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エルフと俺の冒険譚(仮)  作者: たかなり
1章~出会い~
3/9

協力という未知

大きな、グリフォンのような魔物が現れる。それも、中心部とは比較的離れた場所にある彼女の家にめがけて、だ。

彼女は咄嗟に俺を担いで、家の壁をぶち抜く勢いで横に飛んだ。

刹那、彼女の家は半分以上を散り散りにされてしまった。グリフォンの驚異的な握力は屋根の藁は言わずもがな、支えとなっていた大木さえも、砂のようにパラパラとさせた。


「ナ、ナンデアンナヤツガ...」

「ともかく今は逃げるぞ!」

「ムリ、アイツ、ハヤイ!」


大空を闊歩するように移動するグリフォンは、もう追撃に来ていた。彼女はまたも素早く跳躍し、間一髪のところで爪をよける。

彼女は優しく俺を置き、即座にグリフォンに向かって跳躍する。最初、何をしているのか分からなかったが、すぐに攻撃を仕掛けていることに気づいた。


「シエン!シエン‼︎」


支援をしてほしい、と言うことだろうか。彼女の蹴りはグリフォンに届かず、空を切る。

彼女の動きは早いが、それでも当たらない。何か彼女のスピード性を上げる魔法...そういえば、細胞を活性化させ、一時的に運動能力を高める魔法があったはずだ。

迅速な判断により、素早く彼女の方へ手をかざし詠唱する。


「アクティベート!!」


青い光がカイの手のひらから放たれ、やがて彼女に着弾する。一瞬攻撃かと思いたじろいだものの、それが支援だと分かるとすぐにグリフォンへ視線を移す。


「近づいた瞬間に、俺が動きを一瞬だけど止める!その隙に、なんとか頼む!」

「ワカタ!!」


自身にもアクティベートを付与し、通常の3〜4倍の筋力が備わる。血流が早くなり、頭も冴えてきた。カイは壊れた少女の家から大木を拾い、降りてくるグリフォンの眼球めがけ全力で投げつける。空気抵抗をなるべく受けないよう回転をきかせた。


『グギャアァァァァ‼︎‼︎』


見事命中した。元々の運動神経もあって、それほど難しいことではなかった。だが、活性化は無理に体を動かすために負荷が多い。カイはその場に倒れてしまう。が、意識はあるようだ。


「今だ‼︎決めてくれ‼︎‼︎」

「ーーーーーテヤァーッ‼︎‼︎」


非常に柔らかい股関節から最大の遠心力、活性化による怪力によって、全力で蹴りつけられたグリフォンの首は、時計でいうと10時10分を指す。ゴキッという音とともに、グリフォンはその場に倒れ伏せた。その体重からか、辺りには地響きが起きた。


「ハァ...ハァ...ハァ...」

「はぁ...はぁ...はぁ...」


肩で息をしながら、少女はカイに近づき、顔と顔が隣り合わせで、体は逆向きに倒れ込む。

呼吸を整えた後、二人は顔を見合わせ、


「クスクスッ」

「クククっ」


僅かに笑い合った。それは、感謝や、賞賛にも似た笑いだった。もしくは、緊張が解けただけなのかもしれない。


彼女曰く、グリフォンはエルフの森の近くによくいる魔物らしい。かなり稀だが、こうやって道に迷い、気が動転して気性が荒くなることがある。それがたまたま襲ってきたのだろう、と予測した。街のエルフ達は既に逃げていたみたいだ。なにせグリフォンは魔法攻撃が通用しにくく、突風によって得意とする風魔法も無意味になってしまうらしい。

これは、彼女だからこそできた事だった。


「君はすごいよ...他のエルフじゃできないことをしてみせた」

「ソレハ、キミモ。ミタコト、ナイ、マホウ、ツカッタ。ニンゲントハ、オモエナイヨ」

「あはは、ありがと。......そろそろ自己紹介でもしようか。俺の名は、カイ」

「シア、ワタシ、シア!」


二人は笑顔を交わす。


「よろしくな、シア」

「ヨロシク、カイ」

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