第五話『決戦』6
「なっ……!! 僕のチームが真央ちゃんのチームに負けた……?」
僕――荒井崇人はあまりの結果に、驚きを隠せずにいた。
まさか、真央ちゃんのチームに負けるとは思っていなかった。
だって、相手は最近結成されたばかりのチームだ。当然僕らより訓練はしていない。
それなのに、負けた……。負けただけでなく、昴達を納得するほどの実力を見せつけられた。
これでは、優勝候補と言われていたのが、嘘みたいだ。恐らく、今では僕のチームは期待されないだろう。負けてしまったから。
「夢だ……こんなの夢だって言ってくれ……」
「夢ではない、現実だ」
僕が一人で嘆いていると、上から真央ちゃんの声が聞こえた。
上を見上げると、真央ちゃんや真央ちゃんのチームの人も僕の前に立っていた。
「真央ちゃん……」
「だから、真央ちゃんは止めろ……。とにかく、昨日の話は無しでいいな?」
「そんな……!! 駄目なのか?」
僕は昨日言った約束を思い出しながら、必死で真央ちゃんにお願いする。
だが、その思いは届かないらしい。
真央ちゃんはあまり笑顔ではない。
「ああ、駄目だ。私に告白するなら、まずは私に勝ってからにしろ!!」
「瀬那先輩も意外とそういう事、提案するんですね……」
隣にいる確か……司だ。その司がそう言うと、瀬那先輩は銃を涼風に向けた。
瀬那先輩は少し恥ずかしそうな表情を浮かべている。僕には見せない表情だ。
「わざわざ、そんなコメントするな……!!」
「わっわっ分かりましたから……!! お願いしますから、銃を向けないでください!!」
「分かったならいい」
そう言い、真央ちゃんは司から銃を下す。
このような事を毎日しているのだろうか。少し嫉妬してしまう。
「羨ましいですね……。まるで、恋人みたいですね……」
僕は皮肉にもそんな事を言ってしまう。
こんな事言ってもしょうがないのは分かってる。だけど、僕は言ってしまった。
僕の言葉を聞くと、急に真央ちゃんは赤面する。
「なっなっなっ何言ってるんだ、貴様は!? つっつっ司と恋人なんて!!」
「どうして、瀬那先輩が恥ずかしがってるんですか……。こんな嘘、気にしないで下さい」
「嘘……!! …………そうだな、これは嘘だ……嘘よね……」
司がそう言うと、瀬那先輩は残念そうな表情をする。
まさか、瀬那先輩は司の事が……いや、そんな事考えたくない……!!
それに、もしそうだとして、司は気付いていないのか。それなら余計に嫌だ。
「とにかく、私はこれで失礼するからな!!」
「待って、真央ちゃん!!」
僕の言葉は聞かず、真央ちゃんは僕の前からいなくなってしまった。
こんな事って……。
僕は酷く落ち込んでしまった。
「すいません、荒井先輩。いつか、瀬那先輩と付き合えるといいですね。それでは、俺たちも」
司は僕に一礼し、瀬那先輩が行った方向へと歩き出した。
瀬那先輩と付き合えるといいですね……。
その言葉が僕にぐさりと心に刺さった。
お願いを取り下げられ、ついには真央ちゃんのチームの司に慰めれてしまった。
こんなに惨めな気分を味わったのが、これが初めてだろう。
「荒井先輩、大丈夫ですか?」
「ああ、昴たちか……すまない、君たちは先に部屋に戻っていてくれ……」
心配になって僕の元に来たのだろうか、昴たちは僕を心配そうな表情で見ている。
だが、さすがに僕のチームの人まで不安にさせるわけにはいかない。
僕は少し途切れ途切れだったが、何とか言葉を伝える事が出来た。
「そうですか……。分かりました、それでは先に行ってますね。行きますよ、青葉と紫月」
昴を察したかのように僕の言葉に頷き、青葉たちとともに去って行った。
とにかく、これで一回目の団体戦は終わってしまったのだ。
悔しい……僕に力があればこんな事には……!!
僕は自分の不甲斐なさに嘆く。
空を見上げる、今はもう夕方か……。
今日の夕日は僕に対して冷めている気がした。
「はぁ~……」
僕はついにはため息を吐いていた。
自分には何も力がなかったようだ。
今までのはたまたまだった。運よく勝利出来ていただけかもしれない。
「僕にも」
「力が欲しいですか……?」
突如、僕の言葉が遮られる。
気が付くと、僕の目の前に黒いマントを羽織った人物がいた。
黒いマントのせいで顔は見えないが、体格から相手は男性だと分かる。
「何ですか!! あなたは!!」
僕は身構える。
おかしい……いったいどこから出てきたんだ。
すでに観客は去っていて、闘技場には僕しかいないはずだ。
それなのに、目の前に謎の人物がいる。
「おっと、そんなに身構えないでくださいよ~。ただ、あなたの手助けをしようと思って」
「僕の手助けを……? いったい、どういう事です?」
すると、黒いマントを羽織った人物が僕に迫ってくる。
速い……こんな人物は中々いない。
一瞬消えたかのように思ってしまう。
それほどの速さをこの人物は発動したのだ。
もしかして、神人のような能力か……?
神人には確か固有スキルがあったはずだ。それをこの人物を使ったと言うわけか。普通に考えればあり得ない事である。
「今のような力をあなたに上げましょう。この力は神人以上の力と言われています」
「神人以上の力……? そんなものが、あるわけ……」
「あるんですよ、ほら」
僕に一つの何やら液体の入った容器を見せる。
これが、神人以上の力を発揮できる薬なのか……?
そんな話が本当ならば、僕は力を手に入れる事が出来る。
「これは、神の薬と言います。これを飲めばたちまちにあなたは強大な力を得られる事が出来るでしょう」
「そんなおいしい話があるわけがない」
もちろん、僕は断る。
当たり前だ。そんな事があるわけがない。
もし、そんな薬があったら大事になる。
「そうですか……なら!!」
すると、突如目に見えない速さで僕にその薬を飲ませた。
飲まされた瞬間、僕の体が動かなくなる。
「くっ……!! ……なぜ……」
「それは体験してもらう為ですよ……存分に力を使ってくださいね」
そう言い、その人物は僕の前から消えていく。
その人物は邪悪に満ちた笑みを浮かべていた。
くっ。体が動かない。
だが、何やら気持ちが良い気分になる。
まずい、何かに毒される。
「……待て…………」
「ふっ。目覚めたら、あなたは最凶になってますよ……そう、最凶に」
その言葉を最後に僕の耳には何も聞こえなくなった。
僕は意識が薄れていく中で、自分ははめられたのだと思った。そして、僕は意識を失い倒れた。
さて、これにて第五話は終了です。次回はいよいよ一章の終盤、第六話です。一章の後もまだまだ続くのでよろしくお願いします……。




