助っ人
爽やかな風と共に女達は洞窟の奥へ戻っていく。
かなりのスピードで戻っていく。
助かった?のか?
混乱する、恐怖、絶望からの突然の開放にオレの脳がついていかない。
呆然と立ち尽くす。先ほどの恐怖を考えると再度洞窟の奥に進み同じ轍は踏みたくない。
かといって、吊り橋無くして、洞窟から出る方法も浮かばない。
ただ奥より吹き込んでくる清浄な空気を楽しむ。
気持ちが落ち着くと断崖まで近寄ってみる。
恐る恐る谷底を覗くと、谷から立ち昇っていた煙も消えているようだ。
ドドドドドドド
対岸から聞こえる音に、覗きこんでいた顔を上げると、ラグ一家がアースを先頭に洞窟の向こう側からこちらを見ていた。
アースの土魔法で、簡易の橋を作り全員がこちらに渡ってくる。
「よぉ!」
片手を上げてラグが挨拶をしてくる。
こんな時でも爽やかな奴だ。
「外は大丈夫だったんですか?」
あれだけの魔物をたったこれだけの人数で抑えられたとは思えない。
「ああ、とんでもない数の魔物が洞窟から溢れ出てきた時は、俺達の見通しの甘さを悔やんだが、思わぬ助っ人が現れてな。ギリギリのところを助けてもらった」
「助っ人?」
王都から遠く離れたこの辺鄙な山奥に、あれだけの魔物を撃退するような助っ人とは?
「そんな難しい顔して考えなくても、洞窟の奥に戻れば分かるさ、この風のお陰で洞窟の中の異臭も無くなって、俺達もこうやって中まで入ってこれたんだ。風が通るように山に穴を開けたのもその助っ人だぜ」
「山に穴!?」
とんでもない助っ人の力に、オレの中にもある助っ人の姿が浮かんだ。
「じゃぁ、そろそろ片付いてると思うし、奥へ進もうぜ」
「待って、その前に」
ラグの言葉をアイラが遮って、オレに治癒魔法をかけてくれた。
全身から痛みが薄らいでいく。
こういう気が利く子は良いよな。
心がほんわかとする。
ラグ達を従えて洞窟の奥に戻ると、予想通りの助っ人の姿があった。
ボリッボリッゴリッ
タンク野郎が貪り食われている。哀れ。
「儂の臭いに呼ばれて来てみれば、魔力たっぷりの極上のご馳走がタンマリじゃったわ。永い年月が必要になるだろうと思っていた産後の魔力の充填がこんなにも早く出来るとはな・・・また、お主に借りが出来てしまったな」
ラングロングが至福の表情でオレにそう言った。
これが本来の姿なんだろう、全身から凄まじい威圧感を発し、軽く体の表面を魔力が帯電しているように見える。
「臭いって・・・随分と鼻がいいんだな・・・」
「儂の臭いに多分に魔力が含まれておったのでな、産後にはとても魅力的な香りだったわ」
人間にはただの激臭だったんだけどな。
とにかく、ピンチは脱したようだな。オレのヒーロー的な活躍は出来なかったし、村人たちも廃人のようになってしまっているが、一応長期の治療をすれば子供達を見ていくようには出来るかもしれない。
今後の方針としては、ラグ一家の一部が、子供達を連れて街に引き返し、オレ達は王都に向かって引き続き進むって事になりそうだ。
その晩、廃墟に一泊して、明日からは別行動か。
寂しくなったので別れる前に、狂宴を開いた。
もちろん記憶は操作した。
異世界バンザイ!
オテロクに命じて、夜の間に、廃墟の中から金目のものも全て回収した。
さすがにかつては栄えていた街一つの火事場泥棒は、とんでもない財産になってくれた。




