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エルフと俺の冒険譚(仮)  作者: たかなり
1章~出会い~
5/9

戦略的戦闘

「俺に今できることは、シアの戦闘とヘルスケアだけだっ、ヒール‼︎」


回復の魔法、ヒールはかけた対象のダメージを小程度回復させる。あばらのヒビはそこまで大きなものでなかったので、ヒールで間に合った。

シアはひと時も休まずに、また跳躍し1体を倒す。これで、キメラは残り4体、半分ほどに減らせた。

だが、こちら側が無傷というわけではない。ヒールで回復したとはいえ、打ち身までは癒せず、そろそろアクティベートの活動限界も来ている。額に浮かんだ大きな雫がそう告げていた。俺は身体的ダメージよりも、精神的に来ていた。慣れない足場で、身に襲いかかる死への恐怖が今はあった。また、戦闘に参加できない罪悪感にも苛まれる。

しかし、だからと言って諦めるわけにはいかない。これまでは、自分の諦めは自分のためであった。これからは、シアのため、カイのため、簡単に諦めるわけにはいかない。


「態勢を整える、いきなり4体も倒せたから相手の陣形は動揺からか崩れたままだ!今しかチャンスはない‼︎」

「..................ッ!」

「シア、俺を信じてくれるか......?俺の指示出しが最善の策とは限らない、けれど、俺がこの戦闘を仕切りたい。嫌ならいやとい」

「シンジル‼︎カイ、シジ‼︎」


即答だった。その嬉しさに浸りたいが、あいにくそれを許してくれる時間はない。木を引き締め、もう一度よく戦況を確認する。

右に1体、左斜め前に1体、左斜め後ろに2体の配置。全体的に見れば、少し左側にキメラたちは寄っていた。


「まずは右のキメラを落とす!シア、よろしく頼むっ‼︎」

「テェィヤァァッ‼︎」


俺の指示通り、シアは迷いなく右の1体のキメラから落とした。余りカイから離れないよう全力の跳躍ではなかったものの、その減速をハンデともしない、しなやかな股関節から放たれるムチは、首を掻っ切るに必要十分な力だった。

これで残るキメラは3体、しかし先ほどの隊列ではなく、注意を一点に向けないよう正三角形の陣取りで囲まれた。こうなっては迂闊に戦闘を始めることはできない。シアならば1体を倒し突破口を見いだせるかもしれないが、そうなれば残り二体はカイを襲うだろう。この絶望的状況を、カイは予測できていた。そして、その為の策も拵えている。


「シア‼︎目を瞑るんだ‼︎」

「.............ンッ」

「ライト‼︎」


今度は、人差し指だけでなく両手を合わせてライトを放った。その光は昼ならばともかく、夜には煌々と光り、視界が遮られる。しかし怯んだのは2体のみで、1体は何の気なしに距離を詰めてきた。そして、これすらもカイは予想済みだった。


(蛇の頭してたら、おそらく視認でなく熱感知で察知しているはずだと思ったんだっ!)

「シア!蛇頭の奴をたのむ‼︎」

「ヤァーッッ‼︎」


体重の乗った突き上げ掌底は、蛇頭のキメラの内臓を破裂させ、絶命させる。しかし、光で未だ怯むキメラたちはカイを襲うことはできない。

すかさずシアはもう一体、もう一体と攻め倒し、無事にキメラとの戦闘を終えた。

その場にへたり込んだ2人は、そのまま寝てしまおうかと言葉を交わすも、血の匂いのする場所に長居をしてしまってはまた戦闘になりかねない。疲労の蓄積した足を無理矢理動かし、視界のよく開けた、月明かりが広く刺さる場所へたどり着いた。

シアは疲れたそうで、倒れるかのように床へ倒れ、寝てしまった。道中拾っておいた枝を下ろしたカイは、火打ち石に見立てたその辺の石で着火させ、暖をとる。冬ではないが、夜は冷え込むからだ。

火の光に照らされたシアの顔は緩やかに口角が上がり、気持ち良さそうだった。カイは無意識に頭を撫でる。

その焚き火に、ポケットから取り出した葉を投げ入れる。道中見つけた葉で、かなり独特な匂いを放つが、魔物が嫌いな匂いなので、襲われる心配は限りなく低くなった。これも、薬草学の研究をしていた故の知識。役に立っているな、とどこか誇らしげな気分になる。

そこでカイも、空いたお腹をさすりながら寝床についた。

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