第26話:探る。
やっと何とか続きを書ける時間が取れました・・・!!
ああ。嬉しい・・・
久々でお見苦しいところもあろうかとは思いますが、
どぞ、お楽しみくだされ(笑)
「それにしても、外の世界はずいぶんと面白いことになっておるのう」
カカカ、と笑いながら、書庫の神様は、帝国で採れた一番茶を自ら淹れ、花乃衣と蒼に差し出した。
花乃衣が書庫の神様にここに久しぶりに来た事情を説明すると、興味深げに話を聞いてくれた。
そして笑い出すと、冒頭の台詞を言ったのである。
「笑い事じゃないですよ・・・」
花乃衣がブスっとした表情でそういうと、書庫の神様はますます笑みを深くして言った。
「まこと、人族とは面白い存在よな・・・」
長くなった白いあごひげをゆっくりと撫でつつ、ゆっくりと目を閉じて、書庫の神様は何か考え事をしていた。
「魔族は強いものがその頂点となるが、人族は違う・・・人種や血族、信仰するもの、考えを同じくするものと、様々なもので繋がろうとする・・・まこと、興味深い」
蒼は、黙って書庫の神様の話を聞いていた。結界内であるが圧倒的な魔力を感じる存在を前に、彼は身のうちにある魔力を十分に練っていた。何が起こっても、花乃衣を守れるように。
「そこの青年よ」
急に声を掛けられて、蒼はびくっと体を揺らした。
書庫の神様は、ゆっくりと蒼の方に体を向けると、彼を安心させるように微笑んだ。
「今この場にいる私には、そなたたちに何か害を与えられるような存在ではない・・・それにこれでも、花乃衣のことは可愛く思っておるからの。安心せい」
カカカ、と、またも笑いながら、書庫の神様は蒼に言った。
蒼はふうっと一息吐くと、その身を変えていた変化の術を解いた。
元の姿に戻った蒼を見て、書庫の神様はほほぅ、と珍しく驚いた表情を見せた。
「そなた、ヴィルフレンの身内か」
「息子です」
あっさりとそう言った蒼に、書庫の神様はさらに驚いた表情を見せた。
「なんと、あの男に息子がのう・・・母御はどなたじゃ?」
「東の魔女です」
「・・・花の君か・・・」
そう言って、書庫の神様は黙ってしまった。
「神様は、帝国の『闇』の里がこの後宮のどこにあるか知らない?」
なんとなく気まずい雰囲気になった場を打ち破るような、花乃衣の声だった。
(正直)花乃衣にも非常に興味のある話題であったが、話す必要があるときには蒼がちゃんと話してくれるだろうし、今は何より、暗君を『悪意の底』から救うべく帝国の『闇』の里に行かなければならない。
花乃衣は書庫の神様なら、知っているに違いないと思っていた。
「知ってどうする」
書庫の神様は穏やかな表情ではあったが、花乃衣の表情等見逃すまいと、彼女をひた、と見つめて、問うた。
「邪法を撲滅する」
「それは帝国の政に関することで、私の一存でそなたに教えることはできぬ」
「今までの帝国の発展が、『闇』の助けを受けているから?」
「そうだ・・・と言っても、多いことではないが」
「・・・少なくとも、人族より上位の者を従わせる邪法など、必要ないはずでしょ」
「・・・確かに・・・」
ふむ・・・そう言ったきり、書庫の神様は黙り込んだ。長いあごひげを撫でつつ、彼女の言い分が本当に帝国にとって邪魔にならないかどうか、考えている。
「暗君をこのまま『悪意の底』に封印しておくと、光と闇のバランスが取れなくなる。そうなるとこの世界がどうなるか・・・わかるでしょ?それって帝国の政がどうのこうのって話じゃなくなると思うのだけど?」
花乃衣のその言葉に、書庫の神様はため息を一つ、吐いた。
彼にとっても、暗君の力は恐るべきものだったからだ。
「・・・里の場所は、そなたにとっては非常に難しい場所にあるぞ?」
「碧妃の身近にあるから?」
花乃衣のその問いに、書庫の神様は黙って一つ、頷いた。
「里の入り口は、碧妃の居間にある」
その答えに、蒼と花乃衣は深く、ため息を吐いた。
次回の更新までまた間が開くかもしれませんが、
気長にお待ちいただければ・・・
よろしくお願いします(ぺこり)。