表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。  作者: 黒砂 無糖
学園生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/100

旧知の仲だった?

 ジャスミンの甘い香りが漂う庭のガゼボで、両家の顔合わせのお茶会をする。


 そのように表現すると堅苦しく感じるが、

実際は、かなり和気あいあいとしていた。


「パーティー以外でこうやって4人で揃うのは、どれぐらいぶりかしら?」


 お母様は少女のようにはしゃぎ、お父様はそれを嬉しそうに見ていた。


「そうね? 出産後は色々と重なったし、立場もあったから、お互いの家に行けなかったわ。

 息子だけが、いつの間にかお邪魔していたみたいだけど……」


 アズ兄様のお母様は、いたずらっ子のように目を細め笑っている。


「本当に驚いたわよ。下の双子が乳離れして、ようやく子連れで会えると思っていたのに……

 それすら叶わなかったはずが、いつの間にか仲良くなってるんですもの」


 お母様はそう言って、物言いたげにチラッとアズ兄様を見る。


「その件は母から伺いました。私の我儘で申し訳ありません。

 当時はかなり女性に嫌悪感があり、警戒心が強くなっていたので」


 アズ兄様は、苦笑いしてお母様を見ていた。


「仕方がなかったとはいえ、こうも仲良くなるなら、もっと早くに合わせればよかったな」


 グランディエラ公も、通常であればなかなか見ることができないような、穏やかな笑顔をこちらに向けている。


「……いや、ティトにはまだ早いと思ったし、ほら、少し前まではフェルトシュパート卿の

ご子息にと考えていたと言っただろう?」


 お父様は、グランディエラ公を恨みがましそうに見ている。


「なんだ? まさかここまで来て反対か? うちの息子になにか問題でも?」


 グランディエラ公は、にやにやしながらお父様を煽っている。


「ぐぬ……何も問題がないどころか、良すぎて腹が立つんだ! こんなに優秀で、見た目も良くて、しかも……くそっ! ろくな文句すら言えんのだぞ?」


 お父様はワナワナしながら叫ぶ。


 それを見てお母様は、


「お気に入りだったヘルグラウ君に振られて、少し嫁ぎ先を心配していたのよ。

 それなのに、娘がいつの間にかアズール君と仲良くなっていたから、不満なのよね?」


 と、追撃している。


「ラヴェル、余計なことを言わんでくれ。そんなことより、アズール君、君は本当にこんなに早くティトと婚約してもいいのかい?」


 お父様はキッとアズ兄様を見た。


 お父様……お兄様がああなったのは、お父様のせいかもしれませんわ?


 ——なんて言うか、愛が重いです。


「シュピネル様、いいも何も、先日お伝えした通り、私は彼女以外と一緒になる気はないし、なれるとも思いません。どうか婚約を認めてください」


 アズ兄様が、お父様に頭を下げた。


 ——この婚約は、家同士の契約のはず。


 それなのに、アズ兄様は心を向けた婚約者として、私を迎えるために頭を下げてくれた。


 心を向けてくれるというのなら、こちらも返すのが礼儀というものだ。


「お父様、私も婚約するなら、アズール様が

一番いいと思います。だからお願いします」


 私も頭を下げた方がいいかしら?


 そんなことを考え、お父様を見つめていたら


「……」


 お父様は、黙ってはらはらと涙を流し始めた


 お母様は、笑いながらお父様の涙を拭いてあげていたら、お父様は感極まったのか、お母様にガバッと抱き着き、おいおいと泣き始めた。


「あらあら、旦那様、まだ嫁に行くわけでもないのに」


 困った人ね?と言いつつ、お母様は、おかしそうに笑っていた。


「ははは、ヴァインロートは相変わらず涙もろいな。二人とも知らぬ仲でもあるまい。

 我々は勝手に楽しんでいるから、二人で好きにするといい」


 グランディエラ公に言われ、お母様を見ると、お母様は「お父様は任せておけ」と私にウインクをして見せた。


「アズール様、お庭をご案内いたしますわ」


 私は、含み笑いをしているアズ兄様を連れ、ガゼボを後にした。


 黙ったまま二人で席を立ち、ガゼボから離れ、そのまま庭園を歩き、互いの両親の声が聞こえなくなった頃、どちらからともなく、


「プッ、クスクス」「フフフ、アハハ」


 ふたりは、実はずっと笑いをこらえていた。


「ティトのお父さん、なかなか面白いね」


 アズ兄様は、お腹を押さえて笑っている。


「まさかあんなにも泣き虫だったなんて……

 それにグランディエラ家と、仲が良いなんて聞いていませんでしたわ」


 お母様同士は、お茶会で一緒になるとは聞いていたけど……


「父親の宰相としての立場的に、表立って個人的に付き合うのが難しかったのだと思う。

 俺が女の子を苦手としていなかったら、もっと早くにティトには会っていただろうね」


 アズ兄様がシュピネル家への来訪を嫌がったため、公に会うことが難しかったようだ。


「……それは、もっと早くに婚約することになっていたのでは?」


 どう転んでも、アズ兄様と婚約することにはなっていたようだ。


「両親たちを見る限りそうなってただろうね。

 そうだったらティトは、俺に秘密を教えてくれたかな?」


 アズ兄様は首をかしげた。


 ——どうかしら?


「決められた婚約者だったら、私は猫をかぶっていたかもしれませんわ。

 ヘルグ兄様のおかげで、よくわからないまま仲良くなったから、気兼ねなく付き合えるようになったと思うし」


 それにきっと、婚約者がいたら、ヘルグ兄様とも仲良くなっていなかっただろう。


「だよね。僕もそう思う。噴水でティトに出会って、そのあと倒れたと聞かなかったら……

こんなに仲良くなれなかったと思うよ」


 アズ兄様はニヤッと笑って、昔のことを掘り返した。


「……過去を掘り返すのは、紳士的ではないと思いますわ」


 私はムッとしてアズ兄様を睨みつけた。


 その時——


(ティト! ティト、今、念話つなげられる?!)


 ひどく慌てた様子の念話が届いた。


 ——ヘルグ兄様?


 普段、ヘルグ兄様が念話を飛ばしてくることは滅多にない。


 しかも今日は、アズ兄様と婚約のための顔合わせだと知っているのに、その時間に念話を送ってくるなんて、よほどのことだろう。


(ヘルグ兄様、どうしました? アズ兄様にもつなぎますか?)


 アズ兄様は、私が能力を使っていると見抜いたのか、こちらを見ている。


(ああ、頼む。ちょっと厄介だ)


(ヘルグ兄様、アズ兄様にもつなぎました。

厄介って、何があったの?)


(なんだ? 王子が事故にでもあったのか?)


 アズ兄様の顔に緊張が走った。


(違う。俺は今、シュピネル家に向かっているんだ……)


(は? ヘルグ兄様が? なんで?)


(お前……まさか……)


(アズール、勘違いするな。俺にその気はない。シュヴェルト様だよ……)


(え? シュト兄様? なんで、シュト兄様がヘルグ兄様を呼ぶの?)


 意味がわからず、私はこんらしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