その8・ナツ原ラボのイケメン野ヂ朗、魔性の好青年じゃなく、ドラえもんイメージなのはなぜ?
私はぶつけた、赤髪のさわやかイケメンに。
さっきの思考と疑問をまるめて直球で。
「野ヂ朗さん! この場にたまたまいる全員を頭数に入れても、五人にしかならないけど。チラシには定員七人と……他に来てるんですか? そのドリーム・モニターが」
野ヂ朗は私の目をまっすぐ見つめ、とっても澄んだ瞳で、微笑みかけてきた。
行ったことないけど、ホストクラブのホストなら最上級、たとえ悪いかなアイドルとか高校野球のスター選手の子ならこんな風にキラッキラの視線を持っているのだろうか? どうしても疑惑を混ぜてしまう、濁った大人の思考が恥ずかしくなってくるそれくらいきれいな目の持ち主だった。
「あっすいません、自己紹介飛ばしてた。私は宝井スタ香、夢に向かって毎日頑張ってる普通のパート主婦です。見た目通りもう若くはありません」
「スタ香さん、はじめまして野ヂ朗と申します、こちらこそよろしくお願いします」
と礼儀正しいお辞儀をしてから、野ヂ朗は惚れ惚れするほど超弩アイドル級の微笑みを惜しげもなくよこした。その上で――こう言ったのである。
「ドリーム・モニター! すてきな呼び方ですね。さすが夢に向かって日夜努力を惜しまない、女性には僕もいつも感動しますし特別な尊敬を抱くんですが、宝井スタ香さんの言葉選びに特別ワクワクします。僕はナツ原ラボの一員に間違いありませんが、よりいっそう新鮮で冒険心が体内に充填されエネルギーを増幅させてもらえる、そんな気分になりました。ありがとうございます! 握手させて頂いても……僭越だしスタ香さんにはパートナーがいらっしゃいますか? 欧米のハンドシェイクの意味なんですが、もしお気に触るようでしたらもちろん辞退しますが?」
私は……自分で自分の行動がよくわからなくなった。
差し出された野ヂ朗の手を握って軽く振っていた。たぶん初体験いや……学生時代友人と小劇団のミュージカルを観に行って、舞台がはねた後主役の女性と握手したそれだけ? でも女優さんだし、日本人って握手しないものよ普通。
野ヂ朗の手から普通に体温が伝わってきた。
あったり前だ、と突っ込まれそうだけど。
マンションの5階から軽々と飛び降りた赤髪青年と、同一人物なのに……
このときどうしたわけか私の脳細胞というか思考を担当する分野(というのか?)は、混乱と軽いショックで変なところに繋がったらしい。それはホストやアイドルや贔屓にしているプロ野球選手と握手したときめきとは似ても似つかない感想だった。
(ドラえもんと握手しても、体温って感じ流ものなのかなあ)
そして頭からすっぽ抜けた、最初の疑問、五人しかいないのになぜ「七人揃った」と野ヂ朗が言ったのか。




