第六話『最強と最凶』3
二日置きになってしまいました……。本当にすいません……。
「司たち、遅いわね……」
私――柊成実はとある話を聞くため、司たちを自分の部屋で待っていた。
窓に視線を向けると、もう夕日も沈もうとしていた。
それにしても遅い……。
今までも司は私や瀬那先輩を待たせていたけど、こんなに遅かった事はこれが初めてだ。
「様子、見に行った方が良いかな?」
私は少し心配になる。
この部屋は学園唯一放送やアナウンスが流れないのだ。だから、今何が起こっているのか分からない。
私が最弱だったせいで、この部屋が私の部屋となってしまった。
とても悔しかったけど、今では気にしてない。なぜなら、私は勝利を手にしたからだ。
司や瀬那先輩たちのおかげで、私は少し変わった。少し成長出来たのだ。
早く神人たちを見返してやりたい。次の個人戦で負けない……。
「……やっぱり行こうかな……」
少し気持ちの整理をして、私は行くことに決める。
私は席から立ち上がる。
その瞬間、
「……何、この気配? ……誰かが……来る!!」
司たちではない。明らかに、私とは敵だ。
そんな気配がする。
私が気配を読み取ると、扉がギギギギギっと変な音がそして……バンッ!!
「だっだっ誰!?」
木の扉がこじ開けられた。しかも木端微塵に。
私は扉の方に視線を移動させる。
「……!! あなたはっ!!」
どうして……あなたが……。
私は驚きを隠せない。
「やあ、柊君」
「……荒井先輩……!!」
目の前にいたのはいつもとは何かが違う荒井先輩だった。
これは、殺気なの……?
私は不安になり、近くにある細剣を取る。
「そんな怖い眼つきしないでよ……」
「荒井先輩、何の用ですか?」
荒井先輩を強く睨み付ける。
いつもなら、荒井先輩は笑い飛ばすはずだが今は笑っていない。
やはりいつもと何かが違う。
「ふっふっ……。実験だよ……実験!!」
荒井先輩は不敵な笑みを浮かべる。
どうして今そんな事をしようとしているの。
私は身構える。
「いったい、何の実験するつもりですか!!」
「それは、こういう事だよ!!!!」
そう言った瞬間、荒井先輩は姿を消す。
えっ……。
何で、荒井先輩が固有スキルを……。
「……!!」
気付けば、私の背後に荒井先輩がいた。
速いという次元じゃない……これは瞬間移動だ。
私が振り返った時にはもう遅かった。
「かはっ!!」
腹に大きな衝撃が襲い掛かる。
私は避けきれず、壁まで吹き飛ばされる。
「……どうして……あなたが……」
「ふっふっ……。素晴らしいだろう? 私は神人をも凌駕する力を手に入れたのだ!!」
神人をも超える力を手に入れた……?
荒井先輩は神人になったと言う事になる。
普通ならあり得ない話だ。だが、実際今そのような力を荒井先輩は持っている。
気配からして殺気が尋常じゃない。
立たないと……私はこんな所で……
「……!! 足が動かない!!」
足の感覚が全くない。
立ち上がれない……どうして、まさか怖いの……。
怖いから私は立ち上がれないの……。そんな立って立って……立ってよ、私!!
だけど、私は立ち上がれなかった。
この状況に私の精神は耐えきれないのだ。
怖い……怖い……怖いよ。
私の感情までもがおかしくなっていく。
「素晴らしい……この力で僕は強くなる……強くなるんだ!!!!」
「……そんなに力が欲しいんですか……?」
「当たり前だ。力こそ全てだ。力があれば、何でも変えられるんだ」
確かに、それもそうかもしれない。
私自身も力を追い求めていた時期があった。
力が私にないから、最弱なんだと思い込んでいた。
でも、違ったんだ。力がないわけではなく、力の使い方が悪いんだと。
当たり前だけど、それが正解だ。
今の先輩はどこか間違っている。
それを伝えたい……けど、私にはそれが出来ない。
怖いのだ、今の状況が。
「だから、君を僕の生贄にしてあげるよ!!!!」
「……!! くっ!!」
再び、大きな衝撃を私は受ける。
荒井先輩の目が明らかにおかしい。
私は何とか移動しようとする。
だが、
「無駄だよ!!!!」
「くはっ!!!!」
荒井先輩の力で身動きが出来なくなる。
「……止めて……助けてよ……」
ついに、私は声にまで出してしまう。
気付けば、私は泣きそうになっていたのだ。
何もかも絶望に包まれる。
「くはっくはっ!!!! 神人のあなたが、そこまで弱腰とはね……でも、面白い!!」
変な笑い声を出し、荒井先輩は私を見つめる。
近づいてくる……荒井先輩が。
「……来ないで……いや……」
もう、私にはそんな言葉しか出てこない。
私はまだ最弱だったのかもしれない。勝手に思い込んでただけで、弱かった。
あの時から、なに一つ変わっていなかったのだ。
そう思うと、私はもう泣くしかなかった。
「大丈夫だよ、すぐに楽にしてあげるから!!!!」
「……誰か助けて……!!」
その時だった。
キィンンンン……。
鈍い音が鳴り響く。
これは、あの時と同じ感覚。
ヒーローのような人が現れるはずないのに、そこに現れた。
今も私の目の前にいる。
「荒井先輩……浮気なんて先輩らしくありませんね?」
「……司……?」
私の目の前には荒井先輩の攻撃を必死で受け止めている、司がいた。
あり得ない光景が今起きた。
こんな事が二回も……。
「どうして、司?」
「悪かったな、柊。もう大丈夫だ」
司は私に優しくそう言った。




