヨハンが言うとマルスが答えた。
「私が陽動しますので、ヨハンがとどめを。ルシアは援護して下さい」
マルスはそう言うと、剣を構えて念じた。
するとマルスの剣が光を放ち始めた。
ヨハンとルシアは、それを見て感じ取った。
(あれは魔法剣……)
マルスは光る剣で大蛇に立ち向かっていった。
光る剣での攻撃は大蛇の厚いうろこも引き裂いた。
ルシアも一本の矢に念じて、魔力を込めた。
矢が光り、ルシアはその矢を大蛇めがけて放った。
矢は大蛇の目に命中した。
同時にマルスがもう片方の目を、魔法剣で切りつけた。
さすがの大蛇も苦しそうに口を開けて叫び声をあげた。
そこをヨハンが剣を突き刺した。
剣は大蛇の口から頭を貫き、大蛇は苦しそうにもんどりうって、やがて動かなくなった。




