第6話 レフィア救出大作戦
<前回のあらすじ>
ブレーズ洞窟に迷い込んでしまったミラ。ヤリドカに襲われながらもなんとか出口までやって来た。しかしここに、レフィアを攻撃したサレンがいた。サレンは魔法を岩に向かってかけてゴーレムを形成させた。だが、そのゴーレムはまったく動かない。その隙にミラは洞窟を出た。しばらく歩くと、平和の街ピーシストにやって来た。ここで老翁に出会いレフィアを助けるために、老翁の孫のニルスの家の前までやって来た。
<この話からの新技術>
魔力・・・魔法そのものを習得する力。魔力が高いほど高火力な魔法を使えるようになる
魔階梯・・・魔法遣者のレベル。8階梯に分かれていて、8に近いほど強い魔法を使える
輝度・・・魔法の特殊効果。属性を増やしたり、妨害を追加したりできる。
いずれも、魔法を上手に使えればレベルも上がる。
ただし、魔階梯を上げるにはクエストや昇階梯試験を受けなければ上がらない。
物語がもっと進んだら詳しく説明します。
「おーい、ワシじゃ。居るかー?」
老翁はニルスの家に向かって叫んだ。
「なんだよじいちゃん、うるさいなあ。せっかく昼寝してたのに」
奥の部屋の扉が開き、気だるげに髪を掻きながら一人の少年が姿を現した。
見た目はミラとそれほど歳の変わらない、赤い髪色をした少年。
彼が老翁の孫、ニルスだ。
「ニルス、このお嬢ちゃんを今すぐ救ってくれ。仲間がサレンに襲われたらしい。」
「はあ!?サレンだって?」
ニルスは「サレン」という言葉を聞いた瞬間、目がカッと開いた。
しかし
「えーどうしよっかなー。」
ニヤニヤと意地悪そうに笑った。
そんなニルスに、ミラは思わず一歩詰め寄った。
「お願いニルス!レフィアが・・・レフィアがサレンに襲われて危ない目に遭ってるの。助けるにはあなたの力が必要なの!」
と必死に懇願した。
ミラの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちそうになっている。
「出し惜しみみたいなことしておるな、このバカタレがっ!」
怒声とともに、ニルスの高等部に拳骨が振り下ろされた。
「痛ってえええええ!じいちゃん、いきなり何するんだよ!」
「涙を流して困ってる者がおるというに、何をニヤニヤと勿体ぶっておるか!お前が日々積んできた鍛錬の力をここで使わんで、いつ使うんだ!」
老翁は鬼の形相で言った。
「ちぇ・・・分かってるよ。ちょっとからかっただけじゃんか」
ニルスは頭をさすりながら、バツが悪そうに唇を尖らせた。
そして、ミラの方を向いた。
先ほどまでの不真面目な瞳とは違い、瑠璃色の瞳がキラキラと輝いていた。
ミラに真摯に向き合ってくれているようだ。
「今から装備とか取りに行くから着いてきて」
サレンはミラの手を引いて武器庫に向かった。
「ところで、君、何て言うの?」
「ミラっていうの。よろしくね」
「へえ、ミラか。変な名前。って言っても俺ら異分子だからな。聞き慣れない名前で当然だよ。」
道中、ニルスと自己紹介をしたり、アドルベルナに来た目的を話した。
「ここが武器庫。ちょっと待ってろ」
武器庫に入ると、弓や剣や防具、見たことのない形をした武器が並んでいた。
「はい。ミラはこの防具。どうせ強いの使っても魔力とか輝度とかも低いし。」
ミラは革のようなもので出来た防具を渡された。
「あと、早く勇者登録してよね。そうしないと魔法が使えなくて俺に負担がかかるから」
「う、うん、わかった。足手まといにならないように頑張る」
ミラは何も分からなかった。
魔法を人生で一度も使ったことがないからだ。
ただ、ニルスの言動的に魔法が使えないミラはこの世界で生き抜くことはかなり困難だと悟った。
ハーヴェストを助けるどころか、自分を助けてもらわないと生き残れない事実が、胸をチクリと刺した。
「ほら、準備できたなら行くぞ」
ミラを置いて颯爽と行こうとするニルスを慌てて追いかけた。
渡された革の防具は心許ない軽さだ。
でもこれが、今のミラを守る盾であった。
「ニルス、その・・・勇者登録をすれば、本当に私も魔法が使えるようになるの?」
これからのことの不安を和らげるように尋ねた。
ニルスは低い声で言った。
「そうだよ。ソール神殿に行けば、魂を適性に出されて、最低限の初級魔法を授けてくれるはず。まあ、ミラの魂の理がこの世界に馴染めばな」
「魂の理・・・」
科学で支配されていた元の世界とは全てが違う。
自分の魂がこの世界に馴染めなければ、この世界で生きることは困難だ。
もっと簡単に記憶の石を見つけられると思っていた。
