天からの贈り物 《最終話》
病院につき、曜は個室のベッドに運ばれた。お医者様や看護師さん達が沢山集まり、曜の様態を診ている。
やがてお医者様が時計を確認し、死亡時間を伝えた。
皆が引き上げた後、静かに枕元の近くにある椅子に腰掛けた。
曜の髪を撫ぜた。初めて触る曜の髪はサラサラと指からすり抜ける。頬を触った。まだ柔らかい頬はすべすべしていた。
石田君と祐ちゃんがやって来た。
「華ちゃん……」
泣き声の祐ちゃんの声。きっと石田君に詳細を聞いたのだろう。
曜の手を握った。そう言えば手も触った事なかったな。
「ごめんね、少しだけ曜と二人でいたいの」
私は二人を振り返る事もなく、そう告げた。
「着替えをしますので、皆さん外でお待ち下さい」
「ちょっと待ってまだーー」
「困ります。急がないといけませんので」
「たった10分だ!一生の内にこれ程大切な10分はないんだよ!それくらい分かるだろう!」
祐ちゃんが泣きながら訴えてくれている。看護師さんは諦めたのか静かになった。
「曜、たった10分だって。なにから話そうか。私はこの命をどう使えばいい?曜の夢も叶えられなくて、どう生きればいい?私も天国に行きたいよ……」
10分では足りないと思っていた。話したいことが、山ほどあったように思えた。でもない。今となってはもう何を言っても無駄に思えた。ただ涙だけが溢れ曜の顔がぼやけた。
「あなたが焼かれてしまうなんて、私には耐えられないよ。どんな事も耐えて来たのにそれだけは嫌だよ!」
曜の手に唇を当て泣きじゃくった。涙が後から後から溢れ止まらなかった。
「運命の人を交通事故から守っても、そんなに悲しませたら守った事にならないね」
「ぇ……」
曜は微笑み私の髪を優しく撫ぜていた。
「天国で異例のお人好し扱いだったよ。特典の特別だってさ」
そう言って笑ってる。
「命を与えられたって事?」
「そうだよ」
「曜として生きれるって事?」
「うん」
「曜、私ね……」
「聞こえてたよ。必死の告白。嬉しかった」
「そうなんだ。ねぇ曜、最後何を言おうとしたの?」
「君が好きだよ。ずっと前から好きでした」
涙は悲し涙から嬉し涙に変わって、また溢れ出した。
「本当に泣き虫だな。一人ではほっておけないよ」
「……曜、さっきなんて言ったの?」
「ちゃんと聞いてなかったな。僕の運命の人って言ったんだよ」
「じゃあ、私の運命の人はあなたですか?」
曜は大きく頷いた。
「華美、キスして」
「ぇ……」
ファーストキスなのに私から?嫌だよそんなの嫌だよ。しかもこんな所で。
そう思っていると、曜は私の頭を軽く押し唇が重なった。
「華美、愛してるよ。ずっと君を守るからね」
曜の優しい笑顔が涙でぼやける。こんな幸せはない。天からの贈り物に感謝した。
ドアの外が騒がしくなった。
「私、みんなに言って来るね!」
♡ ♡ ♡
「曜が生き返ったよ!曜が生き返ったんだってば!ねぇ、聞いてよ!生き返ったんだって!」
私はドアを開け大声で叫んだ。祐ちゃんも石田君もキョトンとしたまま動かない。
「本当に生き返ったんだよ!」
私は嬉しくてぴょんぴょん跳ねてそう言った。看護師さん達は無視して中に入って行った。
程なくして皆出て来た。
「急いで先生を呼んで下さい!」
看護師さん達は慌てて走り出した。先生が病室に駆け込んだ。
「ね、本当に生き返ったでしょ?」
祐ちゃんにそう言うと、思わず抱きつき泣いていた。
「良かった……、本当に良かった」
石田君は目を丸くしながら言った。
「愛の奇跡でしょうか!?」
「石田君、色々と本当にありがとう」
「いえ、柑菜月さん、幸せですか?」
「はい、とても幸せです」
「なら、僕も幸せですよ」
そう言って、石田君は嬉しそうに笑った。
石田君も死んだら特待生だと思った。
♡ ♡ ♡
曜も退院し、無事に皆で卒業式を迎える事が出来た。私は就職を辞退し、曜と一緒に京都で住む事にした。
「おはよう、華美」
「おはよう、曜」
また二人での生活が始まった。もう離れない。もう離さない。何があっても曜がいれば安心だった。
この命に心から感謝したい。だからこれからも、良い行いをして行くつもりです。
誰のためでもなくそれが自分であるから。
最後まで読んで下さった皆様に、心から感謝致します。本当にありがとうございました<(_ _)>
新作を投稿しました時は、引き続きお付き合い頂けますと幸いに思います。




