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第35話 はじまりましたよっ!!

 


 それからアルティナさんの準備を待って、ギルド施設を出発しました。


 グラディスさんが言うには、救難の狼煙が上がったのは私達が依頼達成を報告してる頃、場所は旧市街と貴族街の境目あたりらしい。

 なので真っ直ぐ宿屋街を抜けて向かう事になりました。 


 さて、行き先が決まったとなると周囲の安全をきっちり確認しないと駄目ですねっ。

 これがパーティでの私のお仕事なのですっ。


 獣人特有の鼻と耳で周囲の状況を常に確認します。

 さらにこれに気配察知スキルも上乗せすると、周囲の状況なんて丸わかり...。


  --ぅえぇっ...


 気配察知スキルを使用した瞬間、もの凄い数の敵を補足してしまいました。


 さっき子供達を護衛した時はこんなに居なかったのに...。

 ほんの30分程度でこんなに敵が増えるなんて、いったい何が起こってるんだろう...。



「ジョニーさん、この宿屋街を抜けた所から凄い数の敵が来ます」


「えっと、どれくらいですか?」


「まず、旧市街へ入る手前に15体います、それから少し進んだ場所に20体以上...」


「多いですね」


「はい...」



 ジョニーさんも数が一気に増えたのが気がかりなようで、顎に手を置いて静かに唸ると悩み始めてしまいました。



「そうですね、理由は分かりませんがこれだけ増えてるとなると何か原因があるはずです

 未知の敵が潜んでいる場合も考えられるので、覚悟と準備だけは念入りにやっておきましょうか」


「はい、わかりましたっ」



 しかしこの辺りは腐臭がかなりキツイです。


 探知魔法で魔力を持った対象は補足できるんですが、隠蔽されると難しく。そういった対象を普段は嗅覚で見つけ出すんですが、この臭いの中じゃ難しいです...。

 っていうか、本当につらいです...。


 なので残るは音を頼りに目視で確認していくしかないんですが...。

 この異常事態ではジョニーさんから斥候の指示は来なさそうですね。


 

「さて...ニナは何時も通り魔法の準備をしておいて下さい」


「んー わかったわー」


「アルティナさんは最後尾で支援魔法を...」


「はっ、はいっ」


「エルは後衛に敵が漏れない様にして下さい

 それと、奇襲を察知したらすぐに報告を御願いします」


「わかりましたっ」



 さて、予想通り今回の斥候は無しですね。

 斥候で敵の数が少ないルートを突破スるんじゃなく、真っ直ぐ殲滅しながら突き進むみたいです。


 それなら短剣だけじゃなく弓も用意しておいたほうが良いですね。



「アルティナさん」


「はっ...はいぃっ」



 私が声を掛けるとアルティナさんが緊張してガッチガチな返事をかえしてきました。

 あー...やっぱり、戦闘慣れしてないとこうなりますよね。



「この先、もしかすると敵が奇襲を仕掛けてくるかもしれません」


「きっ、奇襲ですか!?」


「はい、でも私が事前に察知して知らせますので、そこは安心して下さい」


「は、はいっ」


「それでですね、静音(サイレンス)の支援魔法は使えますか?」



 ここの敵は音に反応して襲ってきますからね、静音(サイレンス)があれば幾分かは安全になります。

 ただ、この支援魔法は暗殺者や盗賊が使うものなので神官さんが持ってるかどうか...。



「ええと、一応使えますが...」


「良かった、神官さんだから覚えてるか不安だったんですよっ」


「ええ、子供達が夜中に騒ぐので、その騒音を消すのに良く使っていたんです」



 そう言って少し微笑むと、アルティナさんが理由を説明してくれました。

 心なしか会話したおかげで緊張も少し溶けたみたいですね。



「それじゃあ御願いします」


「もうかけちゃっていいんですか?」


「はいっ」


「ではいきますねっ」


  --スゥゥ...


「静寂と平穏の女神セレスティアよ、風に溶けゆく静寂をここに......静音(サイレンス)!!」



 アルティナさんの詠唱がおわると同時に、私達の足音や衣擦れの音が消え去った。


  --ピョン

   --ピョン


 試しに飛び跳ねてみましたが、着地の音も完全に聞こえませんね。

 かなりスキルレベルが高いみたいです。


  --アルティナさん...このままパーティに欲しいなぁ


 ニナさんは盗賊や暗殺系の魔法は好みじゃないみたいで、使えてもレベルが低いのです。


 静音(サイレンス)は...私も取ろうとは思ったんですが、殆どの獣人は魔法の容量(キャパシティ)が低くて...。

 回復(ヒール)静音(サイレンス)かの二択になってしまったので、泣く泣く回復(ヒール)を選んだんですよ。


 ああ...とっても羨ましいです...。


  --はぁ......


 さて、先程敵の反応があった辺りまでやってきましたね。

 気を引き締めなおしましょうか。


  --ええと...



「ジョニーさん、そこの建物の影に2体、屋根の上に8体、それからこれは...地中に5体居ます」


「地中に屋根ですか...」


「この配置は完全に奇襲ですね」



 普通のアンデッドは本能だけで動く存在、こうやって奇襲を行う知能はないはずです。

 そうなると、知能をもった上位アンデッドが下級を支配してる可能性......しかないですね。



「待ち伏せてるのはワイトか......最悪、リッチでしょうか?」


「そうですね、でも敵がはっきりしないので僕が引っ張り出します」


「わかりました、私は後方で何時も通りに」


「ええ、特にアルティナさんは臨時なので注意しておいて下さい」


「はい」


「えーっと、ジョニー

 私は上にいるヤツから優先で倒すわよ?」


「はい、それでお願いします」



  --ふぅ...


 何時もと変わらない、ただ確認するだけの話し合いを終えて。

 ジョニーさんがゆっくりと敵が待ち構える方へと歩き始めました。


 後ろではニナさんが火矢(ファイヤーアロー)の詠唱を始めてます。

 アルティナさんも問題なく周囲に支援魔法をかけていて、パニックになる等の問題はなさそうです。


 さて、後は敵とエンカウントして、此方(こちら)に流れて来てしまったのを倒すのが私の仕事ですねっ。

 今回の敵は本能で動かないので、裏をかかれない様に集中して...気配をしっかり掴んで...。


 よしっ、敵の居場所はしっかり把握できました。

 これで何処から敵が飛びかかってきても対処できます。


 そして、皆の準備が完了した所で、ジョニーさんが地中にいる敵のど真ん中へと飛び込んで行きました。


 いよいよ戦闘が始まりますっ!!



 

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