もっと早くアドリッス樹林にたどり着けると思っていた。
何もかもが自分をはるかに超越していた。
今、ここで出来ることは他人を助けるよりも魂を馴染ませることだけだ。
「馴染ませてみせるよ。何としてでも」
ミラは拳を強く握りしめ、自分に言い聞かせるように言った。
その様子を見たニルスは、ミラをじっと見つめた。
やがて小さく鼻で笑った。
「ま、その意気込みだけは買ってやるよ。」
ニルスが背を向け、大股で歩き出した。
ミラは慌ててその背中を追いかけた。
しばらくすると、ニルスの足が止まった。
「ここがソール神殿。ここで魔法が使えるか調べられる。」
ニルスの言葉に、ミラは息を呑んで目の前の建物を仰ぎ見た。
大理石のようなものでできたこの神殿は、とても美しい。
それとは対照的に、少し暗い青色の光が天に向かってまっすぐに立っている。
その光を見た瞬間、ミラの胸の奥が大きく波打った。
身体の奥に眠る本能的な何かが、その光に呼応しているような奇妙な感覚だ。
「なんだか、胸が熱いというか、引っ張られるような感じがする」
「へえ、もう気配を感じ取れてるのか。案外、ミラの魂もこの世界に気に入り始めてるのかもな」
ニルスはそう言いながら、神殿の中に足を踏み入れた。
神殿の内部は静まり返っていた。
色とりどりな窓から差し込む陽光が大理石を刺激している。
奥の方には水晶玉のようなものもある。
「ミラ、あの水晶玉に触れてこい。」
水晶玉に触れるために長い回廊を歩いた。
「これを触ればいいの?」
「ああ。水晶玉が緑色に光れば魔法を使えるようになる」
ミラはそっと水晶玉に手をかざした。
ひんやりとした、どこか生き物のような不思議な温もりが伝わってくる。
ーお願い!光ってー
目を閉じ、心で強く祈った。
すると、神殿が震えるほどのまばゆい光が弾けた。
「うわっ!」
ミラが思わず腕で顔を覆った。
光をまじまじと見れなかったが、緑色だった。
光はミラの身体を包み込み、ミラに吸い込まれるように消えた。
恐る恐る目を開けると、水晶は元の輝きに戻っていた。
しかし、ミラの手に経験したことのない奇妙な熱があることに気が付いた。
「大成功だよ!ミラ!今ので体に魔法の回路が作られた。その熱がミラの魔法だ。」
「これが・・・魔法・・・?」
ミラは自分の手をじっと見つめた。
本当に魔法が使えるのか信じられなかったが、確かに体の内側から何かエネルギーを感じられる。
「あの的に目掛けて
ウェイカー!って叫んでみて。そうしたら何系の魔法かわかるから。」
ーウェ、ウェイカー・・・?ー
本当にこれだけで魔法が使えるのか疑心暗鬼だった。
魔法が使えると信じて大きく息を吸った。
「ウェイカー!」
ミラがそう叫んだ瞬間、まばゆい赤色の輝きが現れた。
「赤・・・?」
ミラが茫然としているとニルスが
「おお」
と関心したような声を漏らした。
「嘘だろ・・・火炎系魔法を引き当て上がったか。ただでさえじゃじゃ馬なミラが火炎属性とはね。敵を丸焦げにするには、あおつらえ向きの才能じゃねえか」
ニルスはそう言ってニヤリと笑った。
「ま、丸焦げ・・・そんなに強いの?」
ミラは自分の両手をまじまじと見つめた。
魔法なんか一度も使ったことがないのに、こんな物騒な魔法を手に入れられるとは思ってもいなかった。
それを見たニルスは
「じゃあ、ファイアーって言ってみて」
と言った。
ミラは震える声で
「ファイアー!」
と言った。
どれだけすごい魔法なのか。
すると、人差し指から火が出てきた。
そしてその火はすぐに消えた。
「えっ?」
これを見たニルスはお腹を抱えて笑った。
「ひゃはは!本気にしてんじゃねえよ。お前みたいな奴がいきなり丸焦げにするほどの魔法が使える訳ねえだろ!ひゃはは!」
ミラは少し恥ずかしくなった。
「お前が使えるのはマッチに火をつけれるくらいの火炎魔法だよ。いいか、この世界には魔力っていって魔法のレベルが高くないと強い魔法は使えないんだよ」
「な、何それ!本気ですごい魔法を手に入れたと思ったのに・・・」
「まあ、落ち込むな。お前はレベル1だから、そのしょぼい火で十分なんだよ。ほら、行くぞ」
ニルスは不敵な笑みを浮かべ、神殿の出口へと歩き出した。
ミラはその背中を追いかけながら、もう一度自分の指を見つめ、小さくため息をついた。
自分だけでこの世界を生き抜くことは、不可能なのだろうか。
少なくとも、今は誰かに頼らなければならない。
アドルベルナで自分は迷子になっているのかもしれない。
投稿めっちゃ遅くなりました
一応、週1投稿を目指します!
応援よろしくお願いします




