王都出店
商人ギルドへ着き王都に出店を考えている旨を話すと、いきなり奥へ通された。
さすがに王都の商人ギルドだけあって、かなりデカイ。
隣接して冒険者ギルドなどもあり、たくさんの人でごったがえしていた。
奥からキッチリした格好をした初老の男が出てきて、向かいの席に腰掛けた。
「王都に出店をお考えと伺いましたが、リムーレでの商人ギルドでの実績を考えれば審査上はまったく問題ありません」
商人ギルド内での今までの入金や取引など真面目にコツコツと行ってきた事がすべて信用となって今かえってきた事に、何か報われたモノを感じる。
「ありがとうございます。今まで田舎でコツコツとやってきたのですが、ある程度の資金が溜まってきたので夢であった王都への出店を考えています。どのような手続きが必要なのでしょうか?」
「空き店舗や店舗物件ではありませんが、廃工房や廃墟、空き地への新規建築など、いくつかの新規出店の際の選択肢はありますがいかがなさいますか?」
「出来れば、鍛冶仕事などが出来る物件などあれば、生産と販売を店舗内で内製化出来るので、そういった物件をご紹介いただければと思います」
「物件に関しては、購入されますか?それとも賃貸で行いますか?」
「基本的に、今後がどうなるかは闇の中なので、業績不振の場合は撤退も視野に入れて考えると、まず軌道に乗るまでは賃貸を考えているのですが大丈夫でしょうか?」
「そうすると、空き地ではなく、空き店舗もしくは廃墟や廃工房などを改築しての出店になりますね。改築の場合は改築費用は、工事着工前に現金及び、ギルドでの分割返済の契約を行う形になります」
新店舗では、ボルックの街でオテロクが回収した品々を加工販売する予定なので、仕入れはタダだからな、しばらくはボロ儲けだ。大体1年間分ぐらいの大量の在庫がアイテムボックス内に入っている。
魔鉱石採掘とそれから製造された様々な用品によって経済的に発展していたボルックという街一つから回収しているので、手元資金も200億ドランを越えている、俺個人なら一生遊んで暮らせる資金だが、王都で経済的に豊かな商人ともなれば、年商数千億になるだろう、目的を達成するためには、手元資金を使って何倍にもビジネスを広げなきゃならない。
「とりあえず、数日をかけて物件を選びますので、物件一覧をお願いします」
「かしこまりました」
「それと、派遣商人の方にもいろいろお願いすることも増えると思いますので、派遣商人の方々の派遣先の日程表などもいただけますか?」
「それはミステリーショッパーとして抜き打ち面接、及びライバル店の視察も兼ねているんですね?」
「まぁ、そういう事です」
俺達はリストを受取りギルドを後にした。
ドルーアンへ来て改めてこのドルトニアという国の盤石さを再確認させてもらった。
まず、大森林の入り口手前から長い洞窟を通ってドルーアンに入ってきたが、その間に2つの検問がある。
大森林の中には様々な罠が張り巡らされているらしく、ここを通っての侵攻は難しい、洞窟では寡兵で防衛出来るし、最悪は洞窟を崩落させて生き埋めにする手も打っている可能性もある。
大森林を仮に抜けても、王都の周りは30メートルを超えるゴーレムから2メートル前後のゴーレムがずらっと王都を壁のようにして囲っていた。
現在はエネルギー供給をしていないようだが、防衛戦となれば、絶対に抜けない壁としてそこに存在している。
王都中央の大穴の周りには一般市民の街や畑が広がる、貴族や王族になるほど穴の奥へと住居が移動する。
大穴の中央には、とんでもない大きさのクリスタルの柱が立っており、穴の奥にまで陽の光が入っていくようになっている。
まったりといこう焦っても仕方がない。
商人ギルドを後にし、登録所へ入る。
「どのようなご用件でしょうか?」
「ボルックの街で役職の改正があったので届け出に来ました。」
「権利書など関係書類はご用意できていますか?」
「はい」
ボルックの街の採掘権や、人員の手配、仕事の手配などを手中にするために、街の管理者にオレ、商人ギルドのマスターにソマック、冒険者ギルドのマスターにラグを配置した。
数日をかけて吟味し、廃工房を契約、リフォーム後に結局買い取りしてしまった。
ボルックへは、奴隷を買って送る他に、借金で首の回らない者の返済を肩代わりして、返済契約をしてボルックへ、ソマックに頼んで、フラつきの行商人や鍛冶屋、故郷の採掘屋なども手配してもらった。
リムーレの街にはソマックが選んだ派遣商人に任せ、ソマックと共にオデロンにボルックへ向かってもらう事にした。
周辺の治安維持含め、脳と力を派遣した形だ。
あとはソマックにすべて任せた。
王都内で店なしの鍛冶屋を多数工房に招き入れて、直接指導する日々を送る。
数ヶ月もすると、ボルックより安定的に魔鉱石が供給されるようになった。
それらを工房でどんどんと商品に変えていく。
職人たちの技術も技術交流するうちに飛躍的に上昇していっている。
リフォーム時に工房の道具は最新式のものに一新していたが、最初の数ヶ月で初期投資分は充分に回収できたと思う。
価格は、相場の3割レスで販売した。
工房は町外にあったが、王都中から良質で良心的な価格のモート商店に商品を買い求めにたくさんのお客が押し寄せた。
ラングロングの山は、リムーレの街側をエイドリア達が、ドミリスの街側をメルロ達が警護するようにしてもらっている、ドラゴン保護区として、ラングロングには、出産を控えたドラゴン達に安心した子育てと、出産後の休養を出来る場を提供すると話した。数ヶ月で数匹のドラゴンが集まってきた。
彼らには、普段は人間など外敵に見つからないように痕跡を消すために燃やしてしまう糞や抜け殻、生え変わる歯などを提供してもらう事になっている。
それらの素材は半年後には王都の工房に到着し始めた。
エイドリアとメルロには、警備の者達に支払う費用や搬送費、利益の一部を定期的にモート商会よりギルドを通して振り込んでいる。
ギルドにモート商会からの依頼として双方にお願いしているものなので、ギルドにも金が落ちるし、国にも金がギルドより回る仕組みになるので、国もギルドもかなり協力的だということだ。
ドラゴン装備だけは、王都内の下層に、もう一店舗出店し、高級商品店として、ワンセット数十億ドランで販売しはじめた。
あるところには金があるもので、ドラゴン装備も順調に売れたのであった。
1年を経過する頃に、遂に待っていた呼び出しがあった。
王宮で開かれる舞踏会への招待である。




