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竜の官僚  作者: 影光
2章 登用試験
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儀式

「ソウゲン様、こちらです」

 夜、クリカラに連れられてソウゲンは儀式の会場に着く。

 一行の前には儀礼用の祭壇が設けられており、真ん中には夜空の星を映した透き通った水が満ちた青緑の大釜が安置されている。

「良い気だ」

 研ぎ澄まされた感覚で場に満ちた気を捉え、用意された敷物の上に静かに正座する。

「火を」

「は!」

 祭壇に置かれたろうそくに火が灯されると、ソウゲンは祈禱を始める。

「!”#$’’O'#&」

 古来より伝えられる言語を淀みなく唱え、一心不乱に祈る。

 草木も眠る丑三つ時。

 空気も冷える夜にもかかわらず、その場にいる全員が儀式の行く末を夜通し見守る。

 儀式を取り仕切る儀典長達も座って沈黙していると、後ろから夜間外出用の黒衣を纏った皇帝が従者を連れて現れる。

「滞りなく進んでおるようだな」

「これは陛下、わざわざいらっしゃるとは…」

 現れた皇帝に三跪九叩頭をしようとするクリカラ達を、皇帝は手で制して止める。

「そのまま続けよ」

 皇帝の言葉に従い、祈禱を続行する。

「しかし陛下、なぜこんなに遅い時間に?」

「今日はやけに目が冴えていてな、散歩ついでにここに」

「そうでしたか」

「ところで、朕の星に凶兆が現れたそうだな?」

「はい、正確には隣の星に火相ですが」

 二人揃って空を見上げる。

 南極老人星の隣には赤い星が相変わらず輝いている。

「鯨の様子はどうだ?」

「何も変わっておりません」

 万物を飲み込むとされる鯨座を観察しながら、皇帝の問いに淡々と答える。

「真国と蘭国。

 大陸を二分する巨星。

 いずれは雌雄を決せねばなるまい」

「となれば、いつか開戦を?」

クリカラの問に皇帝は静かに頷く。

「どちらも小国を吞み込んでここまでに至った。

 同族嫌悪という言葉がある。

 表向きは盟友として友好関係を築いてはいるが、裏では似た者同士、互いに隙を窺い続けている」

「蘭国は飛行兵器を開発しているという話がございます。

 もしそれが実現されてしまえば、国防における天貫山の意義はほとんど消滅します。

 一応、高射砲はありますが」

「侵攻に当たって対策くらいはしてくるだろう。

 それに海からも同時に攻めてくることも容易に予見できる。

 新型の軍艦の配備を進めてはいるが、それでも正面からぶつかり合えば無傷とはいくまい」

「失礼ながら、このままでは蘭国に先制される形で開戦することになるかと」

「…」

 視線を下ろし、腕を組んで祭壇に顔を向ける二人。

 儀式は、粛々と進んでいく。

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