魔鉱石の洞窟
「王都に向かう訳でなければ、純粋な戦闘の際に、自分は足手まといになるだけなので・・・」
洞窟の近くまで来ると、オレはラグ一家だけで行けと暗に促す。
「確かに王都に向かうまでの護衛だからな。ルークがわざわざ危険な所に行くことはないさ」
ラグが爽やかな笑顔でオレの肩をポンっと叩く。
ああ、本当に良い奴だな。
「ご武運をお祈りしております」
この町までのラグ一家の快進撃を目の前で見てきたオレの予想は討伐成功だ。
確かにラグ一家の戦闘能力なら当たってぶち壊す事が出来るだろう。
ラグを先頭に洞窟へ進むシャル達の背中を見送る。
洞窟まで200mというところで、中から一人の女性が出てきた。
村人?
次の瞬間、ピンクの光球がラグ達へ飛んできた。サキュバスだ。
アースが強弓を引き絞り高速で矢が放たれる。
見事にサキュバスの眉間を貫きそのまま後ろに吹っ飛ぶ。
吹っ飛ばされたサキュバスの絶叫が周囲に響き渡った。
その絶叫を聞きつけたのか、次から次にマナスライムとサキュバスが出てきて攻撃を始める、無数のピンクの光球がこちらに迫る。
光球を一歩前に出たシャルロットが赤く光り輝く剣を振り切り裂いていく、ラグが盾を構え、先頭を敵に向かって突っ込んでいった。
アースが一際太い矢を空に放つと、それは上空で無数の矢に変わりサキュバス達に振りそそぐ、命中よりも広範囲の攻撃に重きをおいた矢のためモンスターに大きなダメージになっていない、そこにラムラが雷撃を重ねる、突き刺さった矢に吸い寄せられる様に、電撃がモンスター達に落ちていく。
凄い攻撃力だ。次々に倒れるモンスター達、だがその洞窟からは無尽蔵とも思えるほどの数が出てくる。
<潜伏>を使って隠れて観戦していても、ちょっとドキドキする。
ラグがあまりの光球の数に、進む事が出来なくなった。
シャルもラグに追いつくが、同じ場所で釘付けにされる。
猛然と降り注ぐ光球。
アースとラムラの攻撃も絶え間なく続けるが、これ以上の火力は出せそうにない。
その瞬間、突然光球の数が弱まった。
モンスター達の後方に迂回したセシリアの攻撃が始まったようだ。
敵の注意が後方へ集中した瞬間を逃さず、ラグとシャルが敵陣に突っ込んだ。
肉弾戦が始まるとアイラの治癒魔法が絶え間なく、ラグ、シャル、セシルに降り注ぐ、完璧なコンビネーションと言えるだろう。良いチームだ。
2時間ほどお互いを削り合うような戦闘が続いたころ、ピンクの光球に混ざって、紫がかったピンクの光球が飛んできた。他のサキュバアスとは毛色の違うサキュバスが敵後方より放ったその光球は、少し大きめで直線で飛ぶのではなく弾道が変化した。シャルの剣を交わすと、シャルの体に当り、じんわりと馴染んだ。
特にダメージがあるようには見えなかった。
次の瞬間、シャルの振り上げた剣がラグに振り下ろされた。
そこからは雪崩を起こすように戦況が一変した。
ラグ、セシルがあっという間に弾道変化の光球の餌食になり、アース、ラムラ、アイラに襲いかかった。
その攻撃を防御する3人もまもなく光球を受けると、周囲は静寂を取り戻した。
マナスライムとサキュバス達は、洞窟の中に引き返す。
一人だけ、見張りだろうサキュバスが洞窟の入り口に残る。
そして、洞窟に入っていくモンスターたちと一緒に、ラグ一家も洞窟の中に付いて行く。
マズい。
{ラグ一家に命じる。ルークの元に戻れ。引き返せ!走れ!}
魂の命令を受けると、ラグ一家は反転しこちらに走ってくる。
オレは物陰で<潜伏>を解き、姿を現すと全力でついて来いと言って町へと走りだした。
見張りのサキュバスからピンクの光球が数発降ってきたが、当たらない。
疲労困憊で町に着いた。
オレに追いついたラグ達を確認するが、話しかけても反応もなく、目は虚ろだ。
魂の命令は聞いてくれたが、ピンクの光球の影響は取り除けていない。
治癒魔法も使ったが効果が無い。
「さっきの戦闘凄かったな。オテも暴れたかったぞ」
オテロク。お前にピンクの光球が当たってラグ達のようになってしまったら、手が付けられんよ。
ピンクの光球は、想像するにチャームという魅了の魔法だろう。
どこかに心囚われたラグ達を攻撃してみるが、肉体的なショックでは元に戻らないようだ。
「オテロク。ラグ達を元に戻す方法。お前何か案があるか?」
「これは、さっきのサキュバスの魔力に酔ってる状態だろ?それ以上の魔力で気付すれば酔いが覚めるはずさ」
サキュバス以上の魔力で気付け・・・
オレに思いついたのは例の餞別だった・・・
みんなゴメンな。




