第六話『最強と最凶』5
俺は柊と別れた後、荒井先輩がいる闘技場前にいた。
相手は神人以上の力を手に入れている。一筋縄ではいかないだろう。
だけど、俺は勝たなければいけない。絶対にな。
俺が今持っているこの剣はその為だ。この剣は直接何かに害を与えるものいや与えられないものだ。
打ち消しの剣――能力消滅剣。それが、俺の本当の武器の名前だ。
魔法、剣技、能力など全ての力を打ち消し、無効にする剣。それ以外は何の効力を持たない。
これで、荒井先輩は必ず元に戻す。
「さて、中に入るか……」
俺は気持ちを引き締めて、再び闘技場の中へと入っていく。
先ほどまで溢れかえる程の生徒たちがいたこの場所は閑古鳥が鳴いている。
ただ、闘技場にいるのは不敵な笑みを浮かべた荒井先輩だけだ。
「酷いじゃないか~涼風君。あんな所で、爆発を起こさせるなんて」
「そうは言いながら、無傷じゃないですか。さすが、固有スキル瞬間移動を使えるだけはありますね」
俺も荒井先輩に不敵な笑みを返す。
「さあ、実験再開と行こうか!!」
「いえ荒井先輩、残念ですがここで実験中止させてもらいますよ!!」
俺はそう言い、荒井先輩に攻撃を仕掛ける。
だが、その攻撃は不発に終わる。消えた……いや瞬間移動したのだ。
どこだ……荒井先輩は……。
「……!! 後ろか!!」
「残念、前だよ」
「なっ!! かはっ!!!!」
俺は荒井先輩の攻撃を防ぎきれず、吹き飛ばされる。
闘技場の壁に俺は激突した。
くっ……。やっぱり威力が半端じゃないな。
荒井先輩は身体技術共に強くなっているようだ。
「どうしたんだい? まだ、終わりじゃないだろう。もっともっと僕を楽しませくれ!!!!」
再び荒井先輩が姿を消す。
何でもありかよ……まったく。
分かってはいたが、荒井先輩は固有スキルを手に入れている。そして、このスキルは限界まで何度も使用することが出来る。
今の荒井先輩はやはり倒すしか救う方法がない。
「かはっ!!」
再び俺は荒井先輩の攻撃を喰らう。
気付いた後にはもう手遅れだ。攻撃を弾き返さない。
「どうした、どうした!! 君の力はそんなもんじゃないだろう? 僕に見せてくれよ!!」
「ぐはっ!!」
くそっ。考えている暇はない。
俺は精神を集中させる。
どこに荒井先輩が出てくるんだ……。瞬間移動後には必ずその痕跡が残る。
それを予測するんだ。
「…………そこだ!!」
俺は能力消滅剣をある場所に振りかざした。
「くっ!! なぜ、分かった……」
どうやら、当たりだったようだ。
荒井先輩は二度目の動揺を見せる。
よし、突破口が見えたな。
「荒井先輩、その固有スキルは元々備わっていた力ですか、それとも手に入れた力ですか? 恐らく、後者の方だと思いますが」
「まさか、そこまで理解してるとはさすがだね……」
「まあ、そうですね。残念ですが、あなたに隙があるんですよ」
このスキルは初心者ほど痕跡が残りやすい。荒井先輩は当然初心者だ。
だから、柊が場所を測定する事が出来た。
それが、今の荒井先輩の弱点になる。
「ふはははは!! 面白い……面白いよ……なら、これはどうだ!!」
そう笑いながら、荒井先輩は再び俺の目の前から消える。
なるほど……瞬間移動連続使用か……。
確かに脅威だが、もう俺には効かない……!!
俺は再びある場所に能力消滅剣を振りかざす。
「くはっ!! なぜ、また……?」
「言ったじゃないですか、荒井先輩。あなたには隙があるって」
荒井先輩の攻撃を難なくと弾き返す。
もう、俺は負けない……。
ここまで来たら、俺の勝ちだ。
荒井先輩は酷く驚いている。そろそろ、終わらせる……!!
「では、俺から行きますよ!!」
「……なっ!! いない……!!」
荒井先輩は辺りを見渡す。
ふっ。やっぱり先輩にも見えないか。
俺の速さには今の先輩でも勝てないようだ。
「まさか、涼風君も僕と同じ……」
「そんなわけないですよ、俺は人間ですから。単なる身体能力です」
「そんな……あり得ない……」
「それが、あり得るですよ。さあ、荒井先輩。もう終わりです」
「……!!」
俺は荒井先輩に攻撃を仕掛ける。
先輩、今助けますから……。
荒井先輩は後退する。
大きな隙が荒井先輩に生まれた。
今がチャンスだ。
「最強を舐めないでください!!!!」
そして、俺は発動させる。
――能力粉砕。
「なんて技だ…………」
荒井先輩はそう言いながら、俺の技を受ける。
その時見たは悲しそうな表情をしていた。
自分が何をしていたか今、気が付いたのだろう。
そんな思いの中、荒井先輩は倒れる。
「大丈夫ですよ、荒井先輩。あなたは、死にませんよ」
俺は荒井先輩にそう呟いた。
さて、最後の仕上げだ。
俺は荒井先輩の体に触れる。そして、目を閉じる。
「…………」
精神を統一させる。
荒井先輩を何が侵食したのか。俺は数十秒の間、探し続ける。
「……ここか!!」
俺はそこに向けて、再び技を発動させた。
すると、すぐに荒井先輩は苦しそうな素振りを見せなくなった。
どうやら、これで消滅したようだ。
「これで、安心だな」
俺は荒井先輩から離れる。
さてと、瀬那先輩に報告するか……。
その時だった。
「……!!」
突然力が抜け、その場に俺は倒れてしまった。
ふっ。まさか、力の使い過ぎか。それとも荒井先輩の攻撃を沢山受けたからか。
どちらにしても情けない話だな、まったく。
「……俺……最強なのにな……」
最後に空を見つめながら呟き、そして意識を失った。
空はすでに夜の姿となっていた。




