その6・ここで噂の? いや主人公には疑惑の集積回路・野ヂ朗登場!
インド人(数学が出来るに違いない)留学生で駅前のカレー屋さんでバイ中のナリーンさんと、同棲中だけど母国からは結婚に渋い顔されているこちらは私と同じスーパーのパン屋さんで働いているベトナムから来たお嬢さんのニャムさん。この二人も計算に入れれば、平イド7丁目の廃墟集合住宅跡地に建つ謎の「ナツ原研究所」には五人の人間が、結果的に集まってしまった。そのことに気づくのは後の話なんだけど。
不意に、場違いに爽やか、爽やかすぎて素っ頓狂にも聞こえる男子の声が「嵐が丘」のセイタカアワダチ草の間を抜けて響いたのだ。
「わあ! みなさん、よくお集まり下さいました」
黒柴ヨッシーより忽然と、ナリーンさんニャムさんカプより意外性を撒き散らし、真っ赤な頭の笑顔がやたら爽やかな好青年がそこで呼びかけてきた。胡散臭い方法でチラシを撒きまくった、野ヂ朗青年にしか見えない。
頭髪はモニターで見たより毛根まで絵の具みたいに純粋に真っ赤っか。それでいて顔立ちは特にホリが深いとかなく、整っているけどシブ谷や吉ジョージで遊んでいる男の子にいそうな感じ。
いや、見かけないか。服装が超地味だ。上は高校生の夏期の制服、ようは半袖のなんの変哲もない白シャツ。ボトムは同じ高校の見ただけでは夏冬どっちかわからない黒ズボン。えっ今の高校は男子の制服もチェックとか、アッシュとかおしゃれなの? ごめんね、ちょっと昔の高校生(都立の共学)なので流行についていけなくて。
私は少し感心していた。
若者たち、私服のトップス・ボトムもシューズにもこだわりがあり色柄・デザイン工夫するけど、白と黒だけの超地味な服装でも強い印象を与えるんだな。でもそれも、野ヂ朗青年をあやしんでよく見てるせいかもね。
「今回このチラシを受け取られた方に、ナツ原博士から特別モニターのご招待をさせて頂きます。
なんとなればナツ原博士が長年研究していたAI――人口知能の研究成果で、人間が思い描く夢をカタチにする、しかもそれをAIが数値化し3Dプリンターでフィギュア化できるようになりました。そして地域にお住まいの方に今回先着7名までご招待し、特別モニターとして被験していただくことにしました」
野ヂ朗はその明朗に響く声で宣った、チラシ文を一言一句間違えずに。
舞台俳優より声優みたいな話し方だが、確かにアニメキャラみたいな印象はある。
だがそのことより重大なのは、その後から野ヂ朗が言いたしたセリフである。チラシにそれだけなかったフレーズである。
「ナツ原博士も僕も少しだけ心配してたんですが杞憂でした。平イド町のみなさんの温かく、また科学の未来を支援しようというお気持ちの表れ、ここにモニター7人が無事そろったことをアストラの神に感謝いたします!」
おい、野ヂ朗ちょっと待った!
アストラの神か、ウル寅マンか知らないけど。
揃ってなんかいないでしょうが?
7人のモニターなんて、この嵐が丘に⁉︎




