舞踏会4
壇上から降りると様々な人物が挨拶に来た。
精神的にはボロボロだったが、会う人々のステータスはチェックしながら名前と特徴を覚えた。
心の中では、ビヨットの恐るべき手腕と情報収集力に自分の心算がいかに甘いモノであったかを痛感した。
新参者のポッと出の自分の出生から、ボルックの事、リムーレとドミリスの間で行っているドラゴン山の事などかなりの部分を把握されていた。流石に筒抜けという訳では無いと思いたいが、概要は押し測られていると考えるべきだろう。
そして、あれだけの情報収集力があれば、ルシュランドやゴフトスの行っていることも当然把握しているのだろう、分かっていながらドルトニアの兵力増強になる事なので見逃している。国民からの非難が集中すれば、知らなかった愚息が勝手にやった事、涙を流す一芝居を打って泣いて馬謖を斬るを実践すれば、さらにビヨットの厳格な姿勢に人々は忠誠を誓うだろう。
考えるに恐ろしいことだ。
「そち!」
オレの周りに集まっていた人々が押し黙る。
背中側の人垣がざわつき、割れるように人垣が左右に別れる。
その間をまっすぐこちらに向かってくるのは第十一王子アトロックであった。
「父上に献上した盾見事であったな!」
満面の笑みでこちらに近寄ってくるアトロック。
人の良さそうなぽちゃっと太った猿人の男だ。
「お褒めの言葉有難き幸せ」
恭しく頭を垂れる。
その頭上から続けて言葉を発するアトロック。
「マロにも当然献上の品があるのだろ?」
何を言ってるんだこいつは?
「はっ、もちろんご用意しておりますが、本日は陛下への献上の品のみ持ってまいりましたので、後日必ずお届けに上がりたいと思っております」
「今欲しいのじゃ」
クッソ!やっかい登場だな。
「はっ、ですが今日は何も・・」
「そのローブは珍しい品じゃな、それをくれ」
おいおい・・・
「ですが、既に私が着てしまった物を閣下にお渡しするなど・・」
「かまわん、後で別のものも贈ってくれれば良いのじゃ」
ダメだ、コイツに話は通じない。
ビヨットなら止めてくれるんじゃないかと会場中を見回すが、端のほうで何やら話し込んでいる。
ルシュランドとゴフトスがこちらを見てニヤついているのが目に留まる。
ドワーフの姫との間に産まれた赤毛のゴリラのゴフトスと、ウンディーネの間に産まれた猿人とは思えぬ端正な顔つきのルシュランドは仲が悪いと思っていたがそんな事も無いのかもしれない。
もしくは、共通して気に食わない奴認定したオレに対して一時的に会話が合ったというところか・・・
とりあえずは、目の前のアトロックだな。
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
再度一礼すると、オレは仕方なく着ているローブを脱ぐ。
まさかこんな公衆の面前でストリップをすることになるとは思わなかったわ・・
曲がりなりにも毎日鍛冶仕事で鍛えた上半身だ、見せて恥ずかしいモノでも無いだろう。腕周辺の無数の火傷の痕はご愛嬌。
周囲の人々が押し黙る中、オレは丁寧にローブをたたみアトロックへ献上する。
「ほう、ではありがたく頂くぞ。では、マロからも何か褒美をやらねばな」
そう言うとアトロックは、キラキラと眩しく光る程に装飾が施された上着を脱ぎ始める。上着の下からはたるたるに緩んだ上半身が露わになる。
「ほれ、上着の交換じゃ、マロの上着じゃお主の家宝とせよ」
「ははっ」
むわっとオガクズのような汗臭い上着が投げられ、オレの頭の上にフワッと落ちる。
クッソー!
パンチの効いた馬鹿野郎登場だわ!
二度と近寄らないようにするべき人間ナンバーワン決定だ。
そして、オレはアトロックの上着を一度丁寧に折りたたみ、恭しく掲げて再度頭を下げる。
「恐れながら頂きましたこの服、家宝とさせていただきます」
大事に大事に二度と陽の目を浴びぬ所に保管することにしよう。
「遠慮するな、今日はめでたき日じゃ、お互いにお互いの服を着ようではないか」
そう言うとアトロックはオレのローブを着始めた。
「ほぉ、ずいぶんと濡れておるのぉ、これは涼しくて良いものじゃ」
聴いてるだけでも嫌悪感を覚える話だ、人の汗でビッショリ濡れた服を着てあの笑顔。どういう思考回路で動いているのかまったく読めない。
「それ遠慮するな。ソチも着るが良い」
着る前に素早く衣を鑑定する。
大王馬の6宝石衣 敏捷 +60 防御 63 自動治癒 中 幻惑効果
流石に王族の上着というところか、予想以上のスペックだ。
そして広げた上着からは予想以上のスメールが・・・
これを着るのか・・




